もうホント、飛んで行きたい!!
今ヴァチカン(Vaticano)で非常に珍しい作品が公開されている。
ラファエロとフラ・バルトロメオの聖ぺトロとパオロ(I Santi Pietro e Paolo di Raffaello e fra Bartolomeo)
普段はこのヴァチカンの中の教皇の宮殿(Palazzo Apostolico)の
写真:Wikipedia
謁見の間(stanze delle udienze dei Papi、1963年より)に有るため一般的には見ることが出来ない。
2人ともローマの聖人で、フラ・バルトロメオが描いた聖パオロ(右)、そして聖ぺトロ(左)は手を付けたものの彼の死後、友人のラファエロ(Raffaello Sanzio)が完成させた。
今回はこの2作の共にフィレンツェのウフィツィ美術館(Gallerie degli Uffizi)が所有しているカルトン(原寸大下絵)やデッサンが展示されている。
1513年(1514年?)秋、フィレンツェのサン・マルコ修道院のドメニコ会の修道士だったフラ・バルトロメオ(Fra Bartolomeo)は、クイリナーレのサン・シルヴェストロ教会(Chiesa di San Silvestro al Quirinale)の為に2枚の聖人の絵を描くためローマへ赴く。
ここではミケランジェロやラファエロの新しい作品を見たことは明らかだ。
カルトンを準備し、聖パオロを描いた後、突然描くのを止めてしまった。
ヴァザーリ曰く、バルトロメオはミケランジェロやラファエロの作品を見てショックを受け、描くのを止めた、とか。
バルトロメオは1517年亡くなる。
この仕事を引き継ぎ、聖ペテロを完成させたのは、友人のラファエロだった。
ウフィツィ美術館館長のEike Schimdt曰く「カルトンやデッサンは光に弱く50年に一度しか展示が出来ない」と。
聖パオロとペトロは2019年から修復され、その後この絵の準備のためのカルトンやデッサンが収蔵されているGabinetto Disegni e Stampe degli Uffizi(ウフィツィのデザイン、版画研究室)で調査された。
この調査は、作品の作者を限定するためにもヴァチカン側、特にヴァチカン館長Barbara Jatta氏の強い希望で実現し、その結果を発表するこの特別展は非常に貴重な機会となる。
展覧会のカタログには技術的スタイル、科学的なの研究結果から、ヴァザーリの話をより現実的な根拠を元に再検証した結果が載っているそうだ。
2枚ともフラ・バルトロメオ(Fra Bartolomeo)が準備をしていたが、完成までに至ったのは聖パオロだけで、聖ペテロはラファエロによって完成された。
Barbara Jattaは今回の研究によって、人生の終盤を迎えたラファエロの手がフラ・バルトロメオの作品に残されていることが明らかになったことに非常に満足していると述べている。
こちらの動画を見ると特別展の様子がよく分かり、更に行きたくなる。
Mostra "I Santi Pietro e Paolo, di Raffaello e fra Bartolomeo", Musei Vaticani, 25-9-2021
1513年以降、2セットの下書きと完成品が一堂に見られるのは初めてのこと。
彼らの類似点は何と言っても色使い。
下書きのカルトンと完成した作品を隣り合わせに置くことで、どのように彩色が施されたのかを知ることができるし、ラファエロとフラ・バルトロメオの描き方の違いだけでなく、ルネサンス期に非常に進化したローマ彫刻を思わせる立体的な絵画を間近で堪能できるチャンス…なんだけどな。
あああ、残念無念。
«I Santi Pietro e Paolo di Raffaello e Fra Bartolomeo/ Un omaggio ai patroni di Roma»
2021年9月25日から2022年1月9日
Musei Vaticani nella Sala XVII della Pinacoteca
(ヴァチカン美術館内、絵画館17室)
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私もとても行きたいです。
残念ですね😢
大阪市立美術館では11月13日からメトロポリタン美術館展が始まります。今年はこれが関西ではこれが最初で最後の展覧会です。
そして、今回の貴ブログを読んで、「またラファエロ情報だ!」と嬉しくなり、ご紹介の作品について手持ち資料で確認してみました。
とは言っても、この聖ペテロについて触れている日本で出版されたラファエロの画集類はほとんどなくて、唯一写真が出ていたのが例のRizzoliのシリーズ(邦訳集英社版、1975発行、原書は1966)だけ。あとはヴァザーリの芸術家列伝フラ・バルトロメオ伝に書かれていました(ラファエロ伝では触れず)。
