この動画は、私が沖縄を訪れた間、FMやTV CMで流れていました。
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡る沖縄県民投票は、一時は全県実施にならない可能性がありましたが、告示まで2週間を切るタイミングでようやく構図が固まりました。「賛成」「反対」の選択肢に「どちらでもない」を加える異例の修正で全県実施にこぎつけました。ここまでの3ヶ月間の沖縄県内の混乱は、複雑に絡む沖縄県民意の現われを問う難しさがあったと思えます。
ここまでの経緯を簡単にまとめますと、次のとおりとなります。
2018年
5月23日 市民団体「『辺野古』県民投票の会」が県民投票に向けた署名集めを開始
9月 5日 必要数となる有権者の50分の1(約2万3千筆)の約4倍にあたる92,848筆の署名を集め、県議会への条例案提出を直接請求
県政与党である「社民・社大・結連合」と日本共産党らが中心となって沖縄県議会に選択肢を「賛成」「反対」の2択とした条例案を提出
県政野党である沖縄・自民党と県政では中立的立場を取る公明党は「やむを得ない」「どちらとも言えない」を加えた4択とする案を提出
10月26日 野党案(4択案)を賛成少数で否決し、与党案(2択案)が賛成多数で可決成立
10月31日 公布
11月27日 「2019年2月14日告示・同年2月24日投開票」のスケジュールが発表
2019年
1月19日 宮古島市・宜野湾市・沖縄市・石垣市・うるま市の市長が原案執行権を行使せず、県民投票不参加を表明
1月24日 「賛成」「反対」に「どちらでもない」を追加した3択案が自民党も含む全会派で合意
1月29日 県議会にて、3択とする条例改正案が可決成立
3択案成立を受け、不参加を表明していた5市の市長は投票の実施を表明
2月24日 沖縄県内全市町村で投開票が行われる
なお、投票約2ヶ月前の2018年12月14日から辺野古基地予定地への土砂搬入が開始されています。
県民投票における、2択の条例が公布されたのは2018年10月末でした。投票事務の関連予算の審議が県内全41市町村で始まりました。夜までもつれたり、傍聴席から怒号が飛び交ったりした議会もありました。当初、宜野湾市、沖縄市、うるま市、石垣市、宮古島市の5市が不参加を決めました。この時には、県民の約30%が投票権を行使できないこととなりました。その理由として、各市長は「議会の判断を尊重した」という意見の他、
・「投票結果によっては普天間飛行場の固定化につながる懸念が極めて強い」(宜野湾市・松川正則市長)
・「(1997年の)名護市の住民投票では市民が分断され雰囲気が暗くなった。こういう経験をさせたくない」(沖縄市・桑江朝千夫市長)
などの理由を挙げていました。
当然のように5つの市役所には苦情が殺到します。市長を提訴する運動や「ハンガーストライキ」を始める大学院生も出てきました。それでも5市は態度を変えず、県民の30%が投票できない事態が現実味を帯びたのです。
反発した点は主に2つ。1つは辺野古移設に伴い普天間基地が返還されるという点が条例にはほとんど書かれていないこと。もうひとつは単純な2択という手法です。ちなみに、偶然かも知れませんが、5市の市長はいずれも、日本の国政での第一与党です。
辺野古移設の件は世界一危険といわれる普天間基地の返還です。沖縄県民のほとんどは、「代替施設は県外に」と思うと思います。しかし、本土で受け入れてくれる地域は事実上ありません。ただ、直近2回の沖縄知事選で反対民意を示したにも関わらず、強硬的に工事を進める政府に対し、県民投票で明確な民意を示し、もう一度沖縄県と政府で事態打開につなげる狙いが、今回の県民投票にあるのではないかと思います。
ただ、今回の県民投票の結果いかんでは、普天間基地の固定化につながる懸念が残る可能性もあるでしょう。
ちなみに、沖縄県では2015年度の県民意識調査で辺野古移設の賛否を5択で聞いています。
・「賛成」「どちらかといえば賛成」 26%
・「反対」「どちらかといえば反対」 58%
・「わからない」 15%
投票結果次第では、民意をどうとらえるかで論争が再燃する可能性もありえるかも知れません。注目の投票は今日行われます。