アザミの同定は難しい。富士山麓にたくさん咲いていたアザミのうちで、総苞片の反り返りが顕著な写真のアザミはナンブアザミだろうと考えた。あるいは変種のタイアザミか。薄紫の花弁の色がしとさやかさを醸し出している。手を出すとチクリと刺されるのだが。
(2019-08 山梨県 富士山麓 )
ナンブアザミ 南部薊
[学名] Cirsium nipponicum (Maxim.) Makino
キク科 Asteraceae アザミ属
和名は南部地方(奥羽地方)の薊という意から。東北地方で普通にみられる。分布範囲が広く、変異が多い。変種にタイアザミ(トネアザミ)やヨシノアザミなどがある。
茎は直立し、よく分枝する。根生葉は花期にはなく、茎葉は長さ20~30㎝の楕円状披針形、無裂から中裂まで、基部は茎を抱かない。葉の刺針はあまり太くない。頭花は小さく、直径2~3㎝、長い柄の先に点頭し、普通、横向き~斜め下向きに咲く。総苞はほぼ球形、くも毛は無いか又は少ない。総苞片は(7)8~9列、反り返ることが多く、開出することもある。総苞片は縁に毛があり、先の刺針は短い。総苞外片には腺体がなく、総苞内片に腺体があり、少し粘る。
トネアザミ(タイアザミ) var. incomptum は関東地方、中部地方南部に分布し、ナンブアザミより葉の切れ込みが深く、総苞や葉の刺針が長い。
イガアザミ var. comosum は関東地方の海岸近くに分布し、葉や総苞片の刺針がタイアザミより太くて長く、長さ1~2㎝ある。頭花は無柄~短柄で密集してつく。
ヨシノアザミ var. yoshino は中国地方、近畿地方、四国に分布し、頭花がやや小さく、多数つき、総苞片が短く、やや反り返る程度、ときに粘る。
アズマヤマアザミ Cirsium microspicatum は関東地方、中部地方に分布し、葉が浅裂~中裂。頭花が葉腋に2~3個まとまってつき、無柄~短柄。総苞は狭い筒形、くも毛が多い。総苞片が短く、反り返らない。
[花期] 8~10月
[草丈] 100~200㎝
[生活型] 多年草
[生育場所] 山野
[分布] 在来種 本州(中部地方以北)