イタリアの泉

今は日本にいますが、在イタリア10年の経験を生かして、イタリア美術を中心に更新中。

神奈川の記憶ー横浜市歴史博物館 その2

2018年12月18日 17時56分41秒 | 展覧会 日本

昨日は結局本題に行く前に力尽きてしまいましたが、今日こそ例のお話を。

個人的には「神奈川の記憶展」の目玉はこれでした。


この宗教画の実物が見たくてはるばるやって来たのです。
会場の様子は、こちらのサイトが分かりやすいと思います。説明も詳しく載っているので是非ご覧ください。
また写真もそちらから拝借させていただきました。

それは会場の一番奥に飾られていました。
保存状態は最悪に近いです。
記念館で聞いた通り、40年余りガラスケースには入れられていたものの、全然ガードされずにほったらかしになっていたのですから…
和紙が非常に薄く、この写真のような茶色ではなく、もう少し白っぽい色、穴や切れも非常に多くボロボロで、裏張りしなければ耐えられない箇所も有りました。
見慣れた「キリストの物語」のはずなのに、何かが違うんですよね。
印象はもちろんですが、なんだろうなぁ…
受胎告知(この写真では切れていますが)のマリアからしてなんとなく違うんですよね。
とても不思議です。

ご聖体の連祷と黙想の図、日本語で「十五玄義図」と呼ばれているキリストの生涯を15枚に分けて描いた作品は、日本には数点しか存在しないそうです。(和風のものという意味で)
あちこちで言われていたので、非常に注意深く見たのは「キリスト復活」で驚いている兵士の腰刀。
これが江戸時代以前、馬に乗ることを考えた刺し方だというのも確認。
ん?あれ?これずっとキリストの物語だと思っていたけど(ごめんなさい)、マリアですよね?
受胎告知からマリアの被昇天までが描かれている。

とここで記念館での説明の1つを思い出した。
戦前に見つかった「マリア十五玄義図」はこのタイプ

写真:Wikipedia
このタイプなら、西洋でも一般的なので私もそれほど興味を持たなかったでしょうが、横書きに15枚、墨で描いたモノクロ画というのは非常に日本的で他に類がない。
ということで、これがどれだけ貴重なものかお分かりいただけましたでしょうか?

これだけではなく、記念館になかった貴重な鍔

漁師が彫られていますが、その胸には十字架が。

他にも司馬江漢作と言い伝えられている日本画の「聖母子像」などもありました。中でも私が特に気になったのは…
私が見たのは白黒だったのですがその写真は見当たらず、多分これの白黒版だと思うのですが

ド・ロ神父がキリスト教の教義を分かりやすく伝えるために作成した木版画の1つが展示されていたんです。
これは、そのカラー版かと思われます。
ド・ロ神父は、フランス人宣教師で、長崎の外海地区で布教の傍ら、社会活動にも励み、女性のための仕事を生み出したり、日本初のパスタ(マカロニ)工場を造ったりしました。現在でもこの地区では

こんなパスタが販売されています。

ド・ロ神父は10種類製作したそうですが、出展されていたのは、丁度この写真の真ん中、「最後の審判(公審判)」でしたが、地獄に居るのが鬼で、劇画調の顔が非常に怖かったです。
この写真は長崎県庁のスタッフさんのブログから拝借したのですが、2015年に長崎歴史文化博物館で開催されていた特別展「聖母が見守った奇跡」に出展されていた作品のようです。

http://tomocchi.nagasaki-tabinet.com/post-3520/

こんな感じで色々興味深いものが多数展示されていましたが、ここでもやはりこれらの遺物は研究が進んいないものが多いので、情報などが有る方は是非寄せて下さいとのことでした。
「神奈川の記憶展」は2019年1月14日まで開催です。

特別展を見た後、常設展の方へ向かいました。
そちらは横浜の歴史を色々なもので紹介しています。


例えば鎌倉時代の金沢八景辺り。
野島という場所がこの時代はまだ島ではありません。


閻魔様大集合
中世になって様々な宗教者の活動によって地獄と極楽の思想が広く浸透してきたことから作られた作品だそうです。


江戸時代になると、お祭りの様子など。
これ仕掛けは単純なのですが、非常に面白かったです。


ジオラマ

開港後の横浜


日本で一番賑やかだった街「関内」ではなく「関外」⁉
関内なら今も有るのでわかりますが、関外とは?
実は「関」というのは関門のことで、開港場にあたる関門の内側(港側)を「関内」、外側を「関外」呼んでいたそうです。
関内駅そばの吉田橋の袂にその関門があったそうです。
だから、丁度JRの線路を境に「内」と「外」に分けられていたんですね。
関外というのは現在の伊勢佐木町や野毛の辺りのことだったのでしょう。
この辺りが繁華街として非常に栄えていたのは、とうの昔の話ですが。
ふむ、こうやって大人も横浜の歴史が学べる博物館ですね。


展示室の真ん中にはコンピューターが置かれていて、色々横浜に関することを調べたりも出来るようです。
常設展の方はボランティアガイドの方もいるそうです。英語にも対応しているみたいです。(英語ガイドは2週間前までに予約)
他にも屋外に「大塚・歳勝土遺跡公園」があり、そちらもガイド付きで巡ることができるそうです。
また図書館も併設していて、今回だったら朝日新聞に掲載された「神奈川の記憶」の記事をコピーすることも可能です。(有料)

横浜市にこんな立派な博物館が有ること、それほど知られていない(と思っているのは私だけ?)のは残念です。
興味がある方は是非足を運んでみて下さい。

横浜市歴史博物館
https://www.rekihaku.city.yokohama.jp/



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