いよいよ東京オリンピック開幕。
「東京オリンピックの時期は、海外から大量に人が来るから、海外に逃げちゃおう!」と密かに思っていたのはいつのことか。
何処にも行かない4連休は、やっと時間が出来たので真面目な話題を。
さて、先日よく役立つコメントを頂く山科様のブログに、気になる記事があった。(こちら参照)
この本に載っている、あるフレスコ画の話。
写真:https://www.amazon.co.jp/
ルーマニアの修道院の外壁には現在もきれいなフレスコ画が残っているのだが、そこにはチーズが使われているというお話。
写真:Wikipedia
場所はルーマニアのフモール修道院。
この本を読んだ時、私も気になっていたのだが…そのまま流して忘れてた。
著者は”イタリアで、これと同じチーズを探しましたが見つけることはできませんでした。”(引用)と書いている。
はてさて、それはどんなチーズなのかなぁ?美味しいのかなぁ?と思いながら数日経過。
すると、こういう時は引くものだ。
今通勤中に読んでいるこちらの本にも面白い記事を発見した。
写真:https://www.amazon.co.jp/
この本にキャンバスが動産としての絵画の価値が生まれたという記述があるのだが、そこに
”従来の木製パネルは、ある程度以上の大きさの画面を描くために製作も管理も大変な手間を要し、ボッティチェリの『春』も縦長のポプラ材を横に8枚つなげたパネルに2本びモミの角材を横に渡して接着して補強されている。温度や湿度の差による湾曲を防ぐための処理であり、木材の接着には、石灰とチーズを混合した強力接着剤に加えて30個近くの補強金具を用いている。”(引用)
とあるではないですか!!
こうなるとこの”チーズ”俄然気になる!
接着剤としての”チーズ”は、チェンニーノ・チェンニーニ(Cennino Cennini)の”芸術の書(Libro dell'Arte) ”にも出ていた。
”大工の棟梁が使うのりがある。これは水にふやかしたチーズで作る。そのチーズに生石灰を少し混ぜ、両手で乳棒を握って練る。これを2枚の板に塗って貼り合わせると、ぴったり接着して離れない。”(引用:藝術の書、中央公論美術出版)
「フレスコ画への招待」によると、ルーマニアのフモール修道院の外壁に用いられているのは、”ルーマニアの特殊なバインダーにあります。カゼイナート・ディ・カルチェといって、ルーマニアにある、ゆるい豆腐のようなチーズの一種と、グラセッロとを混ぜて作るものです。この2つを混ぜると白濁した液体になります。”(引用:p.90-91)とある。
しかし正確にはhttps://pigment.tokyo/ja/article/detail?id=40の説明が正しいのでは?(このサイト非常に役にたった)
”「カゼイン」と呼ばれるもので、牛乳の中にあるカゼイン性タンパク質を抽出したものです。アンモニアで溶解させると、白濁したメディウムとなります。
ちなみに、その昔は粉状のカゼインは流通してなかったので、チーズを潰してメディウムにしておりました。そこから、カゼインは「チーズ膠」とも呼ばれます。このカゼインはフレスコ画で主に使われていたのですが…”(引用)
カゼイナート・ディ・カルチェ(「チェ」ではなく「チョ」が正しいと思う)、caseinato di calcioは「カルシウムカゼイン」のことで、チーズそのものの名前ではないのでは?(もしかしたらルーマニアにはそういうチーズがあるのかもしれんが…)
イタリアでは別名colla di formaggio、つまり「チーズの接着剤」と呼ばれることもある。
ん?あれ?カゼインはタンパク質で、カゼイナート・ディ・カルチョはカルシウム???
