野球小僧

野球の底力

2006年7月に行われた第88回全国高等学校野球選手権長野大会の準々決勝で、創造学園大付高と辰野高が3時間22分の熱戦、延長15回を戦い、引き分け再試合となった一戦がありました。

辰野高のエースはストレートのキレが良く、スライダーもコースに決まり打者に的を絞らせず8回まで1失点、創造学園大付高のエースは低めに球を集め、ほぼ完ぺきな投球で8回まで0点に抑えていました。

辰野高は1点を追う9回、1アウト二・三塁の場面でランナー一掃の逆転3ベースタイムリーで1点を勝ち越し。逆に追いつめられた創造学園大付高はその裏、フォアボール、犠打と安打で1アウト一・三塁。内野ゴロでダブルプレーかと思われましたが、バッターランナーが一塁に頭からスライディング、一瞬の差でセーフとなり同点としました。

そのまま延長に入り、辰野高はエース続投、創造学園大付高は二年生がリリーフ登板し、ともに譲らずに延長15回を戦い抜きました。

辰野  000000002000000|2
創造学園001000001000000|2
(延長15回引き分け再試合)

引き分け再試合で仕切り直しの翌日。この日も伯仲した好ゲームとなります。

創造学園大付高が2回に先制しますが、辰野高は5回2アウト二塁からのタイムリーで同点。辰野高が8回に相手のエラーで勝ち越すと、創造学園大付高はその裏にホームランで2-2の同点に追いつきます。そして辰野高が9回に2つのフォアボールから作った2アウト二・三塁のチャンスにタイムリーヒットが出て再び1点を勝ち越し、3-2で創造学園大付高を振り切り、3年ぶりのベスト4を決めました。

辰野  000010011|3
創造学園010000010|2

前日の試合後、選手は宿泊先でミーティングを開きました。「自分たちは災害の中、頑張っている。君たちは試合で頑張って」。テレビ番組に寄せられたメールで、豪雨で被災した地元の辰野町民からの後押しを改めて感じ、奮い立ったという。

前日と合わせて5時間46分に及ぶ熱闘。辰野高応援スタンドは学校からバスで来た生徒有志約70人が、メガホンを持って保護者や野球部員と一緒に声をからし、「絶対に気持ちで負けるな」と選手たちを励ましました。
また、復興ボランティアの合間を縫うなどして駆け付けた住民らで埋まり、「被災地に勇気を与えてくれた」と惜しみない拍手が起きました。

この年。2006年は7月15日から7月24日にかけて南九州や北陸地方、長野県、山陰地方などを襲った梅雨前線に伴う記録的な豪雨に見舞われ、全国で26人の方が亡くなり、行方不明者1人というものでした。長野県では岡谷市を中心とした諏訪地方全体で、死者・行方不明者11名、床上浸水1,043棟を出す被害となり、辰野町では3人の方が亡くなっています。私の実家も辰野にありましたが、土砂崩れなどで1週間ほど地区外へは出られない状態でした。

もちろん、この雨は大会にも影響し、雨で順延になったり、練習に影響が出たりしているチームが多かったです。

この大会でシード校だった辰野高は練習が満足に出来ない状態が続きました。17日からの4日間、守備練習やバッティングはまったく出来ておらず、天竜川が決壊した19日には学校が休校になり、野球部員も全員が自宅待機しました。伊那市から通う選手は家族5人で伊那北小学校に逃げ込んだそうです。決壊前夜は、雨が窓をたたく音でほとんど眠れなく、体育館は被災者であふれており、仕方なく、高台にある親類宅へ。でも、玄関の軒下でバットの素振りをし、家の中では筋トレに励み、余った時間は野球の雑誌を読んで過ごしたそうです。20日は列車の運休や道路の閉鎖で、44人の部員のうち25人しか学校へ来ることが出来ませんでした。

しかし、「ほかの学校も条件は同じ。少々の練習不足を気にしたってしかたない。自信を持って新鮮な気持ちで試合に臨みたい」。自宅待機になった19日は筋トレの後、読みかけだった『ダ・ヴィンチ・コード』を読破した。「普段、野球のことばかり考えている脳みそが違う働き方をしたみたいで、いい気分転換になりました」と前向きに考えていたそうです。

今年も九州熊本を中心に大きな地震があり、今でも余震があります。他にも災害に遭われた方も多く、現在も普通の生活にまだ戻れていません。そんな中で、関係者の努力や協力により野球が出来ることに感謝しながらプレーして欲しいと思います。また、そのプレーや活躍によって、地域の皆さんに元気を分け与えてくれる、希望の励みになることも事実です。

ちなみに、今年の辰野高野球部は選手が15人、そのうち女子選手が4人ですので、実質11人の登録です。2006年には44人だったことを考えると、少し寂しくなってしまいました。また、これから盛り上がっていくことを願っています。また、この年とその3年前にもベスト4に進出した時の監督は現在、長野商業高野球部監督です。

≪ その他球場の二回戦の結果 ≫
長野県営球場の第三試合、上田県営球場の第二、三試合は雨天のため順延

上田県営球場
駒ケ根工業 5-3 木曽青峰
大町岳陽 1-1 長野南 (4回終了時に雨のため中止。15日30時30分開始予定)
伊那北 - 松代 (15日16時開始予定)

長野県営球場
松本蟻ケ崎 9-6 上田千曲
上田染谷丘 5-4 下諏訪向陽 (延長11回)
松川 - 創造学園 (15日14時開始予定)

松本市野球場
上田 0-2 池田工業
飯田風越 4-1 豊科

■諏訪湖スタジアム
諏訪二葉 5-6 ウェルネス
松本工業 5-3 中野西


コメント一覧

まっくろくろすけ
eco坊主さん、こんばんは。
準地元校は数年に一度ですが、上位進出をしていただけに、部員の減少は残念でなりません。特に小さな町で一校だけというのは、地元では活躍は張り合いですからね。

この三連休。どういう過ごし方が出来るのか。
昨年は、お気楽に観戦していましたっけ・・・
eco坊主
おはようございます(*Ü*)ノ"☀

10年前の長野県大会の準々決勝・・
記憶に残っていません。申し訳ないm(_ _)m

確かに高校野球の偏重を言われることが多々ありますが、地域・地元の皆さんに勇気や元気・活力を与えるのは間違いないと思います。それこそ野球の底力ですね。

昨日も長野県の結果をチェックしていました。
松本工業勝ちましたね!
知り合い(Paletter)にOBが多かった記憶があります。
勿論一番の応援はTCUですよ^^b
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