イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

元祖少女漫画がボッティチェッリとはねぇ…

2021年05月14日 18時48分43秒 | イタリア・美術

ここ数日、暇なもので一日2回も投稿していたら、ネタが尽きてしまって、今日はお休み~と読みかけの本を読んでいたら、衝撃の記述発見!
現代の少女漫画の元祖はボッティチェッリ(Botticelli)だと言うではないですか!!

”現代の少女マンガにおいて、大きな眼の少女が、うっとりとしつつ、首をやや 傾げ、正面向きに漠然とこちらを見ている姿がたびたび現れるが、江戸時代の浮世絵にそのようなものが見られるわけではない。これは1930年代の中原淳一 にも、1910年代の竹久夢二にも、そして1905年の藤島武二にも現れるが、そ れ以前の日本にはなかった。夏目漱石は 『三四郎』(1908年)で、「西洋画の女の顔を見 ると、誰の描いた美人でも、屹度大きな眼をしてゐる」と述べ、主人公の三四郎が一目惚 れした美禰子をその体現として描いている。首を傾げた正面向きの大きな目の女性となると、イギリス19世紀後半のボッティチェルリ趣味から来ている可能性が高い。
ちなみに、マイケル・レヴィーによると、中世的空間感覚の残るボッティチェルリが一19世紀の西洋で再評価されるためには、ルネッサンスの遠近法が飽きられ、日本美術など の新鮮さが自覚されるようになったことがその背景にはあったという。”
引用:ジャポニズム、宮崎克己、講談社現代新書

この章では北斎漫画が西洋のグラフィック・アートに影響を与え、更にそれが再輸入され、日本の漫画に影響を与えたという話。(但し、もちろん北斎漫画などの日本の流れの影響の方が大きいと本にも書いてある。)
ボッティチェッリが19世紀イギリスで再評価されたことはもちろん知っていたが、

写真:https://www.kosho.or.jp/
中原淳一や

写真:Wikipedia
竹久夢二や

写真:https://www.hiroshima-museum.jp/collection/jp/fujishima_t.html
藤島武二がボッティチェリの影響を受けていたとは…

写真:Wikipedia
確かに似てると言えば似てるかな…
とは言え、ダイレクトにボッティチェリの影響を受けたと考えるよりは、19世紀イギリスで流行っていたボッティチェリ趣味の影響と考えられている。

ボッティチェッリ趣味の代表はウォルター・クレイン (Walter Crane)で、彼は1871年新婚旅行でイタリアを訪れ、15世紀のイタリアの芸術に興味を持つようになったという。
1877年に描かれたルネサンスのヴィーナス(The Renaissance of Venus)にはその影響が色濃く見られる。

写真:https://www.tate.org.uk/
2017年、千葉市美術館で「ウォルター・クレインの本の仕事」という展覧会が開かれていたようだが、知らなかった。


ボッティチェリがクレインによってこうなり、こうなるんだからすごい!!

写真:Amazon
但しこれはあくまでも女性像、という点だけ。

たまたま検索していたら「怖い」シリーズの中野京子氏のブログに
”ボッティチェリの絵は現代の少女漫画の祖先ともいうべきもので、とりわけこの連作には漫画的表現が鮮やかだ。巻物でこそないが、「鳥獣戯画」のように左から右へと時間経過を示している。”
引用:https://blog.goo.ne.jp/hanatumi2006/e/3a18478fa4be22c84edea20eb97cae1f
この連作とは「ナスタジオ・デリ・オネスティの物語(Nastagio degli Onesti)」のことなのだが、

写真:Wikipedia
この文章を読むと漫画的なストーリーの流れをもボッティチェッリが作ったように読めるが(読めなかったらごめんなさい)、この1枚の絵の中に複数の場面を入れて物語が流れるように作画するイタリア語では"narrazione continua"という技法は、ジョット(Giotto)も使っているし、西洋でも昔から使われていた。

何はともあれ、ボッティチェッリがねぇ…



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6 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
こじつけ (山科)
2021-05-15 08:29:55
まあ、こういうのは話半分ですから、、

じゃ,新説として、古代ローマ時代の蜜蝋画の美少女URLが少女漫画の原型という説でもたてましょうかね(棒)。。これらの発掘は十九世紀末ですから、歴史的順序としては矛盾はないはずです(棒)
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面白いですね。 (fontana)
2021-05-15 10:08:54
山科様
コメントありがとうございます。
なんでもこじつけようと思えば、ということですね。ただ、最近人気の大先生までこの話を実しやかに載せていたので、私も調子に乗って書いてみました。(笑)

少女漫画はさておき、これミイラの肖像画なんですね。(貴ブログ拝見しました。http://reijiyamashina.sblo.jp/article/182504414.html
絵は見たことがありましたが、詳細を知り興味が出ました。
いつも色々教えて頂きありがとうございます。
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ミイラ肖像画 (山科)
2021-05-15 11:41:38
長崎は、さっきまで雷雨だったので、こもってました。
ミイラ肖像画についてはURLに、以前書いてました。故:岩山三郎教授の著作のころと違い、WIKIで膨大なカラー写真をみることができる時代になったのは、隔世の感があります。ただ、写真が左右反対になってる例もあります。
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ありがとうございます。 (fontana)
2021-05-15 13:17:00
山科様
雨は大丈夫でしょうか?
早速コメントありがとうございます。
レオナルド・ダ・ヴィンチの件が気になり今調べています。
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ウォルター・クレイン (Maki)
2021-05-18 07:37:24
こんばんは!ボッティチェリネタをありがとうございます。「ウォルター・クレインの本の仕事展」は滋賀県立美術館で鑑賞しました。最初の絵はウォルター・クレインとは気が付かなかったです。
イギリスのこの時代の絵本も好みですがボッティチェリ趣味の代表画家だったとは・・改めて繋がりました。
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良かったです。 (fontana)
2021-05-19 10:53:38
Makiさん
コメントありがとうございます。
私も全然知りませんでした。ここのところたまたまイギリス美術について調べることがあって私もすっきりしました。
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