第101回全国高等学校野球選手権の大会第13日目は準決勝2試合が行われ、大阪・履正社高と石川・星稜高が勝ち上がり、ともに初優勝をかけて8月22日の決勝に臨みます。
■第1試合
履正社高は初回、池田選手のタイムリーヒットなどで4点を先制。その後は、5回表に野口選手のタイムリーヒットで追加点すると、9回表には野口選手が再びタイムリーヒットを放ち、リードを広げた。投げては、先発・岩崎選手が9回1失点で完投し、履正社高が選手権では初となる決勝進出となりました。敗れた明石商業高は、打線が1得点と振るわず、決勝進出は逃しましたが、初出場の昨年よりも成績を大きく伸ばし、兵庫勢の公立校として67年ぶりベスト4の結果を残しました。
履正社400010002|7
明石商100000000|1
履正社高・岡田監督:「岩崎がここまで投げてくれるとは夢にも思わなかった。打線は桃谷をはじめ、全員に積極性がある。決勝でもいつも通り、思い切りやってほしい」
明石商業高・狭間監督:「相手が一枚も二枚も上だった。中森の立ち上がりが悪かった。初回の4失点が全て。まだ2年生。連投できる体力をつけ、レベルを上げてほしい」
■第2試合
星稜高は初回、内山選手の犠牲フライで先制。続く2回裏に東海林選手のタイムリーヒットで追加点すると、3回裏には福本選手のタイムリーヒットなどで4点を挙げ、リードを広げた。投げては、先発・奥川選手が7回無失点10奪三振の好投で、星稜高が決勝に駒を進めました。敗れた中京学院大中京高は、投打ともに振るいませんでしたが春夏通じて初のベスト4。この日も終盤の逆転を信じて戦い続けましたが、大会屈指の奥川選手を前に力尽きました。
中京学院大中京000000000|0
星稜 11400030x|9
星稜高・林監督:「攻撃を理想的な展開で進められた。良い試合だった。奥川は一、二回は体が重たそうな感じがあったが、コントロールで投げていた。良い投球だった」
中京学院大中京高・橋本監督:「完敗だけど、うちの力は出し切った。奥川君は想像以上に素晴らしい投手だった。タフじゃないと全国の頂点は取れないと改めて感じ」
両校は今春の選抜大会一回戦で対戦し、星稜高が3-0で履正社高を下しています。その試合で星稜高・奥川選手は9回3安打17奪三振で完封。履正社高打線は打倒星稜、打倒奥川を誓い、打力アップにつとめてきました。
星稜高が優勝すれば春夏通じて石川県初の甲子園優勝になります。履正社高が優勝すれば、大阪勢2年連続14度目の夏優勝となります。
明石商業高の狭間善徳監督は明石南高、日本体育大で内野手としてプレーし、高知・明徳義塾中・高のコーチ、明徳中監督などを経験。明徳義塾高の馬淵史郎監督を師と仰ぎ、明徳義塾中学では監督として4度の全国優勝実績を引き下げて、2006年に明石市の公募により明石商業高にコーチとして赴任し、2007年から監督に就任。兵庫県内の勢力図を塗り替える戦いぶりで、一昨秋、昨春、昨夏の西兵庫大会、そして昨秋と史上初の4季連続県大会優勝、県内公式戦連勝記録を27に伸ばしています。
現在は兵庫県内でも関西学院高、姫路工業高、明石商業高、報徳学園高の順番で部員数が多く、この10年間に100人を超える大所帯のチームになり、公立校の雄として県内の高校野球をリードしています。
しかし、狭間監督の赴任当初は十数人しかいなく、選手も、「走ってきます」と言ったものの部室でラーメン食べてたり、やる気がないと言って家に帰る子がいたりしていました。また、明徳中から公募で入ったこともあり、面白くないと思う人も中にはいたとのことで、夜遅くまで照明つけて練習すると苦情が来たり、「明石商なんかが甲子園行ったら、逆立ちして全国歩いたる」と言われたこともあったりと、結構、叩かれたそうです。
2年前までは遠征費もなく、部員が冬休みにアルバイトするために、卸売市場や商店街を回って頭下げたり、大学との関係をつくるために関東や九州を自腹で回ったりと、スタッフも休みなく、選手たちと向き合ってきたそうです。
練習、試合では常に先頭に立って声をかけ、指示を出し、緻密な野球をやっています。ただし、まず大事なのは生徒が強くなりたいという気持ちがなければダメだと。選手には基礎、基本を徹底します。やるべきことをやった中で、試合ではイニング、点差、後ろのバッターなどを考慮し、盗塁、エンドラン、スクイズなど、どんな状況でどのサインを出しても(対応)できるよう指導しています。基本的に全部ネガティブに考え、こうやったら負けるということしか描いていないそうです。これは、明徳義塾時代に馬淵監督から、「最悪の状態で最善を尽くせる態勢にしとかなあかん」と教わったことから来ています。
これが、三回戦での山口・宇部鴻城高戦で見せた「明商野球」。1点を追う8回。先頭バッターが出ると、代走が登場。送りバントで二塁に進め、相手ピッチャーの癖を見切って三盗を決めます。1アウト三塁とチャンスを広げ、次のバッターがヒットエンドランを成功させ、同点としました。
本塁へのエンドランは軟式野球の常とう手段の一つであり、硬式野球では珍しい作戦です。中学監督時代に4度の全国制覇に導いた狭間監督ならではの作戦。「フルカウントなので外してこない。フライ以外なら1点入る作戦。よく高い球を転がした」とのことです。
延長10回は1アウト満塁から「一番自信を持って決められる」というスクイズを危なげなく決めます。「取り組んできたことが出せた。どの引き出しを引いても選手ができるように準備している」と決着をつけたのも磨き上げてきました。
「バントだけは全国のどこにも負けるな」という指令の下、全部員111人で毎日バントとスクイズ、エンドランの3種類を10本ずつ練習してきました。バント練習はストライクのみを打つケースと、スクイズを想定しどの球でも必ず当てるケースの2パターン。必ず手投げの球を打ち、長い時でバント練習だけに1時間を費やし、選手の多くが「外されてもできる」と身体に染み込ませてきた武器です。
準々決勝は昨夏の初戦で8-9で敗れた青森・八戸学院光星高相手に勝利。
「練習はうそをつかない」。努力と自信に裏打ちされての勝利の積み重ね。近年の高校野球とは一味違う、昔ながらの高校野球で「明商野球」は新名物監督とともに進化していくことでしょう。