”カゼインは、そのタンパク質を構成するアミノ酸のうち、セリンに由来する部分(セリン残基)の多くにリン酸が結合した、リンタンパク質(リン酸化タンパク質)の代表的な例である。この特徴のため、カゼインは分子全体としてマイナスの電荷を帯びており、カルシウムイオンやナトリウムイオンと結びつきやすい性質を持つ。
牛乳中では特にカルシウムと結合してカルシウム塩の形で存在し、結果として牛乳中でカルシウムの安定な運び屋として機能する。牛乳中においてカゼインは、カルシウム−カゼイン−リン酸複合体の形で存在しているが、このときカゼインのうちで特に水溶性の高いκ-caseinの働きによってこの複合体はミセルを形成する。この結果、カゼインは一種の「安定剤」として、牛乳を均質なコロイド溶液にし、またその不溶性成分が析出することなく均質な状態を長期間保つ役割を果たしている。 またカゼインは、等電点であるpH 4.6において放置することで、牛乳から容易に分離することもできる。”(Wikipedia引用)
と文系脳にはよく分からんが、こういうことらしい。
Wikipediaを見たら接着剤についても記述もあり、更に山科様の読み通り”カッテージチーズの生成には、カゼインの性質が関係している。”との記述もある。
”牛乳にレモンやグレープフルーツの果汁などを混ぜたときにモロモロとしたかたまりができることがあります。この性質を利用したのが、牛乳と酢を使ってできる手作りカッテージチーズです。
ではなぜ牛乳に酢を加えるとカッテージチーズができるのかご存知ですか?
これは牛乳に含まれるたんぱく質の性質によるものです。牛乳に含まれるたんぱく質は、全体の80%を占めるカゼインと残りのホエイ(乳清)たんぱく質に大別されます。カゼインは水に溶けないたんぱく質で、牛乳の中に微粒子状で分散していますが、ひとたび酸を加えるとカゼインの粒子同士がくっつきあいかたまりを作るのです。コーヒーに生クリームを入れると白い球状のものが浮きあがることがありますが、これもコーヒーの酸と熱によって、クリームの中に含まれるたんぱく質が凝固するためです。”(引用:https://www.meiji.co.jp/)
ふむふむ。
「フレスコ画への招待」の筆者がルーマニアで見たのは、きっとカッテージチーズの類だろう。
ちなみにイタリア語でカッテージチーズは、Fiocchi di Latte(直訳すると「牛乳のふわふわしたもの」)
ちなみにイタリアに所謂”カッテージチーズ”が伝わったのは19世紀後期とかなり遅い。
前述のサイト”PIGMENT岩泉館長”の話を読み進めてみると、ちょっと気になることが書いてある。
”実は、初期のフレスコ画は漆喰の上にそのままカゼインで描画をしておりました。しかし、それでは堅牢性に問題があることがわかり、染み込ませて描くフレスコ画のスタイルが誕生しました。ただ、その技法ですと完全乾燥してしまったら加筆が出来なくなってしまうため、フレスコ画用のアフターメディウムとして引き続きカゼインは利用されておりました。”(引用)
また別のサイトには
”エジプトにも乾いた漆喰壁にカゼイン(大豆蛋白)などをバインダーに使ってアズライト(藍銅鉱)などを使ったフレスコ画が発見されている。フレスコ画は、このように乾燥していない化粧漆喰(Stucco)に顔料を水で溶いて塗る湿式画法(ブオン・フレスコ)と、乾燥している漆喰壁を水で濡らして、顔料に水で石灰やカゼインを溶いて塗る乾式工法(ア・セッコ)がある。”(引用:https://www.psats.or.jp/column/nakamura030column.html)
ということはルーマニアのケースは「ア・セッコ」なのか?
でもア・セッコなら耐久性はア・フレスコより低いはず…
やばい、収拾つかなくなってきた。
ローマ人はgrassello di calce(グラセッロ、消石灰)を壁のモルタルや漆喰の接合用や仕上げに使われていた。
フレスコ画においてもこの脂分の多い石灰は好まれて使われている。
絵画の為には伝統的に40か月の長い熟成期間がかかることから、貴重な作品の最終過程にのみ用いられていたようだ。
イタリアではあまり見られないのはこのせいだろう。
決してカッテージチーズがなかったからではないと思う。
フレスコ画は持ちがよく、比較的安価だから好んで用いられてきたのだから。
「イタリアでは、雨風にあたる外壁にブオン・フレスコを作ることはほとんどありません。」と書かれていたが、ホントにそうかなぁ…
う~ん、なんかすっきりしないので、本を読み直し、更に調査したいと思う。
支離滅裂で書き逃げして、すみません…
ちなみに数日前に発売された芸術新潮8月号にフモール修道院が出ていたので、買っちゃった。
写真:https://www.shinchosha.co.jp/geishin/
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