イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

ボスの展覧会

2016年08月16日 16時20分09秒 | 他の国

8月も半分終わってしまいました。
今晩は友人と暑気払いの焼肉~

さて、来週からリベンジのアンダルシア方面のスペイン旅行へ行きます。
なぜ、よりによってこの暑い時期を選んだか、と言いますと、 プラド美術館で開催されているヒエロニムス・ボスの特別展が9月11日までだから。
ボスと聞いてもピンと来ない人もいるかも

でもこの作品ならたぶん一度くらいは目にしたことが有りますよね。
何とも不思議な、でもちょっと楽しい作品です。
これはプラド美術館所蔵の作品「快楽の園」です。
最近ちょっとフランドルの画家たちも気になっているんですよね。(って言いましたっけ?)
ボスがレオナルド・ダ・ヴィンチと同世代というのもちょっと驚きでした。

ストライキの為いきなりキャンセルになった3月の計画では、セビリアから入ってセビリアから出ようと思っていたのですが、
いきなりキャンセルになった後、この特別展の話を聞いたので、今回はマドリッド発着です。(着発か?)
プラド美術館は数年前に行っていますが、これも運命、「見に行けって」ってことだよねぇ…あの時は「着衣のマハ」が日本に行っていて見られなかったし。(今度こそいるよね、マハちゃん)
と思っていたのに、こんなに早く終わるとは思っていなかった。
正直、秋、もう少し涼しくなったから行きたかった。

昨日そろそろ腰を上げようと日本から持ってきたボスの本を読みながら、ふと思い出したことが。
あれ?1月ボストンに行った時もボス関係の特別展を見た気がする…気がするになってるところが恐ろしい。
ということで調べました。
自分で撮った写真は有りませんでした。禁止だったかな?
でもちょっと調べたら、やはり行っている日本人がいましたね。
ハーバード大学美術館で1月23日から5月8日まで開催。
ん?私見た?と思って調べたら、なんと私が訪れたのは1月24日、なんと開催2日目!?おっとびっくり!知らなかったよ。あれ?知ってたけど忘れてた???
そうそうあの大雪の翌日です。
確かビデオが良くできていたのは覚えているんですけど…あの時超具合が悪かったからなぁ。よく生きて帰って来れた。
ただこちらの展覧会にはボスの作品はなく、同時代も模倣者の作品だけだったようです。(それすら思い出せなかった)

完全にパクッていますね。

そして実は4月ベルギー&オランダに行った時期、ボスの生まれ故郷でもあるスヘルトーヘンボス市にある北ブラバント美術館でも大規模な特別展が行われていたんです。
でもこちら、チケットが完全予約制で、私が気が付いたときには既に完売。
当日券も有るには有ったそうですが、ない日もある、ということで遠回りしてここまで行くことはできず、泣く泣く諦めました。
ボスの作品を1枚も持たない北ブラバント美術館には、事前リサーチに300万ドル、展覧会には700万ドルの資金がオランダ政府から出されたというから、どんだけ気合が入った特別展だったから想像に難くない。
寡作度がフェルメール並みのボスの作品を世界中から集め、
ボスの現存の24点又は25点の絵画のうち17点を集めるとともに、
弟子やボスのアトリエが製作した作品、ボスの影響を受けた作品を含めて100点を超える作品を展示した、とか。
く~やっぱり見たかった。

ちなみに数少ないボスの作品を世界中で一番所有しているのはスペインのプラド美術館。
フェリペ二世がボスの最大のコレクターでした。
このお方はイタリア美術も大好きで、プラド美術館のTizianoの作品数もすごいですからね。
まぁTizianoはボスとは違って長生きだし、作品数もものすごく多いですけどね。

九年前から北ブラバント美術館の特別展の為、Bosch Research and Conservation Projectという世界の9人の専門家を集めたプロジェクトが結成され、ボス作品の調査が行われた。
その結果ネルソン・アトキンズ美術館(米カンザスシティ)所蔵の「聖アントニオの誘惑」、グルーニング美術館(ブリュージュ)の「最後の審判」などが新たにボスの作品と認定された。
そして、「La pierre de la folie(賢者の石の切除)」、

「La tentation de Saint-Antoine(聖アントニオの誘惑)」、

「table des pêchés capitaux(7つの大罪と四終)」

の3点がボスの作品ではないと決定づけられたのである。

中世美術専門家のジュネーブ大学のフレデリック・エルシング(Frederic Elsig)教授は、「La pierre de la folie」と「La tentation de Saint-Antoine」はボスのカタログから弟子達が起こして作ったもので、
「table des pêchés capitaux」は、ボスのアトリエの作品だと考えている。
プラド美術館がこの結果に不服なのは当然で、元々「悦楽の園」を貸さないことは決まっていたが、北ブラバント美術館の貸与申請のほとんどを拒否。
そして独自で特別展を行うことにしたとか。
何とも大人げないというか… 
まぁもしこれがイタリア人の画家の作品だった場合イタリア人は「イタリア人(の研究者)以外に何が分かるかぁ~」と言いそうですしね。
科学が発展すると、分からなくていいことまで分かってしまうのが困りもの、とか思ったりもします。

ただ、う~んこれもすごく大人げない話ですが、気が付かなければ良かったことに気が付いてしまった。
この真贋と認定されたグルーニング美術館(ブリュージュ)の「最後の審判」、この美術館に行ったのになかったねぇ。

ブルージュで食べたいちごのチョコレートかけ、美味しかったなぁ。
ではなくて、本当は

こちらの「ブルージュの最後の審判」が見られずはずだった。
そしてブリュッセルのベルギー王立美術館で細かく撮っていたボスの作品がレプリカだったってことも今気が付いた。 

「聖アントニオの誘惑」のレプリカ、本物はリスボンだ。
こちらで見るべきボスの作品は

こちらの「キリスト磔刑」でした。
これは見たような気もしないでもないんだけどなぁ・・・

更にゲントでも見た

キャプションにはボスの作品って書いて有る!!

