イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

Il ritorno del Crocifisso a Santo Spirito

2010年09月21日 20時07分33秒 | イタリア・イベント
昨日,勢い勇んで出かけたからか、ここ数日天気が安定しなかったせいか、気がたるんでいるからかecc.
お昼を食べた後珍しく頭痛が・・・
風邪気味か???ということでさっさと寝ることにした

さて、先週から何をもったいぶっていたかといいますと、
Il ritorno del Crocifisso a Santo Spirito
ということで、イベントが行われております。

「なんのこと?」と普通の人は思うわけで・・・説明します!
Michelangelo作、といわれるCrocifisso(キリスト磔刑)が戻って来たんですよ、本来有ったFirenzeのSanto Spirito教会に!

と言ってピンときたらすごいです
あれはかれこれもう2年前?
このミケランジェロ作といわれる作品をわざわざRomaまで見に行ってしまった私
詳しくはこちら
それが長旅の末、Fireneに戻ってくるとはねぇ・・・ちっ!

先週、たまたま見ていた地方ニュースでこの話を聞いた時

プロが撮った写真なのにあまり良くないなぁ・・・
新聞記事はこちらがいいかな?
「Le visite guidate」(ガイド付きツアー)が有ると言っていた。
ニュースでやっていたくらいなので、定員が一杯になると困るので黙っていました
まぁここに書き込んでも、そうそう行ける人はいないとは思いましたが・・・もちろん日本人は私だけでしたが。

はやる気持ちを抑えながら9時30分には家を出た

Ponte vecchioの上
実は昨日家に引きこもっていたので見逃したが、街は花市(?)みたいなのが開かれていたとか
7時半の地方ニュースで知りました・・・その残りかしら?

まぶしい~
先週結構雨が降っていたので、すごい水量!

ピノキオ、ピノキオ、ピノキオ・・・複数だからPinocchi?
冗談です。
結局10分ちょっとで目的地に到着9時40分だよ、まだ。

Santo Spirito

正面の扉が開くことは珍しい。
↑これね、Crocifisso

さてツアーは10時から。
人が集まるまでしばらく中入ったところで待つ。
20人まで、ということだったけど、15人くらいかな?
10時少し回ったところで始まった。

いつもは面倒なんで省いてしまいますが、今日はせっかくお勉強したので、せめて覚えていることだけでも残しておこう!
お兄さんとても説明が分かりやすかったし。

12世紀当時このあたりは既にFirenzeとは言えども郊外だった。
当時、外から来る人の為にAgostiniano派の教会としてローマ建築の教会が建てられていたが、
1300年代の火事で消失、当時の面影はほとんど残っていない。
現在の教会の建設は1433年(本には1434年と書いてあるけど)からBrunelleschiの案によるって建てられたもの。
左右対称(床を見るとすべて正方形)、ラテン十字スタイルで作られたこの教会はBrunelleschiの案では更に大きく、Arno川にせり出すくらいになる予定だったとか。
残念ながら、予算の関係でそれは実現には至らなかった。
窓が多いこともこの教会の特徴。電気はほとんどつけなくていいという。

側廊に居並ぶ礼拝堂は、当時のFirenze有力貴族のもの。
但し珍しく「vivente(生きている)」と呼ばれるように、勢力が変わるごとにその礼拝堂の持ち主も替わっていったという。

見るものはたくさん有りますが、まず

Altare a Baldacchino(天蓋つきの祭壇)
1599-1609年Giovanni Caccini他によるもの。
Firenzeの伝統様式、石のモザイクが使われている。
Baldacchinoスタイル祭壇と言えばBerniniのSan Pietroが最も有名ですが、これはそれよりも前の作品。

