もうすぐ、夏の甲子園に向けての都道府県大会が始まります。三年生にとっては、一日でも長く野球を続けていたいと思いますし、三年生の保護者の方にとっても、一日でも長く応援を続けていたい気持ちです。
青い空、照りつける太陽、土の付いたユニフォーム…そして、高校球児といえば「坊主頭」。なぜ高校野球では、皆坊主なんでしょう。
そもそも、高野連には「坊主頭」にしなければならないと言う規定はないです。唯一、「監督、コーチ及び選手の長髪は、原則として禁止する」となっています。つまり高野連は丸刈りの強制などしていません。
ということは、髪型については高校野球の規則と言うより、各学校の野球部の規則という、感じになっています。中には、眉毛をいじることも禁止している野球部もあります(地区高野連の申し合わせ事項として「眉を加工した選手は出場停止」になるそうです)。
でも、近年は強豪校でも坊主じゃない学校があります。福岡・柳川高、神奈川・慶應義塾高、宮城・仙台育英高などが代表です。
仙台育英高では1995年から2001年の間、野球部に髪型の規定はありませんでした。1995年に就任した佐々木順一朗監督によって「坊主にしなければいけない」という規則がなくなりました。ただ、2001年に不祥事があり、2002年、2003年と活動停止となり、その停止期間が空けてから選手たちが坊主にし始めました。
・野球に専念しなさい。オシャレなんぞにかける時間があるならば、素振りの1回くらいやりなさい
・野球部員として自覚しなさい。丸刈りは悪さをしないように、地域で監視する目印にするから
・床屋、理髪店に行く時間がないので、お互いバリカンで刈れるから
・伝統
と、いろいろ考え方がありますが、最も有力な理由は伝統説です。日本に野球が伝わった時代が、日本の近代化における富国強兵策によって、軍国化を進めるにあたって国の一体化を図り、男児は皆坊主にするという風潮が広まりました。その統率、管理といった部分が戦後も野球部だけに残っている説です。
そんな中で、春季高校野球東北大会が開幕していますが、福島・聖光学院高は約130人の全部員が頭髪を五厘刈りにし、一丸となって初戦の宮城・仙台育英高と対戦しました。
大会に出発する前に主将らが音頭を取り、「みんなで五厘刈りにして、気持ちを一つにしよう」と全部員に呼びかけた。練習後に約130人の部員が寮に集まり、各自が持っているバリカン数十個で、大散髪会が開かれたそうです。また、バリカンだけでは満足できず、主将はカミソリでそり上げ、「お坊さんみたいになりました。寝ていると枕が頭に(摩擦で)引っかかる」と、青々とした頭で話しています。
仙台育英高には昨秋だけでなく、今春に行われた練習試合でも敗れたており、「力と力で戦っても勝てない」と、相手の強さを改めて痛感し、だからこそ「チーム力や泥臭さで勝たないといけない」と考えて、みんなが同じ丸刈りになることで、その思いを全員で共有するために散髪会を開いたそうです。夕食時には見たいテレビ番組を我慢し、仙台育英のセンバツでの試合の映像を見るなど、雪辱への思いを貯めて来たそうです。
その前には、全日本大学野球選手権に出場した上武大の野球部員220人全員が丸刈りにして試合に臨んでいました。これは、5月14日の春の関甲新大学リーグの最終節・白鴎大戦での敗戦で、8失点したピッチャー陣が頭を丸刈りにしたことをきっかけに、部員220人全員が頭を丸め、そこから2連勝して逆転優勝したものです。そして、全日本大学野球選手権での対福井工大との試合でも再び前日に全員が5厘刈りにしています。
こちらの方は高校野球と違って、選手たちが丸刈りにした経緯が報じられると、SNS上で「気合が入ってるね」という好意的な声以上に、「違和感がある」「なぜ美談?」などの声がありました。上武大の監督は「強制じゃない」と回答していますが、同調圧力の現れとみた人が多かったようです。
少し古いデータですが、2013年6月に公表された、高校の野球部を対象にした実態調査では、部員の「丸刈り」が15年前の1998年と比較して激増していたそうです。
これは朝日新聞社と日本高校野球連盟が全国の加盟4032校を対象に、2013年4~5月に行った実態調査の結果、1998年に約30%にまで減った「丸刈り」は約80%まで増加していました。
丸刈りが増加している理由として、ファッション雑誌編集長は「ボウズ=おしゃれな髪形というイメージもできた」とコメントし、神奈川・横浜高の渡辺元智総監督も「今は生徒が丸刈りを嫌がっていないと感じる」と話していました。
時代は「坊主」を求めている…?