20201109
佐藤春夫Wikipediaリンク
佐藤春夫といえば「秋刀魚の歌」が有名で、
さんま苦いか塩つぱいか。のアレである。
そしてやはり世に知られているのは、
谷崎潤一郎から妻を譲渡された件だろう。
秋刀魚の歌もさんまを歌ったわけではなく、その譲渡される前の谷崎の妻を想った詩であるらしい。
「譲渡事件」と呼ばれる件も、だいたい当時のマスコミが醜聞のように書き立てて勝手に騒いだだけで、
本人たちにとっては納得と理解の中で円満に、まあ円満かどうかはわからないが、粛々と進められた話ではないだろうか。
この「昭和詩集」に載せられた「盡日吟」(じんじつぎん?)という佐藤春夫の少し長い詩を私は今日初めて理解しよう思いながら読んだが、結局何が書いてあるのかわからなかった。しかし最後の2行に、
ああ感情を整理せよ
むなしく夢を追う勿れ
盡日吟 拙書「捨てた花」に題する狂騒曲 より抜粋
昭和29年 昭和詩集 角川書店発行
とあり、これは佐藤春夫の親身の言葉だろう。
「一日中歌う」というような意味の「盡日吟」と、形式にとらわれない「狂騒曲」という言葉から、心を浮遊させ思うままに詩を書いたであろうことはわかり、しかしその最後に、はっと我に返って、もしくは数日経ってから少し冷静になって、いつか読む誰かのために、締めの言葉としてこの2行を添えたのではないだろうか。
彼の小説「田園の憂鬱」は、都会から田舎へと犬や猫とともに移り住んだ男が次第に狂ってゆく姿を田園の自然と薔薇に重ねて書いたものらしいが、私は読んだことがない。まあ読む気もないかな。この盡日吟と同じように、その小説のどこかにきっと親身な言葉があるのだろうけれど、それを探す時間はもうないのだから。