野球小僧

第2回 投手の障害予防に関する有識者会議

高校野球のスポーツ障害予防策を検討する「第2回 投手の障害予防に関する有識者会議」が6月7日、都内で行われました。

この有識者会議は新潟県高野連が独自に一試合100球の制限を導入しようとしたことから発足したものです。そこでは医師による調査結果などから投球数制限が肩ひじの障害予防に効果があると判断し、一試合単位ではなく、大会終盤の数日間など一定期間での総数に制限をかける方向で議論がまとまったとのことです。複数試合での制限は一試合単位に比べ、展開や相手によって中心ピッチャーの投球数を増減させられるなどのメリットが見込めるとのことです。中島隆信座長(慶大商学部教授)は「一試合で制限するより、現場の自由度は増す」と説明しています。これは一試合単位での制限ではピッチャーの少ない少人数の学校や公立校に不利になるのでは、と指摘する声もあるようですが、これならまだ理解を得やすく、複数ピッチャー育成もしやすくなるでしょう。

対象の大会について、川村卓副座長(筑波大野球部監督)は、「夏だけでなくすべての大会で実施したい。ただ順番としては、まず全国大会からが導入しやすいのではないか」と述べたそうです。中島隆信座長(慶大商学部教授)は「効果を検証しながらやっていくことになると思う。ある程度の試行期間は必要」とのことです。また、委員から反対意見は出なかったとのことです。

大きな前進だと思います。ちなみに、この有識者会議において、正富隆委員(医師)が日本臨床スポーツ医学会の「青少年の野球障害に対する提言」(1995年)の「高校生の場合、全力投球数は『一週間500球を超えない』」とあるそうです。この数字を使って、過去の全国選手権大会に当てはめたシミュレーションが朝日新聞にありました。

2018年夏の第100回記念大会では、吉田輝星選手(現;北海道日本ハムファイターズ/当時;秋田・金足農高)が決勝までの全6試合に登板。決勝以外は1人で投げ切り、総投球数は881球でした。吉田選手が二回戦から一週間での投球数は、592球だったそうです。準決勝の途中で500球に届いていますので、決勝では投げられないどころか、準決勝の途中で交代しなければなりませんでした。

また、2006年の・斎藤佑樹選手(現;北海道日本ハムファイターズ/当時;西東京・早稲田実高)も、決勝前に一週間500球に届いていたそうです。2013年の選抜大会での安楽智大選手(現;東北楽天ゴールデンイーグルス/当時;愛媛・済美高)は決勝の途中降板時に772球でした。この数字がルール化されたとしたら、いずれも決勝前では登板できず、場合によっては決勝を見据えて準決勝でも登板できなかった可能性もあります。

ちなみに、甲子園での「投げすぎ10」は次のとおりです。

948球 2006年 夏 斎藤佑樹選手(現;北海道日本ハムファイターズ/当時;西東京・早稲田実高)
878球 2018年 夏 吉田輝星選手(現;北海道日本ハムファイターズ/当時;秋田・金足農業)
820球 1997年 夏 川口知哉さん(元;オリックスブルーウェーブ/当時;京都・平安高)
814球 2014年 夏 今井重太朗さん (当時;三重・三重高)
783球 2010年 夏 島袋洋奨選手(現;福岡ソフトバンクホークス/当時;沖縄・興南高)
773球 1990年 夏 大野倫さん(元;読売ジャイアンツ/当時;沖縄・沖縄水産高)
772球 2013年 春 安楽智大選手(現;東北楽天ゴールデンイーグルス/当時;愛媛・済美高)
767球 1998年 夏 松坂大輔選手(現;中日ドラゴンズ/当時;神奈川・横浜高)
766球 2011年 夏 吉永健太朗選手(現;JR東日本/当時;西東京・日大三高)
765球 2004年 春 丸山貴史さん (元;ヤクルトスワローズ/当時;愛知・愛工大名電高)

なお、島袋選手は2010年春には689球を投げています。

1998年夏の松坂選手について、前・横浜高監督の渡辺元智さんは大阪・PL学園高戦での延長17回250球について、「数多く投げさせた最後です」と言い、翌日の高知・明徳義塾高との準決勝での先発について、監督として「投げさせません」、松坂選手も「投げられません」と示す関係があったとのことです(リリーフで1イニングに登板)。「(選手が)痛ければ、痛いと言える環境づくりが大事」とのことです。故障のリスク要因については、「(一試合の)球数以上に疲労の積み重ね。50球、100球でダメでも、150球いける選手がいる」「球数制限は将来的に前向きに検討してもらいたい」と語っています。

ちなみに、この一週間500球という数字には根拠はないそうです。この際に根拠となるデータも収集していくとのことです。

具体的な議論はこれからですが、投球制限については方向性が見えてきました。また、大会日程の緩和を求める負担軽減意見もあるそうです。期間や総投球数は、各都道府県高野連などの意見を聞き、9月に行われる次回会合で具体化させ、11月に出す提言に盛り込まれるとのことです。

新潟県高野連が障害予防などを目的に今春の県大会で独自に「一試合100球制限」を導入しようとして投げた一球が、今後の高校球児を守る貴重なストライクになるようです。


コメント一覧

full-count
eco坊主さん、こんばんは。
こういう動きが、他の年代にも広がって行ければ良いでしょうね。
ただ、大会体制とかいろいろクリアしなければならない課題は多いでしょうね。
でも、まずは「痛い」というのが素直に言えること。指導者との信頼関係を一番構築していかなければならないでしょうね。
eco坊主
おはようございます。

いいことですね^^b
新潟県高野連が投じた一石が大きな波紋を広げてくれましたね。
でも外堀を固めるだけでいけません
>「(選手が)痛ければ、痛いと言える環境づくりが大事」
↑チームでのこの環境の方が大事です!!

>今後の高校球児を守る貴重なストライクになるようです。
↑正にその通りです!
ただ高野連が誤審でボール判定としなければいいのですが・・
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