イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Raffaello(ラフアエロ)のMadonna Diotallevi(ディオタレッヴィの聖母)里帰りーRimini

2020年10月18日 15時48分10秒 | Mostra(展覧会)in Italia

第22回Festival del Mondo Antico(古代フェスティバル)の一環でRimini(リミニ)において昨日 ”La Madonna Diotallevi di Raffaello(ラファエロの「ディオタレッヴィの聖母」)という特別展が開幕した。

写真:Wikipedia

これもラファエロ没後500年がらみのイベントの1つで、貸し出しの話し合いは2年半前から始まっていて、所蔵先の意向で、2019年の秋に貸し出されるはずだったのが、遅れに遅れこのタイミングとなったらしい。
ローマの展覧会の絡み、コロナ絡みと色々有ったのだろう。
実はRomaで行われた大規模なラファエロの展覧会(記事書いてます。こちら)からも貸し出し依頼が有ったらしいが、所蔵先は500年以上前に描かれたこの作品は非常に繊細で、光や温度の変化に非常にリスクがあるため、意味のある研究などをしてくれなければ貸せないということで、ローマではなく、リミニへの貸し出しなったようだ。

ローマには数多くのラファエロ作品が一堂に集められただけ(いや、それだけでもすごいのだが)だったが、こちらではヴェネツィア大学教授の作品の単品調査だけではなく、リミニ市が所有するGiovanni Bellini(ジョバンニ・ベッリーニ)のPietà(ピエタ)

との比較など色々な視点での研究を含めた有意義な(ローマが無意味という意味ではないと思うが)展示となった。

この作品、実はリミニとは大変縁が深い。
元々はリミニに有ったのだ。
実に178年ぶりの里帰りになる。
この作品の名前は、元々のコレクターの名前から来ている。
Audiface Diotallevi
この人まるで19世紀の小説の主人公のような波乱万丈の人生を送った人らしい。
この人がリミニ出身。
彼の父親は、金持ちの女性と結婚していたにもかかわらず、愛人と同棲していた。
この時代なら良くあることじゃない?と個人的には思ったのだが、実はこれダメ。
不祥事だったようだ。
そしてAudifaceの兄弟Adautoは家名を汚したとして、父を殺してしまう。(記事にはここまでしか書かれてないので、それ以上のことは分からないのだが)

当のAudifece公爵自身はリミニの行政長官を努めたり、フランス王の副領事を努めたり、リミニの劇場(Teatro Galli)の建設を推進したりした。
更に銀行も建てた。
しかし、これが命取りに。
のちに彼のコレクションを手放さなければならない要因となった。
1842年、彼のお屋敷を訪れたGustav Friedrich Waagenが当時はPerugino(ペルジーノ)作と考えられていたこの作品を650Scudi(スクーディ)で購入、他の73点と合わせてドイツに持ち帰った。
Gustav Friedrich Waagenはドイツの大学の美術史の教授で、持ち帰った「聖母」はベルリンのGemäldegalerie(国立絵画館)に収められた。

ちょっと脱線。

これ2010年の12月に実際行った時の写真。

Caravaggio(カラヴァッジョ)の特別展やってたのね。記憶にない…
というのも

この時はまだこれくらいだったんだけど、その後大雪になってねぇ…
私ドイツ国内で3日も足止めされ、最後は泣く泣く電車でフィレンツェに戻った苦い思い出が有る。
あの頃は全然旅慣れてなかったんだけど、この一件でどんなシチュエーションにも耐えられるようになった。
あ~もう1度ゆっくり行きたいなぁ。

今回の記事を読むとBode Museum(ボーデ博物館)から貸し出されていると書いて有る記事も多い。
確かに私がベルリンの国立絵画館に行った時にはこの作品はなかった。
でも、 Staatliche Museen zu Berlin(ベルリン州立博物館)のサイトで調べたところ、国立絵画館の所蔵になっていた。
http://www.smb-digital.de/eMuseumPlus?service=ExternalInterface&lang=de
ボーデ博物館は改修工事のために1997年にいったん閉館し、2006年10月18日に再開館、現在のボーデ博物館は、彫刻、ビザンティン美術品、コイン、メダルが主な収蔵品となっている。
(参考:Wikipedia
ということで、絵画は国立絵画館に移されたのかな?
とにかくベルリンに有る。

Audifaceの死後、借金のかたにLeonardo(レオナルド), Bellini(ベッリーニ)、 Correggio(コレッジョ)なども含まれヨーロッパ中の研究者を魅了していたていコレクションは、19世紀最大のスペイン人コレクター、José de Salamanca y Mayol(サラマンカ侯爵ホセ・デ・サラマンカ・イ・マヨール)の手に渡った。
それでも借金は孫の代まで残ったというからどれだけの借金が有ったことやら。
しかし不思議なことに、ここまで金持ちで有名人だったにもかかわらず、Audifece Diotalleviの肖像画が一枚も残ってない。
だから実際どんな人物だったのか謎なのである。

Madonna Diotalleviに話を戻すと、これ以前はペルジーノの作と考えられていたのだが、Adolfo VenturiやRoberto Longhiなどイタリア人の偉大な美術史家によって、ペルジーノ風のタッチも聖母子には見られるが、サン・ジョバンニにとてもラファエロっぽい柔らかさと新しさが見られると。ラファエロの若い頃の作品、フィレンツェに来る前、もしくは来てすぐの作品ではないかと言われている。

