友達から無料券を頂いていて、閉展が迫っていたので、昨日東京都庭園美術館に行ってきました。
お昼ごろ到着したのですが、その時は大して並んでなかったのに、帰りの3時前には入り口に列が出来ていました。
庭園美術館の敷地内にある旧朝香宮邸。
朝香宮家は、久邇宮朝彦親王(くにのみや あさひこしんのう)の第8王子鳩彦王(やすひこおう)が1906年に創設した宮家。といっても全然ピンと来ないのですが、とにかく明治天皇の第8皇女允子内親王とご結婚し、その時白金台に白金台の御料地1万坪を下賜され、そこに建てられたのがこのお屋敷です。現在は庭園美術館の本館となって、国内でも珍しいアール・デコ様式の建物は国の重要文化財に指定されています。
今年3月20日まで、建物や庭園の工事と整備が行われていましたが、それもすべて終了し、全館オープンの運びになりました。
「庭園美術館」というくらいですから、広々とした緑あふれる庭園が敷地内には広がっています。
お庭は西洋庭園と日本庭園の2種類があるのですが、
西洋庭園では、木陰でまどろむ人や太陽のもと走りまわる子供たちなどがいて、ここが都内のど真ん中だということを一瞬忘れさせます。
日本庭園の方にはお茶室もあります。
先日BS日テレの「ぶらぶら美術・博物館」という番組でこちらの茶室が取り上げられていたのですが、こちらの茶室「光華」は1911年に建てられたもので3つの茶席からなっています。
お茶のことは全然分からないのですが、ここの目玉はテーブルと椅子を使う“椅子式点前”の「立礼席」
交通事故で足を怪我した鳩彦王に配慮して作られたものでしょうか?非常に珍しいものなんだそうです。
テーブルは今では数少なくなった漆職人が丁寧に塗り直したものだってことも確か番組内で言っていました。
お庭の方は
新緑のこの時期は最高ではないでしょうか?
都会の喧騒を全く感じさせない清々しい空気が最高です。
庭園のみの入場料は一般200円です。
では、中に入りましょう。
入口には2頭の守り神(?)
2頭の狛犬が鎮座しています。
おさえているものが違います。
鳩彦王は軍人として欧州留学中の1923年にフランスで交通事故に遭い、足に大けがを負います。
日本に戻ることもできない鳩彦王の元へ允子妃も駆けつけ、二人は2年余りパリで過ごすことを余儀なくされました。
調度そのころパリでは通称「アール・デコ博覧会」が開催されていて(1925年)、二人はとても影響を受けます。
そして帰国後建てられたのがこのアール・デコ調の邸宅でした。
全体設計は宮内省内匠寮、主な部屋の内装設計はフランス人装飾美術家のアンリ・ラパンが起用されました。
1933年4月に完成した邸宅に朝香宮家の方々は、1947年皇籍離脱するまでお住まいでした。
そして1947年から1954年までは吉田茂の外相、首相公邸として使用され、1955年から赤坂迎賓館が改装される1974年まで、国賓・公賓を迎える迎賓館として使用されていました。
その後1981年には土地、建物が東京都の所有となり、1983年10月1日に東京庭園美術館として一般公開、1993年には東京都の有形文化財に指定され、2015年アール・デコ様式を今に伝える優れた意匠が高く評価され、国の重要文化財に指定されました。今回は4年の休館を経、満を持してのリニューアルオープンとなりました。
ちなみにアール・デコとは1910年代から30年代にフランスを中心に流行した美術工芸の様式。単純・直線的なデザインが特徴。
私も一瞬混乱しましたが、アール・ヌーボとは違います。
アール・ヌーボは、フランス語の「Art Nouveau=新しい芸術」を意味するもので、アールデコが興る前の19世紀末から20世紀初頭にかけてヨーロッパを中心として広がった芸術運動で、曲線的なデザインが特徴で、植物といった有機的なものがモチーフとされることが多く、その際に好んで利用されたのが鉄でした。細い線材の鉄で、しなやかな柔らかい曲線の表現しています。
正面玄関は撮影不可だったので、写真は公式サイトから借用しました。
ガラスレリーフの扉はルネ・ラリック作。このお屋敷のためにラリックが作ったオリジナル作品で、これだけの大きさのものは大変貴重なんだそうです。
床のモザイクは天然石で作られたもので、デザインは宮内省内匠寮技手の大賀隆。円やジグザグ模様などの幾何学模様はアール・デコの特徴の1つです。
中に入ると
様々な場所に素敵な装飾が。これは階段の下。
中でもアール・デコの粋が集められているのが、大客室と大食堂で
扉のモチーフが素晴らしい。
小客室の壁には
アンリ・ラパンの油絵…油なんだ。
マックス・アングランの銀引きフロスト仕上げのエッチング・ガラスをはめ込んだ扉
大客室ガラス扉上のタンパン(半円形の飾り部分)の部分はレイモン・シュブ
風船を上げるカップル?
この壁の装飾は?
大食堂の壁です。こんな壁見たことがない…
こちらもレオン・ブランシェが手がけたレリーフでもともとコンクリート製で、フランスから輸入したものなのですが、到着時ヒビが入っていたので、日本で型を取り直して石膏で作り直し、銀灰色で塗装されているそうです。
この部屋は来客時に会食に使われていたこともあったので
すてきなテーブルもありました。
そして
ラジエーターカバーには魚や貝が。
他にも
こんなのだったり
こんなのだったり、とにかく凝ってます。
こんなところに装飾いれてみたり…
こちら、暖炉の上の壁画はアンリ・ラパンの作で、赤いパーゴラと泉が油彩で描かれています。
小食堂には
ちょっと珍しい椅子とか
現地から持ち帰ったのでしょうか?セーブルのティーセットが有りました。
こちらは
2階。
照明もアール・デコ調です。
こんな感じでここかしこがアール・デコ!
映像記録なども残されていました。
最後に期間限定で公開している3階のウインターガーデンへ。
狭いスペースなので、ここだけは入場を制限しているので、ちょっと待たされてました。
温室ですね。
家具は建設当時のものではありません。
壁は本物の大理石を、床は人工の大理石を使っています。
つなぎ目が分からないようしています。
ちゃんとお水も引いています。
細部まで凝っていて、中々見応えがあるお屋敷でした。
ではでは次回は新館で行われていた「フランス絵本の世界」へ。
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