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フランス式

2016-06-09 20:24:14 | コーヒー
つづき。

目に飛び込んできたものとは。

白いタオルを敷いたステンレスのバットから女性スタッフが取り上げたものは、

フレンチプレス。

「まさかフレンチ・プレスかぁ」

私は心の中で声を上げてしまった。

私ははっきり言ってフレンチ・プレスが苦手である。

以前、私もボダムのプレスを所有していた。しかし、
どうやっても、どんな豆でも、私の好みのコーヒーにはならなかった。

まずあの粉っぽさ。

私のボダムはたしかテトロンか何かの繊維フィルターで、
あれはいくらメッシュが細かいとはいっても紙やネルほどの
濾過能力はないし、またそれがフレンチ・プレスの利点でもあるのだが、
どうしても微粉がフィルターを通り抜けて、カップに入り、
コーヒー自体が濁った感じになり、飲み終わりの頃には底に沈殿してしまう。

そしてあの、ありすぎるコク。

コーヒー豆の微量なオイル分がしかしほとんどカップに入るためか、それとも
フィルターの粗さから、何もかもが遮られることなく抽出されるためか、
いつ、どんな時に飲んでも、やはり飲み口が重たい。

味が研ぎすまされてはいないのだ。

はなから研ぎすます気もないのだ。

私は、私の所有するフレンチ・プレスを何度も試した結果、
これは私の目指す方向にある器具ではない。
という結論をあれはたしか13年ほど前に明確に出していた。

だからどこかで美味しそうな佇まいのコーヒー店を見つけて、ドアを開ける直前に、
「当店はフレンチ・プレス式のコーヒーです」
などと店主の案内を洒落た小さな黒板にもしも見つけた場合は、
「うっ」と小声を発し、
急いでその場を離れることにしている。

そのフレンチ・プレスの器具をあの女性スタッフが使おうとしているのだ。

いや、私のブレンド用ではないかもしれない。

そうだよな。私の頼んだのは軽めのブレンドだから、
あまり抽出方法として合うとは思えない。
あれはきっと深煎りのフレンチコーヒーを注文した客のためのものであって、
私のためではないよな。

私は自分に言い聞かせるように心につぶやいたが、
店内には3組ほどの客しかいない。
しかも私の注文とタイミングがどうにも合っている。

「はぁー。」
誰にも聞こえないように深く溜め息をついた。

つづく。
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