イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Chiesa di San Pantalon(サン・パンタロン教会) a Venezia

2019年05月14日 17時25分50秒 | イタリア・美術

この話はもう少し先でもいいかと思っていたのですが、Wikipediaを読んでいてびっくり!!
ということで、先に書いてしまうことにしました。

もともとヴェネツィア美術は、フィレンツェ中心のルネサンス美術より好きな私。
でも、大学で勉強する時は場所柄どうしてもルネサンスが中心で、ヴェネツィア美術にはさらっとしか触れない。
更に、ずっと住んでいたフィレンツェの事は詳しくても、それ以外のところは「~教会」と言われても、さすがにピンと来ない。
そんな話を戻って来てすぐ、私より全然美術のことに詳しい30年来フィレンツェでガイドをしている大学時代の友人とも話し手いたので、今回ヴェネツィアに行く時は、色々今まで見てなかったものを見てみよう、と思っていたところでした。

日本のテレビでもやっていたのですが、ヴェネツィアのSan Maurizioの骨董市に一度行きたいと思っていたのですが、この骨董市、4,5,9,10、12月にしか開催されなくて、なかなかタイミングが合わず、行く機会がなかったんです。
そして、そのタイミングがようやく訪れました。
先週金曜日、Flixbusを使って、弾丸日帰りでヴェネツィアまで行ったんです。
骨董市の話はさておき、その時、以前から前を何度も通っているのに、中に入った記憶がない教会の前で足が止まりました。



Chiesa di S.Pantaleone(俗称:San Pantalon)
おお、ここにVeronesaやVivariniが有るじゃない。
ということで中に足を踏みいれて、思わず息を飲みました。

天井一面に描かれた” Il martirio di san Pantalon(サン・パンタロンの殉教)”です。
ここにはPantaloneの死と天昇が描かれています。
(この教会は写真撮影不可のため、教会内の写真はWikipediaより拝借しています。)
Pantaleone(聖パンテレイモン。Pantaleoとも)は医者で、助産師でもあったそうで、14人いる救難聖人(カトリック教会における聖人崇敬の一種であり、危急の際に信者がその名を呼ぶことで難を救ってくれるとされる聖人)のうちの1人だそうで、彼の守護対象は内科・癌・結核だそうです。
ちなみにPantaloneという名前はヴェネツィアではほかのことで非常に有名です。
それはこの仮面

喜劇の舞台で使用される、お金持ちの商人の仮面がPantaloneというそうです。
黒いマントを羽織り、長い鼻を持つ仮面に、つま先が反りあがったトルコ靴、そして長いタイツをはいているのがPantaloneの特徴でpantaloneはイタリア語で「ズボン」のことなので、この辺りの服装がpantaloneの由来になっているのかもしれません。(参考

ちょっと横に逸れましたが、この天井画、てっきりフレスコ画なんだと思っていたんです。
そして、ちょっと思い出したので検索したら、なんとこれ「世界で一番大きなキャンバス」に描かれているんだそうです。
(VeroneseやVenezianoの作品も大きいので、「教会にある作品」という但し書きを付ける人もいるとか)
大きさは443平方メートル…ってどれくらい?
バスケットのコートが420平方メートルだっていうので、ほぼそんな大きさ!!
40枚のキャンバスをつなぎ合わせているそうです。

1680年から1704年のなんと24年もかけてGiovanni Antonio Fumianiによって描かれました。
正直、この名前は聞いたことがなかったのですが、作品はそこここで見ていたようです。
Uffiziにはトスカーナ大公Ferdinando de' Mediciのために描いた作品が収められているそうです。
なんと彼、この作品を仕上げる途中、足場から足を踏み外して亡くなったという人もいるようですが、これは確信がないようです。なぜなら実際彼が亡くなったのは、この作品が仕上がった6年後、ということですから。
ヴェネツィア生まれですが、若い頃Bolognaに行ってDomenico Ambrogi (通称Meneghino del Brizzi)の工房に入っています。このDomenico Ambrogiはこの時代大流行だった目の錯覚を利用した画法の中でもquadratura(クアドラトゥーラ。遠近法によって実際の建築との区別がつきにくく描かれた天井画)を得意とする画家の一人でFumianiもここでこの画法を習得したようです。またLudovico Carracci, Alessandro Tiarini、Paolo Veroneseらの影響も見られます。 

天井画に圧倒されていましたが、他にも

Veronese、聖パンタレオーネの改宗(Conversione di san Pantaleone)
主祭壇左側の奥の礼拝堂(Cappella del Sacro Chiodo)に

Antonio Vivarini とGiovanni d'Alemagnaの聖母戴冠(Incoronazione della Vergine)
一番奥の礼拝堂(Cappella della Santa casa di Loreto) には


Loretoの聖母を完全にコピーした黒い聖母と写真は見当たらないのですが、Pietro Longhiのフレスコ画が少しだけ残っています。このフレスコ画、すごく優しい感じで良いですよ。

他にも

洗礼堂(Battistero)が入り口近くにありました。
彫刻は14世紀のもの。
なんの知識もなく、なんとなく入った教会にこれだけのものが有るなんて、やっぱりイタリア恐るべし、です。

https://www.sanpantalon.it/



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2 コメント

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フィレンツェとベニス (カンサン)
2019-05-15 22:00:13
fontanaさんへ、ずっとイタリアにいらっしゃるんですね。春のベニスは洪水のようにならないのでいい季節でしょう。私は10年ちょっと前のゴールデンウィークにベニスに行きました。
サンマルコ宮殿やリアルト橋、ドゥカーレ宮殿などです。
私、ゴールデンウィークには鹿児島県、種子島や奄美大島に行ってきました。奄美大島ではサンゴ礁を見たり、関西では見られない植生に驚いていました。日本のゴーギャンと言われている田中一村記念美術館にも行ってきました。
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今年は (fontana)
2019-05-16 15:38:53
カンサンさん
種子島や奄美大島ですか、まだ行ったことないのですが、時期的にも非常に良さそうですね。
イタリアは今年は異常気象で、全然暖かくなりません。みんなまだ薄めのダウンを着用しています。雨も多く、珍しくヴェネツィアでもアクアアルタが発生しています。寒いまま帰国することになりそうですが、こちらにいる間に珍しく満開の藤やアイリスを見ることが出来ました。そちらの報告はまた帰国してからということになりそうです。
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