その後紹介されたのがこちら

Filippino LippiのPala Nerli
この絵はとても面白い。
まず背景にこの絵を注文したNerli家のPalazzoが描かれ、その後ろに当時のPorta San Fredianoが描かれている。
あ~ここからちょっと記憶があいまいなのですが、この絵はambasciatore(大使)をS.Spiritoがもてなしてくれたお礼にNarli家が寄付したもの・・・
その大使がNerliの家の前で挨拶しています。
って言っていた気がするんだけなぁ(wikipediaにもそこまでは出ていなかった)
で、ここに描かれている人々
一番手前の跪いているのはTanai de' Nerli(左)でこの絵の注文主。
後ろに立っているのが、San Martino(左)とSanta Caterina(右)
San Martinoの聖人の日が11月11日、Caterina11月25日
調度この間、大使がFirenzeにいたことにちなんでこの2人が描かれている・・・と言っていました。はい、たぶん
間違っていたらごめんなさい・・・ちゃんとメモすればよかったなぁ。

それから時代が下って15世紀
Alessandro Alloriの作品に、今の形になる前のPitti宮殿が描かれているのを見て。

いよいよ本日のメイン?

なんでこんな写真なの?仕方ないなぁ。
これ・・・1492年18歳(wikiには17歳ってかいてあったけど、間違ってる?)のミケランジェロの作品と言われています。
多くの専門化が未だに?と言っていますが、これ国がものすごい金を出して古物商から買ったので、今更、ねぇ・・・
これが本物かどうかはさておき、ミケランジェロがSanto Spiritoのために木製のキリスト像を彫ったという事実は


Fece per la chiesa di Santo Spirito della città di Firenze un Crocifisso di legno, che si pose et è sopra il mezzo tondo dello altare maggiore, a compiacenza del priore, il quale gli diede comodità di stanze; dove molte volte scorticando corpi morti per studiare le cose di notomia, cominciò a dare perfezzione al gran disegno che gl' ebbe poi.
とかの有名なVasariのLe Viteに記述が残っているわけです。
死体を研究し多というだけだあって、完璧な肉体構造がさすがミケランジェロといわれるゆえんなんですけどね。

私はこの角度が一番好きなんですが・・・本当にプロの写真なんだろうか???
まるで眠っているような安らかな顔。
キリストがなくなったのは33歳。このキリストはどう見てもそんな年には見えません。
これには腰布は付いていない。もともと布製の腰布が付けられていたと考えられているが、時代と共に無くなってしまった。

本来はAltare maggioreにおかれていたが、今はSagrestia(聖具室)の方におかれている。
どこからか鳩が侵入してきていて、怖かった
この聖具室は8角形のCupolaを持ち、8というのはキリスト教の永久不滅数だからなんですと。
こちらはGiuliano da Sangalloの案
今は日本語のパンフレットも置いてあります。

この十字架の公開を記念してガイド付きツアーだけでなく色々とイベントが開催されていますので、
詳しくはこちらから

で、ここで終わりかと思いきや、ここからの方が面白かった。
メインを食べてお腹一杯のところ、驚くようなデザートが出てきた感じ・・・どんななんだか?

普段は入れないChiostroに入ります。
Chiostro dei morti,つまり"死者の回廊”

壁に張り付いているのがお墓です。

この一角にすごお宝を隠しています。
Le tre cene di Poccettiとパンフレットには書いてあって、「なんだろ?」と思っていたのですが、これがすごかった。
Poccettiとは
Bernardino Poccetti(1548-1612)のことなのですが、
彼が描いた3枚の晩餐(cena)の連作
-Nozze di Cana(カナの結婚)
-Ultima Cena(最後の晩餐)
-Cena di Emmaus(エマヌスの晩餐)
のフレスコ画、これが見れたんですよ。ってそんなのあるのも知らなかった。
ネットでかなり情報を探したけど、何も見つからなかったし・・・
知らないもなにも、構図としてはやはり非常に珍しい。
そりゃ、そうよ、いくらここがRefettorio、食堂でも・・・

写真はようやく探し当てたCena di Emmaus、しかない・・・残念。
もちろん撮影は禁止

すごく凝っていて、それぞれの場面に出現しているキリストの後光の色が
Canaでは赤、Ultimaでは白、Emmausは赤と白で表されていたり
真ん中のワインをついでいる人のグラスの透明感だとか、右隅の足を棒に乗せているポーズだとか、すごくリアル。
このシーンでは、既にキリストは再生しているので、手足には磔にあったときの傷跡が残っている。
これ見る為にもう1度行こうかな?というくらい良かった。
修復したて。 

