秋の果物、その中に宿るボッティチェリ絵画の美
ウフィツィ美術館の中で最も魅力的な作品の1枚、”ザクロの聖母(La Madonna della melagrana)”は幼子キリストが他の子どもと同じように本能的に手でザクロをつかんでいる。
象徴的で意味深なこ丸い果実。
その形はこの絵画にとっても完璧な形、なぜならこの絵は四角ではなく、縁が金の大きなトンド(円形)だから。
聖母の膝の上に座った幼子キリストは、若い天使に囲まれ、母から果実を渡される。
彼女は、受難のときも再生の時も我が子と共にいた。
聖母と幼子が共に果実に触れている、その複雑な手をよく見てほしい。
ザクロの中に見える赤い種は、キリストが人類を救うために流した血の象徴。
ある人はこの赤い果実を脈打つ臓器、心臓のようだという。
またザクロは多産の象徴で、「乳を与える母」のメタファー、ギリシャのヘラ、伝統的なキリスト教のマリアの象徴とも考えられている。
聖書、もしくは古代の神話によると、ザクロは原始からの木で、エデンの園の禁断の果実はリンゴ(mela)ではなく、ザクロ(mela granata)だとも推察されている。
色々な文化が赤く色づくザクロを脅威のシンボルであり、意味深であると考えている。
聖書では7不思議の1つとして神が地上に与えた果実の1つで、豊穣を約束している。
神話の世界では、ペルセポネ、ゼウスとデメテルの間に生まれた娘、は生と死の対立、季節の移り変わりを象徴する。
なぜなら彼女はハーデスに拉致され、冥界に連れて行かれた。
後に地上に戻ることができたものの、冥界で食べたザクロの実、6個のせいで1年のうち6か月冥界で過ごさなければならなくなった。
コーランでは、ザクロはアッラーが造った素晴らしいものだと書かれている。
またユダヤの文化では実だけでなく種も重要で、ユダヤの教え、トーラーに613のミツヴァの613はザクロの種の数だといわれる。
1枚の絵のほんの一部分。
ザクロに触れた大きな手と小さな手のつながり、
このようなデリケートな筆致を使える唯一の画家ボッティチェッリが描いたのは、人生のエキスが詰まった果実だった。
先週、ウフィツィ美術館のFBに載っていた。
この拙ブログの読者にはボッティチェッリのファンが多いので、文章も載せてみた。
ウフィツィ美術館所蔵、1487年