まず、Rizzoli集英社版によると、真筆判定の四角いマークでは「ラファエロの真筆として論議のある作品」(9分割の枠中4つのみが黒塗り)とされ、ヴァザーリの書く「フラ・バルトロメオに依頼され、のちラファエロによって完成された」という記述については、ベレンソン他2人が支持、A.ヴェントゥーリはラファエロの弟子によって完成されたとし、ラギアンティとカメザスカはラファエロの作とはみない、としています。
ヴァザーリの芸術家列伝では、白水社版の続ルネサンス画人伝(1995)フラ・バルトロメオ伝の聖ペテロの絵に関する注釈で「ラファエロの加筆は疑問視されている」。一方、中央公論美術出版の美術家列伝完全版第3巻(2015)フラ・バルトロメオ伝の聖ペテロ注釈では「聖ペテロをラファエロが仕上げたというヴァザーリの文言については、長い間その信憑性が議論されてきた。否定的な意見も少なくないが、一方で頭部と手の描写に同時代のラファエロ様式との類似性を指摘する研究者もいる」としています。Rizzoli、白水社版、中公美版と発行時期が後になるに従って否定的な見解が減っているように見えます。そして、今回ご紹介の記事のように調査研究の進展や修理によって評価が一新され、今まで工房や弟子の手によるとされていた作品が真筆と評価されるのはとても素晴らしいことです。私も見たいと思いますが、展覧会が終わったらまた非公開になってしまうのでしょうか? Rizzoli集英社版の本では「ヴァチカン絵画館所蔵」、芸術家列伝2冊では「ヴァチカン美術館所蔵」とあるのですが、「1963年より謁見の間にある」ということなら無理なのでしょうね。
最後にスコットランド国立美術館展のこと。下記URLの情報によると、「スコットランド国立美術館THE GREATS 美の巨匠たち、2022年4/22~7/3東京都美術館(その後神戸、北九州へ巡回)」とあり、私が興味のあるルネサンス絵画ではヴェロッキョ工房作の聖母子の絵が出ています。ラファエロは名前が出ているだけで作品名の記載はなし。同館所蔵のラファエロ油彩画は3点(ブリッジウォーターの聖母、ヤシの木の聖家族、散歩の聖母)あり、Rizzoli集英社版ラファエロでは最初の2点が真筆、散歩の聖母が工房作となっています。新人物往来社ラファエロの世界(池上英洋2012)に掲載されている「ヤシの木の聖家族」のカラー図版を見ると、この絵の幼児キリストの表現が、ルーブルの「美しき女庭師」やウィーンの「牧場の聖母」のキリストを思わせる素晴らしい出来なので、どれかが来日するならブリッジウォーターの聖母よりもヤシの木の聖家族に来てほしいと思っています。(この3点とも寄託品かもしれないので、来日するのは素描ではないか、と考えている人もいるので、正式発表までのお楽しみです)。
https://www.tobikan.jp/exhibition/2022_scotland.html
https://pid.nhk.or.jp/event/sp/PPG0345863/index.html
https://greats2022.jp/
なお、同館のHPからArtists A-Z中のラファエロを検索しても、上記3点の油彩画の写真は掲載されていないので、これが3点とも寄託品かと考える根拠のようです。
https://www.nationalgalleries.org/art-and-artists/artists/a
コメントありがとうございます。
本当に残念でなりません。
少しずつ国内は動きが取れるようになりましたが、海外へはまだまだ時間がかかりそうですね。
コロナで閉館していたり、来館客が減って色々改善点を洗い出したりしたのかもしれないし、これから客を呼ばなければいけないので、どこも色々”パンダ”を考えているのかもしれません。
「メトロポリタン展」は大阪が先でしたね。
来年東京で開催される国立新美術館は確かワクチンの接種会場として使われていたはずですが…
緊急事態宣言が解除され、一応落ち着いた感はありますが、まだまだ喜んで外出できるような状況ではないですが、美術展などは以前のように混みあうことがないので、その点では嬉しいです。
いつも詳細な情報をありがとうございます。
聖ペテロに関しては、カタログを読んでみないと詳細は分かりませんが、最先端の技術を用いているという点でも信用できる結果が出ているのだと思います。
デッサンなどは「50年に一度」とウフィツィ美術館館長が言っているので生きているうちに見られることはないと思いますが、もしかしたらヴァチカン所蔵の聖ペテロはまた機会があるかも…と今は思いたいです。
来年は「スコットランド国立美術館展」が有るんですね。最近は全然展覧会情報もチェックしておらず、「メトロポリタン美術館展」すら失念していました。