それなのに…
Wikipediaの英語版にはちゃんと書いて有った(日本語なし、イタリア語には書いてないんだけど)
これも2015年にBosch Research and Conservation Projectがボス本人ではなく、追随者の作品と認定したものでした。

この美術館のボス作品はこれ

「祈る聖ヒエロニムス」
く~これもなかったぞ~
ということで、まぁボスの作品を見るために訪れたわけではないですが、こんなにも傑作がなかったと今更ながらに分かってしまうと泣けてくる…

ということで…
プラド美術館、楽しみです。 

ちなみに昨日から読み始めたのはこちらの本

謎解きヒエロニムス・ボス 
これも会場に持って行くかなぁ~
 



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7 コメント

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本物だと思ってたのに。 (情報ま。)
2016-08-17 11:48:26
ボス展いいなぁ~
私も行きたいですよ。
でもさすがの私も9月11日までにプラド美術館に行くのは無理です(笑)

なんか気になるんですよね、ボスのあの奇妙な作品たち。

それにしても、≪愚者の石の切除≫がボスの作品ではないですと?!
去年の秋、三菱一号館美術館の「プラド美術館」に≪愚者の石の切除≫が来たので、
鼻息荒くして観に行ったのに。
ちょうど同じ時期にBunkamuraでウィーン美術史美術館所蔵の風景画の展覧会が
あって、そちらにはボスの模倣者の作品が出品されていて、日本ではなかなか
観る機会のないボスとその周辺作家の作品が観られた♪って思ってただけに
ちょっとショック~

≪愚者の石の削除≫のボスの真贋のはともかくとして、例の Spazio に
この作品のことについて書かれたものがあるので、時間があったら
読んでみてくださいね。
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行ってきま~す。 (fontana)
2016-08-17 15:50:07
情報まさん
え~行かないの(笑)
このプロジェクトの結果は詳しく”Hieronymus Bosch, Painter and Draughtsman: Catalogue Raisonné”に載っているそうです。当然英語だし、600ページ超の15000円!?
ウィーンでも特別展やってるらしい。さすがにそちらには行けそうもないですけどねぇ…(^▽^;)
情報ありがとう早速見てみます!!
あっ、ちなみにブリュッセルで再びブリューゲル展やってたんだよね。ここ数年どれだけ見たんだ、って感じでした。(笑)
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ボス展 (山科)
2016-08-25 18:32:50

  BRCPの意見は絶対とはいえないんですね。
  プラドのカタログを読むとまだまだ難しいと思います。

  まだまだ、ボスの作品の整理は難しいですね。

 「謎解き。。」はBRCPに従った本なので決定本とはいえないなあ。

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ありがとうございます (fontana)
2016-09-01 01:06:49
山科様
コメントありがとうございます。(山科様のブログも少し拝見しました。)
昨日ボス展に行ってきました。9月25日まで延長ですか…ものすごく混んでいて、ゆっくり見られなかったのが残念です。所蔵されている場所に有れば人混みの中で見ることはないし、でもこれだけの作品を一度に見るのは難しいし、と複雑です。
BRCP対プラド、そうでしょうね。
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ボスの鑑識 (山科)
2016-09-01 08:20:34
fontana 様

 2012年にドイツ人らしい KORENYという人のボス総目録がでていて、これがまたトンデモというか、切りまくった本だったようです。ドイツ語なんで読めないのですがプラドのカタログに、反論するために引用されてるので知りました。

 日本ではBRCPを信仰する某教授もいますが、こういうのは信仰しちゃいけないと思います。

 科学実験観測は事実を明らかにするものですが、事実は解釈が必要で解釈によって「説」になるわけです。
 コペルニクスの時代なら、同じ天文観測から天動説と地動説の両方を出すことができ、しかも天動説のほうが正確だったという故事もありますしね。

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ボスについて (山科)
2016-09-01 08:31:12
 プラドのボス展やボスについては、

 拙ブログのタグ
「ボス展」「プラド美術館」「ボス」
「マドリード」などで

書きとばしております。

よろしかったらご笑覧ください。
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ありがとうございます。 (fontana)
2016-09-02 03:45:19
山科様

ブログを少しずつ拝見しております。やはりカタログを買えば良かったかなぁ、とも思っていたところだったので、とても興味深いです。続きも楽しみにしています。

昔恩師(イタリア人)が絶対ラファエロの作品ではないと分かっているものを、いかにしてラファエロの作品と仮定して解釈してくかという「説」を講義してくれたことを思い出しました。
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