野の花 庭の花

野の花や山の花は心を慰めてくれます。庭園に咲き誇る花は心をはなやかにしてくれます。

帽子をかぶったようなツユクサの青に心和む

2019年09月21日 08時47分57秒 | 

昔からごく馴染みのツユクサだが、最近は花が咲いているところをあまりみかけなくなった。朝のうちにあまりでかけないせいかもしれないが。それでも早朝の山中湖の湖畔ではツユクサが咲き乱れていて、心和んだ。万葉の昔から日本人にはなじみの花で、月草、蛍草、青花などの別名がある。帽子花は、花の形をうまくとらえている。「二ひらの花びら立てて蛍草 松本たかし」の句は、帽子草と蛍草のふたつの特徴をまとめていて秀逸だ。「千万の露草の眼の礼をうく 富安風生」もいいなぁ。

 (2019-08 山梨県 富士山麓 )

 

 

ツユクサ(露草、学名: Commelina communis)は、ツユクサ科ツユクサ属の一年生植物。畑の隅や道端で見かけることの多い雑草である。

朝咲いた花が昼しぼむことが朝露を連想させることから「露草」と名付けられたという説がある。英名の Dayflower も「その日のうちにしぼむ花」という意味を持つ。また「鴨跖草(つゆくさ、おうせきそう)」の字があてられることもある。ツユクサは古くは「つきくさ」と呼ばれており、上述した説以外に、この「つきくさ」が転じてツユクサになったという説もある。「つきくさ」は月草とも着草とも表され、元々は花弁の青い色が「着」きやすいことから「着き草」と呼ばれていたものと言われているが、『万葉集』などの和歌集では「月草」の表記が多い。この他、その特徴的な花の形から、蛍草(ほたるぐさ)や帽子花(ぼうしばな)、花の鮮やかな青色から青花(あおばな)などの別名がある。

形態・生態
高さは15~50cmで直立することはなく、茎は地面を這う。

6 - 9月にかけて1.5 - 2cmほどの青い花をつける。花弁は3枚あり、上部の2枚は特徴的で青く大きいが、下部の1枚は白くて小さく目立たない。雌しべが1本、雄しべが6本で成り立っている。アサガオなどと同様、早朝に咲いた花は午後にはしぼんでしまう。

分布
自生地は日本全土を含む東アジアで、アメリカ東北部などに帰化している。

近縁種
ツユクサ属は世界に180種ほどがあり、日本では5種がある。そのうちでシマツユクサとホウライツユクサは九州南部以南の南西諸島に、ナンバンツユクサは南西諸島に見られる。マルバツユクサは本州の関東以西にあり、本種ににているが葉先が丸く、また花を包む包が左右合着して漏斗状になる。

人間との関わり

花の青い色素であるコンメリニンはアントシアニン系の化合物(金属錯体型アントシアニン)で、着いても容易に退色するという性質を持つ。この性質を利用して、染め物の下絵を描くための絵具として用いられた。ただしツユクサの花は小さいため、この用途には栽培変種である大型のオオボウシバナ(アオバナ)が用いられた。オオボウシバナは観賞用としても栽培されることがある。

花の季節に全草を採って乾燥させたものは鴨跖草(おうせきそう)と呼ばれ、下痢止め、解熱などに用いる。 青い花が咲いている時期は食用にもなる。

1996年(平成8年)3月28日発売の390円普通切手の意匠になった。

ツユクサと文学
『万葉集』には月草・鴨頭草(つきくさ)を詠ったものが9首存在し、古くから日本人に親しまれていた花の一つであると言える。朝咲いた花が昼しぼむことから、儚さの象徴として詠まれたものも多い。

つき草のうつろいやすく思へかも我(あ)が思(も)ふ人の言(こと)も告げ来(こ)ぬ(巻4 583)
月草之 徒安久 念可母 我念人之 事毛告不来
つき草に衣(ころも)ぞ染(し)むる君がためしみ色(或 まだらの)ごろもすらむと思(も)ひて(巻7 1255)
月草尓 衣曽染流 君之為 綵色衣 将摺跡念而
つき草に衣(ころも)色どりすらめどもうつろふ色と言うが苦しさ(巻7 1339)
鴨頭草丹 服色取 摺目伴 移變色登 稱之苦沙
つき草に衣(ころも)はすらむ朝露にぬれての後はうつろひぬとも(巻7 1351)
月草尓 衣者将摺 朝露尓 所沾而後者 徒去友
朝露に咲きすさびたるつき草の日くたつ(或 日たくる)なへに消(け)ぬべく思ほゆ(巻10 2281)
朝露尓 咲酢左乾垂 鴨頭草之 日斜共 可消所念
朝(あした)咲き夕(ゆうべ)は消(け)ぬるつき草の消(け)ぬべき戀(こひ)も吾(あれ)はするかも(巻10 2291)
朝開 夕者消流 鴨頭草之 可消戀毛 吾者為鴨
つき草の假(か)れる命にある人を(或 假なる命なる人を)いかに知りてか後もあはむといふ(或 あはむとふ)(巻11 2756)
月草之 借有命 在人乎 何知而鹿 後毛将相云
うち日さす宮にはあれどつき草の移ろふ心わが思はなくに(巻12 3058)
内日刺 宮庭有跡 鴨頭草乃 移情 吾思名國
百(もも)に千(ち)に人はいふともつき草の移ろふこころ吾(われ)持ためやも(巻12 3059)
百尓千尓 人者雖言 月草之 移情 吾将持八方
また、俳句においては、露草、月草、蛍草などの名で、秋の季語とされる。

