イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

ルーベンスの家の壁は

2018年11月04日 16時31分27秒 | ちょっと言わせて!

今月の芸術新潮の話が、よくコメントしていただく山科様のブログに出ていた。


芸術新潮、高いのに買っても全然読まないことが多いので、最近は買わずに気になる記事だけ図書館で見るように心がけていたのだが、今月はちょっと気になる部分も有ったので購入。この週末、パラパラとみていた。
そしてちょっと文句を言いたくなった。

それはルーベンスの家の記事。
ルーベンスはアントウェルペン中心部に、自信がデザインして才神イタリア様式の家を増築するなどして、約5年をかけてマイホームを完成させた。この家、実に豪華なのだが(実際に私は見てないけど。いや、見逃したんだけど。)
「客間には、大理石の床に金銀細工が施された革製の壁紙。」と書かれている。

何~
まず壁紙、「紙」じゃない。革って言ってるじゃん!!
そこは100歩譲ったとしても、金銀細工は施されていません!!!
見りゃ分かるだろ、と言いたいのだが…
これはネットで検索すると「金唐革」の説明に「金泥などで彩色が施されている」と間違ったことが書かれているからでしょうね。
でもこの金唐革、銀はおいておいても、金はほぼ使われておりません。
金が貴重だった時代に、他の物質を使って金のように仕上げたもので、寒さ対策と明るくするために壁に貼られていました。
絹を使ったつづれ織りよりは安かったけど、技術的にもかなり貴重だったにもかかわらず、保管も大変だったので、劣化して捨てられてしまって、現在ではほとんど残っておりません。
ってこれが私のイタリアの大学での卒論のテーマですから、詳しいのが当たり前で、普通の人が知らないの当然です。
でも、一応高名な美術雑誌ですからね、うそ書かれちゃ困りますよ。
あの頃は、あっちに実物が有れば、それがどんな破片でも見に行っていました。
アントウェルペンまでは行ったのに、ルーベンスの家にこんなに残っていたと知ったのはかなり後のことでした。とほほ。
オランダ、イタリアには少しだけ壁に貼られたまま残っています。
後はドイツ、アメリカ、ロンドンなどの美術館など。
多分スペインにもあると思うのですが、確認は出来ていません。
オランダから輸入され、切り刻まれた物なら日本でも見られます。
例えば今年、長崎の出島で、金唐革を使った小物入れ(小さな箪笥?)を見ました。


これが金唐革


日本には壁に貼る文化が当時はなかったので、オランダから日本に輸出された革をこの箱に張り付けたのでしょう。
これと同じようなものがルーベンスの家の壁に貼られているのです。
金銀細工なんてないでしょう?



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6 コメント

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皮のこと (山科)
2018-11-07 20:46:54
RubensHuisには確かに、1mより高いところにびっしり貼ってありますね。

URLの
Start de virtuele wandeling
をクリックすると、3Dでヴァーチャル・ツアーできますので、これで確認しました。
実は、Youtubeに観光CMがないかとおもったんですが、意外にありませんでした。

なんか、こういう外国の皮製品を日本で小物で珍重するってのは、あの巨大旅行鞄メーカーのルイヴィトンの皮を
小物で珍重してるみたいな感じもします。

こういう嗜好は双方向らしく、
英国のアンドリューラングの書斎で、日本や中国の皮を装幀に使うという話がありました。

Lang The Library Ch.2nd 1881
>
The leathers of China and Japan, with their strange tints and gilded devices may be used for books of fantasy, like “Gaspard de la Nuit,” or the “Opium Eater,” or Poe’s poems, p. 68or the verses of Gerard de Nerval.
>
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ルーベンスの家 (カンサン)
2018-11-07 21:44:09
イタリアの泉さんへ、私はアントワープに行った時、ルーベンスの家に入って見てきました。でも、もう記憶が遠くなっています。(^^) 2015-2016年の年末年始でした。
東京では展覧会が数多く開催中ですね。ルーベンス、ムンク、フェルメール、ボナール、フィリップス コレクション展に東山魁夷展など。京都で先に開催された東山魁夷展はとても素晴らしい展覧会でした。
雑誌に間違いがあったんですか。編集部も大変ですね。
私はある美術の本の中で紹介されている絵に違った絵のタイトルが書いてあったので、出版社にメールしたことがありました。出版社の方が確認されて、"違っていました"、と返事がありました。
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ありがとうございます。 (fontana)
2018-11-09 14:42:13
山科様
いつも有益な情報をありがとうございます。
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目白押しです。 (fontana)
2018-11-09 14:53:46
カンサンさん
コメントありがとうございます。
カンサンさんは大阪在住なんですね。今年の4月に行った興福寺の様子、拝見しました。正倉院展はやはりすごい人気なんですね。今の時期、京都・奈良は紅葉がさぞかしきれいでしょうねぇ。

今年は本当に色々目白押しです。東山魁夷良かったんですね、そうですかぁ…昨日、フィリップス展、横山崋山、三井記念美術館の「仏像の姿」展を見てきましたが、年内にルーベンス、ムンク、フェルメール、ボナール、ルオーも見なくては…という感じです。
イタリアにいても、これだけの展覧会が同時期に開催されることはないので、東京ってすごいなぁ、と思います。
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東京新国立美術館 (カンサン)
2018-11-09 19:59:47
fontanaさんへ、東山魁夷展はボナール展と同時期に新国立美術館で見られます。ボナールとご一緒に見られます。私が今年、日本で見た展覧会では一番よかった、と思った展覧会です。
フェルメール展は2月に大阪にやってきますが、他は関西に巡回してこないようです。
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そうなんですね… (fontana)
2018-11-10 16:28:52
カンサンさん
ありがとうございます。そうなんですねぇ、そうすると行ってしまいそうですね。(笑)
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