去年偶然この隣の部屋にある・・・と思っていたら隣ではなく、ちょっと奥だったんだけど。
Cappella Corsiniを見たときも感動したんだけどね。(こちらは軍の敷地なので普通は入れない)
一緒のグループだった人たちが「どうしてこういうものもっと見られる機会がないんだ?」とか話していた
「こういうものがあるってしらないのよ」という人もいれば「そのうち有料になるよ」という人も・・・

イタリアには本当にこういう場所、多いです。
時々、もうイタリアから引き上げてもいいかなぁと思うときがある。
でもね、やはりこういう機会って日本に帰ったらないし、
Firenzeにいるからこそ、普段は絶対見られないよなものが見られると思うと、やはりなかなか離れられないかなぁと思ったりもする。
但し、本当に情報をキャッチするアンテナは、ものすごく張っていないと無理ですが。
本当にいいもの見させていただきました。

更に、このツアー始まるときは30分くらいと言っていたのに、1時間近くかかった。
そのうえ、表にあるCenacoloもガイド付きで見学できたんですが、ここでちょっと事件が。
こちらのガイド(多分ゲイのおじさん)、話が早くて分からなかった上、急にお腹が・・・
教会の中が寒かったせいかしらん???
説明されている間、私の頭の中は「この近くのトイレは?」で一杯に
終わったら直ぐ飛び出してしまいました。
ちなみにここS.Spiritoの近くに有料トイレがありますので、ご心配なく!

こうしてブラブラして帰ったわけであります。
とにかく、十字架はこの時期いつでも見られます。
Le tre cene di Poccettiが見たい方は
本日と23,24日、10時、11時半、16時、17時のガイド付きツアーにご参加ください。
最近の中でも得した感が非常に高い作品でした。
この数時間のせいで、試験パスできなくても悔いはない・・・あきらめるな~って?



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4 コメント

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私も見たよ。 (信雄)
2010-09-21 20:34:11
2008年6月8日、私もサントスピリト教会でこのキリスト像をカビ臭い聖具室で見ました。イタリアは教会への入場は無料で、価値ある宗教芸術を見る事ができて良かったです。良かった、と過去形になりつつあるのが残念ですが。英国は、博物館と美術館はタダ、しかし教会はべらぼうに入場料が高いですね。
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私も観に行きました! (紅子)
2010-09-22 01:44:23
一応卒論がミケランジェロさんのピエタだったので、この木彫作品は必見、なんですねぇ。

このキリストの顔と、ローマのピエタのマリア様とが、
とても類似しているとか何とか。
とにかく、レリーフではないミケランジェロの彫刻作品の最初を飾るのがこれですよね。

S.spiritoの辺りは何だか治安が悪くて、あまり行きませんでしたが、
この彫刻だけでなく、教会自体やはり見ごたえがあるので
思い出に残っていますよ~。
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そうなんだ・・・ (fontana)
2010-09-22 16:24:05
私が行くときはいつも聖具室は閉まっていたんですけどねぇ…

信雄さん
このイベントの為でしょうか、きれいになっていてかび臭くなかったです。この教会有料化についてはここイタリアも他人事ではないようです。現にDuomoもいつ有料化されるか、と言われていますしね。ただ、さすがバチカンのお膝元、いくら観光客が増えても、基本的に教会はお祈りするところ、という考えが根強いのが救いです。反対にイタリアは美術館の入場料が高いのでイタリア人の足が遠のいていることが問題になっています。文化財保護、と考えると・・・難しい問題です。

紅子さん
これが本物なら、最初の作品です。ただ私も???派です。ただ、もしミケランジェロじゃなければ誰なんだ?というくらいすばらしい作品ではあります。
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知らなかった・・・ (fontana)
2010-09-23 03:07:17
紅子さん

追加です。「S.Sprito地区は治安が悪い」と書いていたのを、そうかなぁ?と思っていたら、調度先ほどのニュースで、「今Firenze centroでも特に治安が悪い地域」と言われていました。私は、Mercatoが出ているときなど人が出ているときにしかいかなかったので、気づかなかったのですが、要注意ですわ!
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