露草 の例句

いのちなり露草の瑠璃蓼の紅 石田波郷
いやが上に野菊露草かさなりぬ 正岡子規 野菊
きちんきちんと露草を見てゆけり 岡井省二 前後
くきくきと折れ曲りけり螢草 松本たかし
ここらでやすまう月草ひらいてゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
ことごとくつゆくさ咲きて狐雨 飯田蛇笏 白嶽
つゆくさに善行を抒す郷ごころ 飯田蛇笏 家郷の霧
つゆくさの金いちじるくまたほのか 飯田蛇笏 雪峡
つゆけくも露草の花の 種田山頭火 草木塔
とかげ跳ね露草咲きて日雨せり 飯田蛇笏 白嶽
まだ据ゑぬ庭石のあり月草に 河東碧梧桐
一叢の露草映すや小矢部川 前田普羅 普羅句集
下刈鎌抱き 露の身の露草みち 伊丹三樹彦
二ひらの花びら立てて蛍草 松本たかし
伸びあがつて露草咲いてゐる待つてゐる 種田山頭火 自画像 落穂集
冬草のむらさき濃きはつゆくさや 山口青邨
千万の露草の眼の礼をうく 富安風生
夜の星か露草の露として朝に満つ 荻原井泉水
夢に色あり末枯の露草も 山口青邨
山の方より露草にこぼれ雨 右城暮石 声と声
巻かれあるホースの赤し草の露 桂信子 草影
抱きおろす子へ露草の露無数 岡本眸
摘まれても籠に青花震へやまず 大野林火 飛花集 昭和四十八年
斑猫を露草むらに見失ふ 相生垣瓜人 明治草
日盛りや青花紙の紺の照り 大野林火 飛花集 昭和四十八年
月草の色見えそめて雨寒し 加藤曉台
月草も実にこそなれれいなご飛 鈴木道彦
月草よ汝とありて七月も尽きぬ 種田山頭火 自画像 層雲集
月越して病めばつゆくさわれもかう 岡本眸
朝の日の母を訪はばや螢草 永田耕衣
松の雫しく~と月草暮れず 種田山頭火 自画像 層雲集
死人に口なし露草は露の中 飯田龍太
水引や露草やあちこちに挿して壺作りおる 荻原井泉水
汗きらり青花搾る挺子に石 大野林火 飛花集 昭和四十八年
消えかかる音ばかり来て螢草 藤田湘子
渓沿ひにつゆくさのさく黍畑 飯田蛇笏 春蘭
港区につゆくさ咲けりひとつ咲けり 平井照敏 猫町
湖の国の青花摘の朝ぐもり 大野林火 飛花集 昭和四十八年
牛部屋に露草咲きぬ牛の留守 正岡子規 露草
瑠璃露草鴨緑江の土手草に 山口青邨
石の裾露草咲けば露けしや 山口青邨
石やさし露草の花ちりばめて 山口青邨
秋扇白し露草むらさきに 山口青邨
老僧の箒にさとれ朝露草 中川乙由
耕耘にくもるつゆくさ瑠璃あせず 飯田蛇笏 春蘭
腰丈の青花摘の露に濡れ 大野林火 飛花集 昭和四十八年
舟蟲が来て露草の気高さよ 松本たかし
草むらや露草ぬれて一ところ 杉田久女
草叢や露草泳ぎ花一つ 山口青邨
蛍草のそのやさしさへ歩みをり 加藤秋邨
蛍草見て立ちにけり戦了る 加藤秋邨
蜘蛛の囲に露しとゞ月草一つ咲いて 種田山頭火 自画像 層雲集
螢草朝の渓流音を立て 清崎敏郎
螢草老父母に金遺はしつ 永田耕衣
蟲鳴くや花露草の晝の露 正岡子規 虫の声
裏山は露草どころ墓どころ 上田五千石『風景』補遺
越の海露草晴といふべかり 飯島晴子
近江野に青ぱつちりと青花摘 大野林火 飛花集 昭和四十八年
野菊殘り露草枯れぬ石の橋 正岡子規 枯草
野菊露草句碑をかこめる草むらに(能登へ) 細見綾子
鉄塔の一脚に触れ蛍草 松本たかし
露けしと露草も目を見張りけり 富安風生
露干ては花がしぼむよ青花摘 大野林火 飛花集 昭和四十八年
露干ては花が剛しよ青花摘 大野林火 飛花集 昭和四十八年
露草が咲きひろがりて水と空 細見綾子
露草が綻ぶ財布ゆ萎え紙幣 香西照雄 対話
露草が露をふくんでさやけくも 種田山頭火 自画像 落穂集
露草と朝の挨拶交しけり 清崎敏郎
露草にかくれ煙草のうまきかな 角川源義
