昨日ダ・ヴィンチのニュースの陰で、個人的にはもっと興味深いニュースが流れていました。
ガウディのの初期作品の1つである、バルセロナのグラシア地区に現存している、Casa Vicensの一般公開が始まったそうです。
ガウディが初めて1人で手掛けた建造物なんだそうです。
レンガやタイル工場を運営する会社の社長であったマヌエル・ビセンス氏の住居として建設されたので、この素レンガと多彩タイルのコントラストが素晴らしい。
1883年に建築開始。
1885年に完成し、ビセンス氏の私邸になっていましたが、マヌエル・ビセンス氏は1895年に死去。
その後1899年にアントニオ・ジョベル医師が所有し、(この人物は2013年現在の所有者の祖父)その間に改修や増築が行われた模様。
1969年にスペインの歴史芸術モニュメントに認定。
2005年には既に1984年に「ガウディの建築群」としてユネスコ世界遺産登録されていたカサ・ミラ、グエル公園、グエル邸の3軒に加えて、サグラダ・ファミリア、カサ・バトリョ、コロニアグエルの地下礼拝堂の3か所と共にこのカサ・ビセンスも登録された。
その世界遺産登録直後の2007年10月、カサ・ビセンスは売りに出されます。
世界遺産に登録されると色々縛りがきつくなるからそのせいも有るのでしょうか?
ただその売値が2700万ユーロ!?
えっ、「35億?」(今年の流行語大賞ノミネートワードだわ)
高額、高額ということで、全然買い手がつかなかったんです。
ただでさえスペインの経済は破綻の一途をたどってましたから、仕方がないですね。
でもね、腐っても世界遺産ですよ。
いや、腐ったら世界遺産登録取り消しになっちゃうし。
そのまま放置しておくわけにはいかないし、政府も金が出せない時の神頼み…
ではなく、そんなときの頼みの綱は銀行です。
日本ではあまり聞いたことがないですが、ヨーロッパは銀行って非常に貴重な文化遺産を所有していることはよくあります。
借金の担保にいただくからなのかしら?なんて下世話な想像かしらん?
でも銀行の金庫って、一番安全かつ保存状態が良い場所だと思うんです。
更に銀行って、ときどきその美術品を無料で公開してくれたり、所蔵品だけで展覧会を開いたりしてくれるんです。
例えばフィレンツェのCassa di Risparmio Firenzeは財団を作って、定期的に収蔵美術品を無料で見学できるようにしています。(詳しくはhttps://www.fondazionecrfirenze.it/attivita/archivio/in-collezione/)
残念なことに、無料ツアーがすごく人気でなかなか予約が取れないんですけど。
(もう住んでないからますます難しい)
ちょっと話が逸れましたが、このカサ・ビセンスを買い取ったのも「MoraBanc」という銀行でした。
実はこの銀行スペインの銀行ではありません。
スペインとフランスの間にある小国「アンドラ公国」(Principat d’Andorra)に本拠地を置く銀行なんだそうです。
こんな国が存在するなんて、知らなかった…
MoraBancは2014年に将来カサ・ビセンスを一般公開することを条件に買取ました。
2015年から一般公開に向けた修復や改装が始まり、今年の復活祭(春)目指して工事が行われていたそです…がようやく昨日オープンしたということです。
夏のテロの影響や独立問題で落ち着かないバルセロナの激減した観光客を取り戻すための起爆剤になれると良いのですが。
写真を見て気になったのでちょっと調べてみると、このカサ・ビセンスはどう見てもアラブ様式。
外観もそうだけど
内装だって
この天井いいですねぇ~
このタイル、マヨリカですか?
と写真を見ただけですが、アルハンブラ宮殿みたいと一人で興奮。
それもそのはずここはアルハンブラ宮殿などのムデハル様式の影響を強く受けている…って見たまんまだけど。
ムデハル様式とは
”イスラム文化の様式を取り入れた中世スペインの建築や装飾の様式で、12世紀から16世紀にアラゴンやカスティーリャで盛んになった。”(Wikipediaより)
アラゴン州の10のムデハル様式の建築物は世界遺産に登録されています。
長い間一般に見られなかったものが、再び日の目を見られるのは非常にうれしいことです。
すぐにでもバルセロナに行きたいものですが、今はそんなわけにもいきませんね。
詳細はこちらのオフィシャルサイトから。
写真は全てオフィシャルサイト及びCasa Vicens/Barcelona 2016/Pol Viladomsよ
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