イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

何人目のモナリザ?(Gioconda Torlonia)ーRoma

2021年12月12日 18時40分24秒 | イタリア・美術

「モナリザの双子」

さて、何人目の姉妹だろう?
先週イタリア語のサイトでちょっと賑わっていたこの方は、フランスのルーブル美術館で一番有名な彼女ではない。
こちらの”モナリザ”は1892年、歴史に初めて登場する。
通称”トルローニアのモナリザ(Gioconda Torlonia)”
トルローニア家(Torlonia)のコレクションだったものが、ローマ国立古典美術館(Galleria nazionale d’arte Antica di Roma)に所蔵された時だ。
トルローニア家の目録には1814年の記録が残っている。
絵の裏側には、美術館が貼り付けた古い目録の半分がくっついたままになっている。
テーマ:モナリザのコピー
作者:レオナルド・ダ・ヴィンチのコピー
来歴:Torlonia
サイズ:縦0.7m、横0.5m 

実はこのモナリザ、イタリアに”戻る”前はフランスにいた。
その証拠にキャンパスにナポレオンの皇帝紋章の封蜜が残っているから。
たぶんナポレオンの叔父にあたるジョゼフ・フェッシュ枢機卿(cardinale Fesch)のコレクションだったと考えられる。彼はトルローニア家のフランス分家に近い人だった。
1821年までトルローニア家の美術目録の作成に従事していた研究者Giuseppe Antonio Guattaniは、この作品の作者をベルナルディーノ・ルイ―二(Bernardino Luini)と考えていたが、その後の目録からはこの見解は消えていた。
1851年に出版されたヴァザーリの「画家・彫刻家・建築家列伝(Le Vite)」のコメントにはこの作品がレオナルドダヴィンチの作品のコピーと考えられる作品と一緒に掲載された。

 «In Firenze in casa Mozzi; nel Museo di Madrid; nella Villa Sommariva sul lago di Como; presso il Torlonia a Roma; a Londra presso Abramo Hume, e presso Woodburn; e nell'Ermitage di Pietroburgo [...]e finalmente un'altra copia nella Pinacoteca di Monaco».
フィレンツェのモッツィ家、マドリッドの美術館、コモ湖のソッマリーヴァ宮殿、ローマのトルローニア家、ロンドンのAbramo Hume,Woodburn、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館、<略>更に他のコピーはミュンヘンの絵画館が所蔵している。

1500年代、他の絵画同様タブローに描かれたこの絵をたぶんフランスで1700年代キャンバスに移したのは、更なる劣化を防止するため。
キャンバスに貼りついた紙きれには、フランス語でこの絵画の移動について書かれている。

この”モナリザ”が初めて一般に公開されたのは2019年10月3日から2020年1月12日までの3か月。
うげげ、私この時期イタリアにいたのに…
ローマで開催されていた「ローマのレオナルド 影響と遺産(Leonardo a Roma. Influenza ed eredità)」という特別展だった。
とほほ、ローマにいたよ私…
場所はラファエロのフレスコで有名なヴィラ・ファルネジーナ(Villa Farnesina)、レオナルド没後500年記念のこれも一環だった。
参考:http://www.villafarnesina.it/?page_id=1329
何で気がつかなかったかなぁ???
しかし、本来なら真贋問題などで大きな話題になる所が、その後新型コロナの爆発的感染に伴い、ロックダウンになったイタリアでは3か月という短い期間しか展示されることはなかった。

 その特別展の後、彼女はどこに戻ったのか?
それはここ。

写真:Wikipedia
ここはどこかと言いますと、Palazzo Montecitorio、モンテチトーリオ宮殿はイタリアの国会議事堂、代議院 (下院) 議事堂だ。
私も1度だけこの中に入ったことがある。

今年2月下院のホームページにこんな文章が載った。
「1927年から国立古典美術館所有のモナリザのコピーは下院で保管されていた。
このコピーはレオナルドの工房もしくはレオナルドの直接の共同制作者のものと考えられる。
下院は年間およそ200,000人(うち60,000人は学生)が訪れるため、この作品を修復後下院内でも最も重要な部屋の1つ、Sala Aldo Moro(アルド・モーロの部屋)に移動する。」
今になって作品の重要性を知ったのか?
入場料取るわけじゃないから人寄せパンダではないよね?

その言葉通りSala Aldo Moro(アルド・モーロの部屋)、通称「黄色の部屋(Sala Gialla)」に移された双子のモナリザは、今はコロナのせいで一般公開はされていない。
部屋の様子はこちらから。

ちょうど現在スペイン、プラド美術館では「レオナルドとモナリザのコピー(Leonardo y la copia de Mona Lisa. Nuevos planteamientos sobre la práctica del taller vinciano)」という特別展をやっているようだ。
公式サイト:https://www.museodelprado.es/

どちらも遠いなぁ…


参考・写真:https://www.iltempo.it/

 



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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
モナリザ (カンサン)
2021-12-12 18:45:37
fontanaさんへ、このモナリザは目が大きくぱっちりとしていますね。今で言うと、"盛った"という感じです。
土曜日にオペラ "ドン ジョヴァンニ" を見てきました。全幕、原語上演です。とてもよかったです。
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たぶん再掲 (山科)
2021-12-26 17:40:01
またか?といわれるかもしれませんが、モナ・リザでは、このURLで引用した
オリジナルの《モナ・リザ》とプラド美術館の複製 | フォーカス
(URLが入力できなかったので間接引用)
の高精細比較が、とても良いツールだと思います。
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