露草にまぼろしの城測るかな 角川源義
露草に乳房なづさふ朝の山羊 相馬遷子 山国
露草に奪らる目終夜徹し来て 佐藤鬼房
露草に投網のものをぶちまけし 清崎敏郎
露草に昔の素足濡らしけり 橋閒石 卯
露草に朝の波音くりかへし 清崎敏郎
露草に父として窶れのこりけり 能村登四郎
露草に畷をこえし朝日さす 百合山羽公 故園
露草に落木あまた端山かな 飯田蛇笏 山廬集
露草に黒蜻蛉翅開く時を見ぬ 原石鼎 花影
露草のつゆの言葉を思うかな 橋閒石 和栲
露草のなほ咲きつづく草紅葉 山口青邨
露草のをがめる如き蕾かな 松本たかし
露草の一輪をこそ庭の紋 山口青邨
露草の中にたまたま野菊哉 正岡子規 露草
露草の咲きやすき日となるならむ 岡井省二 有時
露草の咲き鏤めし露葎 福田蓼汀 山火
露草の咲く道を来ぬ獺祭忌 山口青邨
露草の数のだんだん目に増えて 石田勝彦 秋興以後
露草の日盛にして一穢無き 岡本眸
露草の朝明色を着くづるゝ 齋藤玄 飛雪
露草の染めて通らん古油単 椎本才麿
露草の瑠璃いちめんの昼寝覚 木村蕪城 一位
露草の瑠璃はかなしや魯迅の碑 山口青邨
露草の瑠璃ほのめける梅雨入かな 相生垣瓜人 負暄
露草の瑠璃やいま引きし草の山 山口青邨
露草の瑠璃や勲記は筒の中 飯田龍太
露草の瑠璃を寝覚の床の道 山口青邨
露草の瑠璃一点や露葎 山口青邨
露草の瑠璃十薬の白繁り合へ 石田波郷
露草の田水に足をとられけり 角川源義
露草の白露ばなれなかりけり 上田五千石 琥珀
露草の碧きひとみの中に立つ 鷹羽狩行
露草の紫いとし地の星と 山口青邨
露草の終りの花の藪ちりばめ 山口青邨
露草の花に指染め男なる 山口青邨
露草の花のあの草のこの草の上 山口青邨
露草の花凛々と焼土這ふ 山口青邨
露草の露ひかりいづまことかな 石田波郷
露草の露や半身滴れり 中村苑子
露草は屏風這ひも上らん草の宿 山口青邨
露草も人の心も朝素直 後藤比奈夫
露草も枯れたり蓼も枯れたり矣 高野素十
露草も禾ある草も供華とせむ 山口誓子
露草も露のちからの花ひらく 飯田龍太
露草やわが病ひ如何になりゆかむ 村山故郷
露草や一歩に君もある如く 中村汀女
露草や今日のハンカチまだ汚れず 岡本眸
露草や室の海路を一望に 中村汀女
露草や家中の児の剃こかし 高井几董
露草や弓弦はづれてむぐら罠 村上鬼城
露草や日を受けて胸あたたかき 野見山朱鳥 愁絶
露草や朝一番の汽車も露 百合山羽公 故園
露草や朝日にひかる鹿の角 野明
露草や未練に晴るゝ野辺の霧 石塚友二 光塵
露草や檣に捩るゝ交み犬 石塚友二 光塵
露草や生徒朝のみ聴耳立て 香西照雄 対話
露草や砂利の重みの猫車 佐藤鬼房
露草や野川の鮒のさゝ濁り 正岡子規 露草
露草や鉄桶なして暴と悪 百合山羽公 寒雁
露草や露の細道人もなし 正岡子規 露草
露草や音を拾ひて朝の谷 岡井省二 有時
露草や飯噴くまでの門歩き 杉田久女
露草をふみ小心の象使い 橋閒石 風景
露草を一輪挿に嫗さぶ 佐藤鬼房
露草を刈れば隣の電話鳴る 廣瀬直人
露草を待つて銀行に入つてゆく 飯島晴子
露草を舐め来る水に濯ぎをり 石塚友二 光塵
露草を越ゆるとふぐり驚ろきぬ 加藤秋邨
露草を踏切の花としては来ぬ 山口青邨
露草咲けりほの白みゆく海よりの風に 種田山頭火 自画像 層雲集
露草澄み暁け詩が肥えず灯台ヘ 古沢太穂 捲かるる鴎
露霜やしまひの花の露草に 山口青邨
青花を摘む奇怪な雲が湧き 波多野爽波
鵙の贄露草のよく肥ゆるあり 下村槐太 光背
鷺舞ふて青花摘の隣り田ヘ 大野林火 飛花集 昭和四十八年



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