先週、現在横浜美術館で開催中の「横浜美術館開館30周年記念 オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」を見に行った。
この展覧会の話はひとまずおいておいて、今日はこちらの話。
同時開催中の「横浜美術館開館30周年記念/横浜開港160周年記念 横浜美術館コレクション展 『東西交流160年の諸相』」
非常に面白い作品を発見!
こちらの横浜美術館コレクション展は、時代を限定せず、開港期から第二次世界大戦後にいたる長い時間の中で、どのように日本人は異文化と触れ合い、吸収して来たのかを、いくつかのトピックに分けて紹介している。
オランジェリー美術館のコレクションに比べたら、まぁ、とりあえず流し見~という感じで見ていた。
ところが第8章まで来てびっくり!
「えっ、ラファエロ!?」
もちろん、そんな筈はなく、これは下村観山の模写。
それにしてもうまい!!(いや、当然だけど)そして、ラファエロが表装されてる…
この第8章は「下村観山の滞欧経験」というテーマで観山の作品が展示されているのだが、まず目に飛び込んできたのは、そんな説明抜きにこの「ヒワの聖母(Madonna del Cardellino)
これは、現在ウフィツィ美術館に展示されているオリジナル(の写真)。
2008年、10年に渡る修復が終わった時に見に時は感動したなぁ。
その時の話はこちら。
しかし、大した事書いてなかったので、日本語のサイトならこちらをご参考下さい。
修復前はこんな感じ、いやもっとひどかったと記憶している。
観山が見た時も、ここまではひどくなくても、現在の状態よりは傷んでいたのでは?
それを見て、ここまで描けるなんてさすがだなぁ…
「ヒワの聖母」は1666年Giovan Carlo de' Medici枢機卿によりウフィツィのコレクションに加わった。
枢機卿が亡くなった時に編纂された彼の財産目録には、600スクーディの価値が記され、この金額は当時ウフィツィ内では最高額の絵画の一枚だった。
1705年にはウフィツィ美術館のトリブーナ(Tribuna)に飾られていたことが分かっている。
ヨーハン・ゾファニー(Johan Joseph Zoffany)が描いたトリブーナ
今からは想像できないごちゃこちゃな展示の仕方だ。
そしてここにもう1点、横浜美術館に展示されている観山が模写した作品がある。
今はピッティ宮殿のパラティーナ絵画館(Galleria Palatina di Palazzo Pitti)にある「小椅子の聖母(Madonna della Seggiola)」
もちろん本家本元のラファエロの作品は素晴らしい。
ただこの「絹本着色」で描かれた観山の作品の方が、温かみがあるように感じるのは私が日本人だからなのか?
”1903年、文部省の命により英国に渡り、色彩の研究を第一の目的として、西洋画の研究や模写を行いました。大英博物館にある模写を写したとされる《椅子の聖母》や、英国留学のあと欧州を巡遊した際にウフィーツィ美術館で写したものと思われる《まひわの聖母》といったラファエロの模写は、板に油彩で描かれた原画の柔らかな明暗を、水彩によって見事に絹に写し、観山の技術の確かさを示しています。”(抜粋:https://yokohama.art.museum/special/2013/kanzan/exhibition.html)
ん?
ロンドンに「小椅子の聖母」の模写が有るの?知らなかった。
フィレンツェに来ているんだったら、2枚とも本物から模写すればいいじゃん、と思ったのだが、この「小椅子の聖母」、1799年から1815年、ナポレオンのせいでパリに持っていかれていて、ウフィツィで再度見られるようになったのは1882年からと記録が残っている。
ん、ん?
Johan Joseph Zoffanyの絵に「小椅子の聖母」あるけど、パラティーナ美術館の記録を見ると、この絵、ウフィツィに有ったのは最初だけ。
Galleria degli Uffizi, Palazzo degli Uffizi, Tribuna, Firenze, 1598 (data ingresso), 1652 (data uscita)
Palazzo Pitti, Galleria Palatina e Appartamenti, Collezione Gran Principe Ferdinando, Firenze, 1698 (data ingresso)
Palazzo Pitti, Galleria Palatina e Appartamenti, Firenze
Villa medicea di Poggio a Caiano, Poggio a Caiano, 11-6-1940 (data ingresso)
Eremo di Camaldoli, Poppi, Camaldoli, 31-10-1940 (data ingresso)
Galleria degli Uffizi, Palazzo degli Uffizi, Deposito, Firenze, 8-6-1945 (data ingresso)
Palazzo Pitti, Museo degli Argenti, Firenze, 6-7-1945 (data ingresso)
Palazzo Pitti, Galleria Palatina e Appartamenti, Firenze, 1-1-1946 (data ingresso)
(抜粋:http://www.polomuseale.firenze.it/invpalatina/scheda.asp?position=1&ninv=151)
観山はウフィツィには行ったけど、ピッティ宮殿には行かなかったのかな?
まぁこの「小椅子の聖母」が色々な画家に模写されたことは確かで、ドミニク・アングル(Jean-Auguste-Dominique Ingres)もこの絵を自分の絵に描き込んでいる。
この二人、ラファエロと恋人のフォルナリーナ。その右奥に置かれた「小椅子の聖母」。
これ、5月にミラノで見た。(詳細こちら)
ちなみに描きかけの絵は「ラ・フォルナリーナ(La Fornarina)」
西洋人だけでなく、日本人にも愛されたラファエロ。まさかこんな形でお会いできるとは思わなかった。
結局、オランジェリー展より強い印象を残した作品だった。
2020年01月13日まで
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