GW前半は天気が良くないこともあり、ダラダラと過ごしてしまった。
久々にイタリアネタを少々。
最近とみにイタリアと遠ざかっていて、イタリア語力の低下に危機感を感じながらも何もしない自分。
さて、最近気になったのはこの作品。
写真:https://www.trevisotoday.it/
北イタリアのトレヴィゾ(Treviso)という街の大聖堂、サン・ピエトロ・アポストロ大聖堂(San Pietro Apostoli)のマルキオストロ礼拝堂(Cappella Malchiostro)にある「受胎告知(Annunciazione Malchiostro)」
トレヴィゾには何度か行ったことがあるが、この作品を見たことは…たぶんない!
と思って写真を確認したらちゃんと見てました、2016年4月に。
これが大聖堂の外観。
礼拝堂。
2016年4月の私が遠くから撮影した写真。
この写真だとそれほど劣化してるとは思えないんだけど…
今回の修復の最大の成果は、数世紀見えなかった画家のサインが見つかったこと。
右下に“Titianus pinxit MDXX” (ティツィアーノ 画家 1520)と画家の名前と制作年が入っている。
”礼拝堂はトゥッリオ・ロンバルドとアントニオ・ロンバルドの兄弟の設計のもと1519年10月に完成し、1520年までイル・ポルデノーネによって壁面とクーポラの天井にフレスコ画が描かれた。礼拝堂の装飾が完成したのは1523年1月頃であり、『受胎告知』もまた同時期に助手の助けを借りて制作されたと考えられている。”(Wikipediaより)
と考えられていたが、今回このサインの発見でティツィアーノの真筆であることが証明されたことになる。
40年くらい前から修復の必要性は取りざたされていたものの、結局修復が始まったの昨年6月。
更にコロナの影響で作業が遅れることもあり、当初昨年秋には修復を終える予定が、このタイミングとなってしまった。
修復中は、”小窓”から修復の様子を覗き見ることが出来ていた。
(その様子はこちらから。)
“Save Venice”とChristopher Todd Pageというアメリカ人の 69.000€(およそ1000万)寄付により、4人の修復家の手で進められた。
“Save Venice”は50年以上に渡ってヴェネツィアの美術や建築の保存や修復に尽力しているアメリアの非営利団体で、ヴェネツィアのサンタ・マリア・グロリオーザ・デイ・フラーリ聖堂(basilica dei Frari a Venezia)のティツィアーノの「聖母被昇天(Assunta)」や スクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ(大同信組合) (Scuola Grande di San Rocco)、トルチェッロ島の大聖堂(basilica di Torcello)などの修復の援助をしている。昨年はヴェネツィア本島ではなく、イタリア本土の方に目が向けられ、その中でも特にトレヴィゾのこの作品が支援対象に選ばれた。
典型的な「受胎告知」とは一線を画すこの作品は、多作なティツィアーノの作品の中では、なぜか若干過小評価気味だというが、非常に興味深い作品だと思う。
礼拝堂の床の市松模様は、「受胎告知」の画面の中まで続き、その床に直に座る聖母。
脇には大天使の出現に驚き、聖母の手から床に落ちた本。
受胎告知の場面の通例では、画面左側に大天使ガブリエル、右側に聖母マリアが配置されていたが、両者の位置を入れ替えた上、大天使を右側後方に、聖母マリアを左側前景に動かして、対角線的に配置したことで、2次元の画面に立体感が生まれている。
更に2人の様子を奥の柱の影から覗き見る寄進者ブロッカルド・マルキオストロが更に深い奥行きを与えている。
大天使ガブリエルの大胆で躍動的なポーズはこれまでに描かれてきた、厳かな雰囲気の「受胎告知」とは一線を画しているし、ティツィアーノは他にも「受胎告知」を描いているが、この構図で描かれたのは唯一この作品だけなのだ。
そして、ロレンツォ・ロット(Lorezo Lotto)はこの作品から影響を受け「レカナティの受胎告知(Annunciazione di Recanati)」を制作したと考えられている。
写真:Wikipedia
参考:https://www.trevisotoday.it/
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コメントありがとうございます。
ティツィアーノは本当に長い人生で画風の変化が激しいですね。私は最晩年のヴェネツィアのアカデミア美術館所蔵の「ピエタ」を見た時に感じました。
ちなみに昨日ようやく「メトロポリタン美術館展」に行きましたが、こちらにも1点出ていました。
画風もまた大きな板絵という点からもルネッサンスよりですね。ティティアンの作品はプラドでも多量にみましたが、プラドの作品はややバロックよりのように感じました。80歳という長いキャリアですから、画風の変化があってあたりまえだと思っています。
女性半身像の画家のことなど最近考えていたので、コメントおくれました。