日曜の夜NHKスペシャル「ダビンチ・ミステリー 第1集 幻の名画を探せ~最新科学で真実に迫る~」を見た。
この番組を見ていて、初めて知ったのだが、先月末からルーブル美術館でレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo da Vinci)のかつてないほど大規模な展覧会が開催されている。
写真:https://www.ilsole24ore.com/art/parigi-e-louvre-celebrano-genio-leonardo-vinci-ACYNL7t
今年はダ・ヴィンチ没後500年ということで、イタリアでも各地で特別展が行われていたが、彼の名声に見合った大規模のものはなかったので、ちょっと不思議に思っていたのだが、こういうことだったのね。
準備に10年を有し、フランスの新聞では「ユーロ離脱くらい難しかった」とフランス人特有のユーモア(?)を混ぜたコメントが載ったほど難しかった展覧会は、フランスで前代未聞の最もお金をかけた展覧会になったそうだ。
まぁルーブル美術館は、年間世界一の来館者を誇る美術館(2018年は1020万人)なのだから、当然それに見合う集客が見込める、ということだろう。
フランスだけでなく、イタリア、ドイツ、アメリカ、イギリス、ロシアの主要美術館を筆頭に、世界中の美術館の協力でデッサン、手稿、スケッチ、彫刻、絵画の160点以上の作品がルーブル美術館に集結。
中でも特にすごいのは、ダ・ヴィンチの真作とされている絵画作品は15~20点しかないが、そのうち11点がこの展覧会に集結。まぁ、そのうち5点はルーブル美術館が所蔵作品だが。(ルーブルはデッサンも22点所蔵)
展示されているものではなく、展示されなかったものに注目すると、まず若い頃のダ・ヴィンチの傑作3作
ミュンヘンの「カーネーションを持つ聖母(Madonna del Garofalo, Alte Pinakotek di Monaco)」
ワシントン、ナショナル・ギャラリーの「ジネーブラ・デ・ベンチの肖像( Madonna Benci、National Gallery di Washington)
そしてウフィツィ美術館の「受胎告知( L’Annunciazione, gli Uffizi)」
これらは作品の状態が悪く、移動できないということを理由に貸し出しを拒否されてしまったのだが、「受胎告知」に関しては、個人的にも疑問。だって、数年前に日本に来たじゃん!!
イタリアの新聞社も、「それ(保存状態が悪いから)はうそで、『作品を動かすなんて常軌を逸した行動だ』として拒否した」と書いているところもある。
数年前日本に来た時、あの時期は「レオナルド部屋」改修中だったけどねぇ。
もちろんお金の問題もあるだろうけど、イタリアとフランスの仲の悪さを感じてしまう。
それを裏付けるのがこちらのケース。
5月、ヴェネツィアのアカデミア美術館で見たこの『ウィトルウィウス的人体図』(Uomo vitruviano)。
ルーブルへ貸し出されているのだが、こちらを貸し出すに当たってはひと騒動あったようで、これを貸し出す代わりに、来年の3月からローマで行われるラファエロ(Raffaello)の展覧会に作品を貸し出すことを交換条件として貸し出しに応じたらしい。
(ラファエロの展覧会があることは既にチェック済みだし、こちらは必ず行く!!)
なんかこの辺にも伊仏の因縁を感じるのだが。
イタリア人は今でも「モナリザ」はイタリアの物だから返せ!と言っているしね。
他にも2017年、史上最高額で落札された「サルバトール・ムンディ」もオファーをかけたらしいが、こちらは残念ながらOK出ず。って今どこ行っちゃったんだろ?
他にもポーランドのクラクフの有る「白貂を抱く貴婦人(La Dama con l'ermellino)」もない。
出展されている方で興味深いのが、NHKスペシャルで真贋問題にとりあげられていた「糸車の聖母(Madonna dei Fusi)」
こちらは「ランズダウンの聖母」なのだが、この「糸車の聖母」は複製がかなりの数あるのに、ダ・ヴィンチが描いた元の作品が不明。
一番ダ・ヴィンチの作品である可能性が高いのが、この「ランズダウンの聖母」とスコットランドの「バクルーの聖母」
同じテーマで描かれた2枚が、並んで展示されているらしい。
ただルーブル自身も別バージョンを1枚持っている。こっちは出てないのかな?
NHKスペシャルでは、この1枚目「ランズダウンの聖母」がダ・ヴィンチの真作である確率が非常に高い、という含みを残して終わっていた。
あくまでもそれはルーブルの独自調査だし、イタリアのサイトを見ていても決定的な結論は出ていない。
番組を見ていて、科学調査は重要だけど、それだけじゃないでしょう、と思う反面、今の世の中なら、あるアーティストの描いた作品を数品AIに学習させれば、真贋問題なんて一瞬で片付くんじゃないの、と思ったりする。
そしたら人間の出る幕なくなるね。
展覧会はダ・ヴィンチの師アンドレア・デル・ヴェロッキオ(Andrea del Verrocchio)「聖トマスの不信(Incredulità di san Tommaso)」から始まる。
ヴェロッキオとの出会いが、その後のダ・ヴィンチの芸術家人生に多大な影響を与えたことは、今更語ることでもない。
芸術だけでなく、科学にも造詣が深かったダ・ヴィンチの横顔も、この展覧会では十分味わえるらしい。
展覧会に興味がある方は、日本語のサイトではこちらが非常に詳しく書かれているので、こちらを参考にすると良いと思う。
https://casabrutus.com/art/121594/4
また、私は行けませんが(知ってたら行ってた?)幸いにも2020年2月24日までにパリに行ける方は、入場が予約制になっているでの要注意。
展覧会開催前の時点で、既に18万人の予約が既に入っていたらしい。
また展覧会の会場は、ピラミッドの下なのだが、毎日3万にが見に来る「モナリザ」は展覧会会場ではなく、いつもの場所に置かれている。
というのも展示会場は、最大一日7000人しか入場できないためらしい。
https://www.louvre.fr/en/leonardo-da-vinci
参考:http://www.rainews.it/
長崎にいたせいか、この件は知りませんでした。
>イタリアの新聞社も、「それ(保存状態が悪いから)はうそで
賛成ですね。ミュンヘンのはよく知りませんが、貸し出さないための口実でしょう。
エルミタージュも「リッタの聖母子」は出してませんね。状態の悪さなら、ヴァチカンのヒエロニムスのほうが危なそうです。
>今の世の中なら、あるアーティストの描いた作品を数品AIに学習させれば、真贋問題なんて一瞬で片付くんじゃないの、と思ったりする。
たぶんダメでしょうね。なぜならカラー写真でみると偽物のほうがよくみえ、本物のほうが地味でつまらなくみえるとう経験が多数ありますから。無理しても実物を観にいくのはそのせいなんですね。
コメントありがとうございます。
AIが描いたレンブラントの新作、などというニュースを聞くと人間はそのうち人工知能に凌駕されていくのではと思いがちですが、そうではないといいです。
私は無理しても本物を見に行きたいのです。しかし先日祝賀パレードをテレビで見ていて、「大して見えもしないのに、なぜあんなに苦労して大勢の人が行くのか。テレビで見ればいいのに」ともらしたら、母に「あなたも美術を見に行かず、雑誌で見たら」と言われました。同じレベルですかねぇ???