丁度50年前の今日、フィレンツェは大洪水に襲われました。
特に被害がひどかったSanta Croce教会では、多くの美術品が大変大きな被害を被りました。
そして今日、あれから50年の時を経て、Giorgio Vasariの”最後の晩餐”が蘇りました。
ということで、今日、明日の20時から24時まで無料で修復したての作品を見ることができるというので行ってみました。
私が到着したのは丁度20時ごろ。しかし門はまだ開いてません。
ここはイタリアですからいつもの事です。
でも
何か無料のイベントがある時は必ず行列ができているので、迷わずそこに並びます。
珍しく20時10分にはならずに開門、思ったよりスムーズに入場できました。
教会の方は特別に招待された人しか入れないようです。
中に入ると
この時間は結構人がいましたが一周して戻ってきたら
かなり見やすい感じに人がはけていました。
「日本人はいつでも写真撮るんだよねぇ」とイタリア語分からないだろうと思っているのか嫌味を言われ、
「そういうあんたたちだって撮ってるじゃん」、と心の中で文句を言っていたら
「僕も日本人になっちゃおう」ですって。一言多いんだよ!
実は私この作品、存在も知らなかったんです、今回の話を聞くまで。
元々これ、Santa Croce用に描かれたものではないんです。
でも確かVasariって、トレント公会議後の宗教改革で、この教会の改装に関わっていたはず。
でもこの作品とは関係ない。
この”最後の晩餐”もともとMurate(S.Croceからすぐそば)の修道院の食堂に描かれていたもの。
”最後の晩餐”は絵のモチーフから、食堂に描かれることが多いんです。
ところが1808年から1810年、ナポレオン軍の宗教施設の撤廃を受け、この修道院は閉鎖、美術品はトスカーナからフランスへと送られる運命に有ったわけですが、
なんとかそれを免れ、San Marcoへ。
そして1815年S.CroceのCappella Castellaniへと移されました。
そして1880年代その時期既に美術館にする予定だった修道院の食堂へと移されます。
1959年から1962年、美術館のスペースは拡張され、現在の第1展示室にこの作品は収められ、1966年11月4日この部屋で完全に水の中に沈んでしまいます。
この部屋に流れ込んだ水は5メートルに及び、更にこの作品は12時間もの長い時間浸水してしまいます。
誰もが再生の見込みはないと思ったことでしょう。
それから40年の間、フィレンツェの文化財保護局の倉庫で眠っていました。
当然40年間放っておいたわけではありません。
絵が描かれた板から、水が自然に抜けるのを待っていたんです。
40年という月日が、この作品がいかに大きなダメージを追ってしまったか、いとも簡単に想像することが出来るでしょう。
板が完全に乾き、本格的に修復が始まったのは今から丁度10年前です。
その頃丁度修復を終えていたのは
Cimabueの”キリスト磔刑図”
げっ、今の今までそう思っていたけど、こんなに保存状態が良いわけがない。
これは違うぞ~
ということで焦って調べましたよ~だってFBにもそう載せちゃったし。
こちらはLippo di Benivieniの作品
Cimabueの方は
これが50年前、泥の中から救出されたところ。
この洪水では世界中の若者がフィレンツェに集まり美術品や古書を救出しています。
彼らは”Angeli del fango”(泥だらけの天使)と呼ばれるボランティア
50年前の活躍した彼らも今日Palazzo Vecchioで行われた祭典に参加していたようです。
この辺りの話は映画は、マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ監督の「輝ける青春」(LA MEGLIO GIOVENTU)を観ると良くわかります。
ちなみにこの作品、上映時間が366分、つまり6時間強の長さなのでご注意を。
10年前、修復されたのはこんな状態。
表面の4分の3はやられてしまったという壊滅的な状態です。
この作品も運命的な作品で、1948年からウフィツィ美術館に保管されていたものをわざわざ1959年、オリジナルの場所へ戻され被害に遭ったわけです。
あのままウフィツィ美術館に置いたままだったら…
両作品共技術の進歩と修復師の忍耐でここまで蘇りました。
”最後の晩餐”の費用に関しては、Protezione civile(と呼ばれる日本語ではなんと訳せばいいのかなぁ…民間防衛団体?)からとプラダが寄付したそうです。
何故か周りで多くの人がその話をしていました。
そんな大きな被害を受けたなんて、言われなければ分かりませんよこれは。
驚くほど色もきれいだし、大きな剥落も有りません。
このテーブルクロスの真ん中、下の方に、Vasariのサインがあります。
サインまでは読めないですね。大きなカメラ持って行かなかったもので…
Vasariと言えば日本でも公開されたばかりの”インフェルノ”
最近個人的にもちょっとVasariづいています。
昔はあまり好きではなかったんですけど、今はちょっと気になっています。
この”最後の晩餐”が展示されている部屋の隣では、洪水や修復の工程を説明するビデオが流れていました。
現在、中部イタリアでは地震が続いています。
今回の地震でまた被害を被った美術品や歴史的な建物は数多くあります。
人的被害の改善を第一に、美術品などの修復もしなければならないのは並みの事ではありません。
そこらへんは地震大国である私たち日本人が一番分かっていること、でもどうしたらいいんでしょうね?
”再生”について考えさせられた50年後の11月4日でした。
久しぶりに真面目な投稿でした。良かった、良かった。
ちなみにフィレンツェは今のことろ地震の被害、心配はありません。
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