以前のエントリで紹介したように"Zazueira"は踊れるようにアレンジされているし、ソウルフルな"Here We Are Falling In Love Again" は入っているしで、毎日繰り返し聴いた日々を覚えている。メジャーレーベルから発売されなかったためか当時の日本での知名度は低く、90年代以降のレアグルーヴ・フリーソウルブームで"発掘"されるまで聴かれなかったようだ。
オーストラリア メルボルン フェスティバルホールでの1972年のライブ映像。この時期のカーペンターズの勢いはめざましく、1970年に"Close to You"と"We've Only Just Begun"をヒットさせ、71年には"For All We Know"と"Rainy Days and Mondays"をチャート上位にランクインさせるなど、出せば売れるアーティストだった。
尚、We've Only Just Begunはカリフォルニア州の銀行のCMソングだったが、リチャード・カーペンターはそのCMを見て、一部にアレンジを施したという。この曲は、アレンジャーとしてのリチャード・カーペンターの能力と、ボーカルとしてのカレン・カーペンターの能力が最も発揮されているということで、リチャードは、「カーペンターズの代表曲を挙げるなら、"We've Only Just Begun"だ」と語っている。
Jazzが好きな人でジョージ・ガーシュイン/ George Gershwinが嫌いな人は多くないだろう。ジャズとクラシック両分野で活躍した作曲家として知られるガーシュインの名前が知られるようになったのは1919年の歌曲"Swanee/ スワニー"で、人気歌手Al Jolson/ アル・ジョルソンに気に入られて彼が繰り返し歌ったことからヒットした。
1920年代以降は、作詞家の兄アイラ・ガーシュウィンと組んで、レビューやミュージカル向けに多くのポピュラー・ソングを送り出した。"But Not For Me/ バット・ノット・フォー・ミー" や "I Got Rhythm/ アイ・ガット・リズム"などスタンダード・ナンバーとして歌い継がれているから誰もが耳にしたことがあるだろう。
1924年には初めてクラシックにも取り組み、"Rhapsody in Blue/ ラプソディ・イン・ブルー"を発表。ジャズとクラシックを融合させたこの作品は「シンフォニック・ジャズ」の代表的な成功例として世界的に評価された。以降クラシック分野はもとよりピアノや管楽器などでジャズを学ぶ人の多くは、この名曲に取り組んでいるのではないだろうか。
クラシック・ピアニストJack Gibbons/ ジャック・ギボンズによるRhapsody in Blueはジャズ的なゆらぎが心地よく、麗らかな春の午後にリラックスして聴きたい一曲だ。
メトロでの移動でCTIレーベルから出ていたアルバム"A Day In The Life"(1967年)を聴いていた時のことだ。メトロから恐る恐る地上に上がって新緑の空気を吸い込んだ瞬間、Wesの音楽に以前は感じることのなかったボサノヴァのリズムに耳が反応した。
Wesがボサノヴァにどれほど心酔していたのか情報を持っていないので、夜ホテルに戻ってからYouTubeで映像資料をあたってみた。1965年のロンドンで演奏したHere's That Rainy Dayを再生したところ、この時期からボサの影響を受けていたことが分かった。もっとも、この曲が収録されたアルバム"Bumpin"はクリード・テイラー(あのGetz/Gilbertoのプロデューサー)がプロデュースしているから、ボサのリズムを導入したのはレコード会社側の意向だったのかも知れないが、それでは夢がない。
"A Day In The Life"の録音時期とWesが演奏活動を60年代中盤のヨーロッパで行っていたことを併せて考えると、ロンドンでビートルズの音楽と出会い、自分の中にあったボサノヴァのリズムで彼等の音楽を表現したかったのだろうと筆者は思いたい。
Stan Tracey (piano) Wes Montgomery (guitar) Rick Laird (bass) Jackie Dougan (drums)
Television broadcast, "Tempo", ABC TV, London, England, May 7, 1965