「活版印刷を発明したグーテンベルクのおかげで、本が流通するようになりました。」と学校では習った気がする。
活版印刷は、羅針盤、火薬と合わせてルネサンスの3大発明とも言われている。
しかし実際のところ、彼の印刷していたのは大型の聖書。
グーテンベルクのおかげで爆発的に庶民までもが本を読む事が可能になったわけではない。
現在のように簡単に持ち運べる本を発明、印刷したのは1人のイタリア人だった。
15世紀の時点では約500万冊の本が作られていたとされるが、16世紀には一気に2億冊まで増えたという。
ドイツ人のグーテンベルクが活版印刷を発明、ヨーロッパに広がる。
当時東洋との貿易で栄耀栄華を思いのままにしていたヴェネツィアには、異国から様々な情報や機材が集まっていた。
そんなヴェネツィアにアルド・マヌツィオはやってきた。
1501年八つ折りのコデックス(冊子)を刊行、世界初の文庫本が誕生、この瞬間から人類はいつでもどこでも本が読めるようになった。
そうだ、イタリアの大学の授業でその名前、確かに聞いた気がした。
でもそんなことすっかり忘れていた。
ところが先月、朝日新聞の書評に1冊の本が載った。
「ー良書にこだわった男の人生ー
西洋の印刷技術は、実はグーテンベルクではなく15世紀のヴェネツィアで活躍したアルド印刷所に多くを負っている。
イタリック体やページ番号のある現代の八つ折りの小型本はアルドの創始による。
学識豊かなアルドは、売らんかなの商業出版に対抗し、ギリシャ・ラテンの古典の刊行に努めた。
既に黎明期から、出版を巡る根源的な対立が始まっていたのである。」(2018.08.11朝日新聞より)
スペイン人が書いた本、翻訳だった。
最初、全然物語に入れなかった。でも本編が始まると引き込まれおよそ400ページを一気に読み切った。
良書、悪書問わず、好奇心を満たす作品をより多くの人に届けるために悪戦苦闘する様子は、やはり紙の本を愛する1人として非常にほほえましく、PCなどの機械が生まれ紙の本がそれにとって代わられようとする今よりも優れた発明をなしたアルドに情熱に底から拍手を送りたくなった。
そして偶然今読んでいる本にもアルドのことが出ていた。ほぼ同じタイミング?
こちらは最近様々な新聞に書評がなるほど話題の作品。
別にこの2冊に同じテーマが用いられていると知って読んだわけではない。
イタリア関係の本は、極力読むようにしているから、テーマがダブっても何ら不思議はないけどね。
こちらは現在では日本でも「露天商賞」(premio bancarella)で名前を知っている人もいるかもしれないイタリア、トスカーナ州の山の中にあるMontereggio(モンテレッジォ)の話。
「露天商賞」については「食堂かたつむり」のことを書いたときに紹介しているがその時も書いたけど、この地域には本の行商人がいた。彼らがどのようにこの村で生きていたか、どのような本がどのようにしてこんな山奥に運ばれたか、筆者の内田さんが自分で調べて、現地で調査して書いた本が面白くないわけない。
アルドの他に、山奥に山奥で活版印刷に取り組んだ人がいた。(これはさすがに知らなかった。)
興味が興味を呼ぶ。「探せば見つかる」まるでレオナルド・ダ・ヴィンチがPalazzo Vecchio(ヴェッキオ宮)のSalone dei Cinquecento(500人広間)の壁に残したメッセージみたい。
筆者は導かれるままに。
人間はどれだけ知識を求めていたのだろう…
人間にとって”本”とは何か?
この2冊、是非合わせて読んで欲しい。
そしてデジタル媒体ではない、本のぬくもりを感じて欲しい。
私もうっかり読めない本に手を出しそうになります。また「イタリア語なら読めるから」と手に入れて、どれだけ読んでない本が多いことか…
↓のブログの2015年12月28日-2016年1月4日がオランダ、ベルギー旅行です。お時間がある時、ご覧ください。http://tatsu114.blog.fc2.com
記事拝見しました。この時期のヨーロッパは独特の雰囲気があっていいですよね。懐かしくなりました。ありがとうございます。