なお今回の特別展には同じくAudifece Diotalleviのコレクションだった作品も出展されている。


Giuliano da Rimini(ジュリアーノ・ダ・リミニ)の「L’incoronazione della Vergine  (聖母戴冠)」別名Polittico del duca di Norfolk」
写真:http://www.museicomunalirimini.it/mostre_eventi/museo_altrove/pagina17.html
こちらは1998年に修復済み。

Crocifisso(キリスト磔刑図) Giovanni da Rimini(ジョバンニ・ダ・リミニ)
写真:http://bbcc.ibc.regione.emilia-romagna.it/pater/loadcard.do?id_card=60004
こちらは1936年寄贈された。

行ける人がいるかどうかは分からないけど、とりあえず基本情報も載せておくことに。
期間:2020年10月17日から2021年1月10日
開館時間:火曜ー金曜 9.30-13.00 / 16.00-19.00、土日祝日 10.00-19.00 月曜が祝日でない場合は休館
予約:入場は要予約。予約は下記のサイトから。
Festival del Mondo Antico か www.museicomunalirimini.it
料金:一般 8€(割引6€、家族チケット20€、6歳までは無料)
入場は閉館30分前まで。ガイド付き(説明はない)
ガイド付きツアーは電話で問い合わせ

参考:https://www.corriereromagna.it/



最新の画像もっと見る

6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ベルリンのラファエロ (山科)
2020-10-18 19:47:53
ベルリンにあるラファエロの聖母子ですが、なんとなく皆似てるんですね。おそらくSollyのラファエロを購入して好評だったので、担当者にラファエロ真作聖母子のイメージが刷り込まれたのかも??
返信する
確かに (fontana)
2020-10-19 10:04:46
山科様
コメントありがとうございます。
コメントを読みながら、そういえば昨年末ベルリンでラファロの聖母に特化した特別展が有ったことを思い出しました。
https://blog.goo.ne.jp/fontana24/e/8fe8edfb61736debfe783d4a17e4c078
返信する
ベルリン 絵画館 (カンサン)
2020-10-19 20:29:49
fontanaさんへ、私も2014-2015年の年末年始にドイツに行った時、ベルリンも訪れました。絵画館にも入りました。ボーデ博物館にも行きました。私のfc2のブログの2014年12月28-29日をお時間がある時、ご覧ください。
返信する
私もこれだけ見られなかった (むろさん)
2020-10-19 23:14:33
4年前にベルリンへ行きましたが、絵画館ではラファエロの聖母子5枚(ソリー、聖母子と聖ヒエロニムス・聖フランチェスコ、ディオタㇽレーヴィ、テㇽラヌオーヴァ、コロンナ)のうち、ディオタㇽレーヴィの聖母だけ出ていませんでした。博物館島の方はあちこちで工事をやっていて部分的にしか開いていない所もあり、ペルガモンの大祭壇は見られませんでした。ボーデ博物館には入っていませんが、ディオタㇽレーヴィの聖母はいったいどこにあるのでしょう?

これらの絵がベルリンのカイザー・フリードリッヒ美術館へ入った時期は、Rizzoli集英社版ラファエロのカタログ頁を見ると、確かにソリーの聖母が1821年と一番古いようですね。なお、ラファエロの聖母子の全体像について、日本語で読めるものでは(やや古いものですが)、集英社の世界美術全集7ラファエロの嘉門安雄解説(作家論のうち聖母子画の画家の項目)が聖母子画の全45枚を列記して評価しているので、理解しやすいと思います。

返信する
やっぱり (fontana)
2020-10-20 14:54:09
カンサンさん
ドイツ旅行のブログ拝見しました。
ドイツはやはり雪が似合いますね。(足止め食らうのはもう勘弁ですが)昨年末に行った時は暖冬で全く雪がなく、その分動きやすかったですが、ちょっと拍子抜けしました。
ボーデ美術館にラヴェンナのモザイクがあるとは知りませんでした。というより2010年に行った時はボーデ美術館には行かなかったので…残念です。
私もベルリンフィルの演奏聞きに行きました。懐かしいです。
ここのところ読んでいた「ボッティチェリの裏庭」という本に、絵画館のビーナスの話が出ていました。しかし私、記憶にないんですよねぇ…
このドイツ旅行では初(今のところ最初で最後ですが)ロストバゲッジに始まり、大雪足止めで、全ての記憶が吹っ飛んでしまいました。
戦争関係の場所は全く見なかったし、またゆっくり訪れたいです。
ちなみにイタリアでは日本のみかんが「みやがわ」という名前で売られています。
返信する
所蔵は絵画館かと (fontana)
2020-10-20 15:02:04
むろさん
今回イタリア語の記事を何本か見たのですが、「ボーデから借りた」というのと「絵画館から借りた」という記事が同じくらいありました。昨年末絵画館で行われたラファエロの聖母子に特化した特別展の記事では「ボーデから」とあります。
ただ Staatliche Museen zu Berlin(ベルリン州立博物館)のサイトには絵画館所蔵と書いてあり、ボーデWikipediaにはDiotalleviも所蔵となっているので、持ち主は絵画館、展示はボーデということかと推測しています。
「ペルガモンの大祭壇」が見られなかったのは非常に残念ですね。
資料の紹介ありがとうございます。図書館で探してみます。
返信する

コメントを投稿