イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

ミラクル エッシャー展ー上野の森美術館

2018年07月24日 15時41分36秒 | 展覧会 日本

ちょっと空いてしまいましたが、今回も長崎から飛んでしまいます。
もう先週の金曜日の話になってしまいますが、またまたぎりぎりの「ミラクル エッシャー展」に行ってきました。
ひ~外に出るのが命がけですわ。

マウリッツ・コルネリス・エッシャー(Maurits Cornelis Escher, 1898年6月17日 - 1972年3月27日)
実は大して興味がなかったんです。
それが新聞を見てちょっと興味が出て、やっぱり行こうと思っていたのですが、この暑さでなかなか出かけたくなくて、またまた例のごとく閉展間近、29日までです。
ということで、いくら夏休み前の昨日でも、かなり混んでるかなぁとびくびくしながら会場入りしましたが、思ったほどではなかったです。もちろん空いてはいませんけどね。

今回の展覧会では世界最大のエッシャーコレクションを持つエルサレム美術館の約150点の作品が出ています…って知らなかった。更に長崎のハウステンボス美術館も約180点のエッシャーの作品を所有しているというのですが…
デ・ハーグにはエッシャーの美術館が有りますが、私時間がなくて省いたんです。
この展覧会を見た今は、なんで行かなかったのか非常に後悔しています。

感想。
いやいや、食わず嫌いはダメですねぇ…
エッシャーというとポスターにもなっている謎めいた絵、「だまし絵」の方が有名ですが、私はここまでたどりつくまでの作品の方が感動しましたね。

展示は
1.エッシャーと「科学」
2.エッシャーと「聖書」
3.エッシャーと「風景」
4.エッシャーと「人物」
5.エッシャーと「広告」
6.エッシャーと「技法」
7.エッシャーと「反射」
8.エッシャーと「錯視」
の8つとエピローグの「循環する世界」のキーワードに沿った展示になっていました。

中でも私が気に入ったのは2と3
まず「聖書」エリアには旧約聖書から天地創造が5枚。(4日目は今回は出展されてない)
近くにいた人が「なんで一週間なのに7日目がないの?」と言っていた人がいたのには驚いた。
まぁ仕方がないことなのかもね。

「はじめに神は天と地とを創造された」から始まる『創世記』
1日目には天と地、昼と夜が出来、2日目に神は空(天)を創り、3日目大地、海を創り、大地には植物をはえさせた。
4日目に神は太陽と月と星を創り、5日目には魚と鳥を創られた。そして6日目に神は獣と家畜をつくり、神に似せた人を創ったのち7日目、神はお休みになった。
だからユダヤ教やキリスト教では神がお休みになった7日目にあたる日曜日はだから働いてはいけない。

なんか怖いんです、このシリーズ。
この連作を含めた16枚の版画の素描の多くがローマのPalazzo Veneziaで展示され時、非常に好評だったそうです。
中でも2日目

後にオランダの高等教育美学推進協会のために特別な刷りが作られたそうです。

私が一番きになったのはこのイブがヘビにそそのかされてリンゴを食べてしまう「人類の堕落」

へびじゃあないんだよ、とかげ!!またそのとかげの顔が不気味…なんだろうこのおどろおどろしい感じは。


「バベルの塔」は、違う言語をしゃべるようになった人類を区別するために、白い人と黒い人が混在しています。
この塔がせりあがる迫力もすごい。見ているだけで酔いそう…
この隣にはヒエロニムス・ボスの代表作「地上の楽園」に登場する「樹木人間」をモチーフとした作品もありました。

3.「風景」ではエッシャーが訪れたイタリアの風景がダイナミックに描かれていて素晴らしかったです。

アトラーニ(アマルフィ海岸)
人が列を作って歩いている道路には、今では自動車がひっきりなしに通っています。
写真だったら

イタリアで一番小さな村です。
白と黒しかないのに、そのコントラストが絶妙!!海の波の感じなど、素晴らしいと思います。
作品すべてに共通しているのは、エッシャー特有の視点。
そして版画とは思えない細かい描写。
非常に充実した展覧会に仕上がっていて、一気にエッシャーファンになりました。

それから図録が特殊です。
普段の図録と形が大幅に異なるのは困るのですが、コデックス装(糸かがり製本)を使ったり、見やすさに特化しています。
つるつるじゃない紙質も個人的には好きですね。

http://www.escher.jp/

追加:現在会場は非常に混んでいるそうです。
入場状況などTwitterで随時情報が流れているようなので、そちらをご参考にして暑さ対策してくださいね。
https://mobile.twitter.com/escher_ten

実は暑さを押して、この後国立新美術館で開催中の「ルーブル展」の方へも行きました。


いやいや、暑さにやられました。
1か所にしておけば良かったかなぁ…全然集中できず、こちらは正直いまいちでした。


いや~暑い暑い。

エッシャーは27日までで東京は終わりですが、このあと大阪、福岡、愛媛と巡回しますので、是非見に行って下さいね。
暑さに負けず頑張りましょう。



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4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ビアズリー (山科)
2018-07-25 07:02:45
>「人類の堕落」

あれ、これビアズリー作品と良く似た様式ですね。
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そうなんですね (fontana)
2018-07-25 13:13:30
山科様
コメントありがとうございます。
そうなんでね、知りませんでした。
返信する
イタリア時代 (山科)
2018-07-25 17:38:02
 いいっぱなしで、失礼しました。URLの M.C. エッシャー・ファウンデーションのサイトをみるとこの 版画は、イタリア時代  1927年の作品です。当時の作品はかなり多様で、この絵のような、世紀末英国のオーブリー・ビアズレイ風のこの作品もあります。エッシャーに世紀末英国の影響があるとは驚きました。貴方の指摘がなかったら全くきがつきませんでした。また、普通の肖像画や風景画もあるようです。創世記を描いたこのシリーズ、なんとなくですが、19世紀英国のジョン・マーチンの影をそこはかとなく感じます。この時代のエッシャーは、「バベルの塔」のようないかにもエッシャーらしいものを制作すると同時に歴史的作品の消化と再構成に努力しているような感じがします。ヒエロニムス・ボッスの模写や浮世絵の模倣作までありますからね。


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面白いですね。 (fontana)
2018-07-26 14:12:36
山科様
詳しいご指摘ありがとうございます。
イタリア美術以外はまだまだ勉強が必要だと実感しています。
図録を改めて見たところ「これらの作品(聖書部門)には、19世紀後半の欧米で人気を博したアール・ヌーヴォー様式の影響が見られる。」という説明もありました。(日本の図録には専門的な解説が少ないことにはかなり不満がある有るのですが…)
刷りまで自分で手がけたエッシャーがRomaで印刷を工房に頼んだり、新しい木口木版を使った作品に取り組んだり、イタリア滞在期には大きな変化が見られます。イタリアの太陽の元、色々なものを吸収していたエッシャーが思い浮かぶようです。イタリアを離れたあと、ほとんど風景画を作らなくなったのは、イタリア以上の風景に出会えなかったからかもしれないなぁ、なんて思ってしまいます。
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