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さて、日本では東京都で4月5日(午後4時時点)に、新たに143人が新型コロナウイルスに感染していることがわかりました。4月4日の118人に続いて2日連続となる100人超えで、1日の感染者数としては最多を更新し、東京都で1000人以上が感染したことになります。まだ、詳細な内訳がわかっていませんが、異常な事態であると思うのは素人からみても明確な事実です。
米国ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の発表によりますと、4月4日夜(日本時間4月5日午前)の時点で全米の感染者は31万人を超え、亡くなった方は8400人を超えました。
世界全体の感染者数は120万人を超え、亡くなった方は約6万5000人に達しており、米国は世界で感染者が最も多く、全体の約25%を占めています。続いてスペインが約12万6000人、イタリアが約12万5000人、ドイツが9万6000人超と、欧州でも影響が深刻化しています。
米国では2月29日にワシントン州で最初に亡くなった方が公表され、それ以降、このウイルスは米国各州に広がり、3月13日には国家非常事態宣言が出され、多数の商店やレストランが閉鎖された。また、さらなるウイルス感染拡大のリスクを最小限にとどめるため、一部の知事や市長は住民に自宅待機を求める都市封鎖(ロックダウン)を発令しました。
もちろん、欧州においても早々と都市封鎖などの対策をしていますが、それでも感染拡大を食い止められていません。
外資を呼び込み、東南アジアのハブとして栄えてきたシンガポールは4月3日までに新型コロナウイルスに約1100人が感染し、5人の方が亡くなっていますが、他国の増加ペースと比べ、拡大を押さえ込んでいるといえます。
世界に先駆けて中国本土に滞在した人の入国を原則として禁止し、水際対策を強化。これは2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行で33人が亡くなった苦い経験を踏まえたとのことです。偽情報やウワサを防止するため、同時に感染者の国籍、年齢、性別、感染者が出た企業名、感染集団(クラスター)についても公表しています。
さらに、シンガポール政府は、「新型コロナの感染を遅らせる唯一の効果的な方法であり、家族を守る最良な方法だ」として、オフィスや学校の閉鎖に踏み切り、大半の民間企業のオフィスは4月7日~5月4日までの約1ヶ月間、閉鎖する措置を決め、民間企業の従業員は全面的に在宅勤務に切り替わります。
1965年の独立以来、経済としては最悪のマイナス成長に陥る可能性はあるものの、苦難な生活よりも、生き延びることを優先した措置だと思います。
さてさて、中国と密接な関係にある台湾。4月3日時点の感染者は約360人、亡くなった方は5人と被害を低く抑えています。
台湾政府は1月に中国国内での感染拡大に迅速に対応し、いち早く中国との人的往来を事実上遮断しました。
さらに、スマートフォンのアプリを利用した方策でマスクの買い占めを防ぐなど、厳格な防疫態勢、マスクの配給システムや積極的な情報公開、さらに中小企業やアーティストなどへの支援策などを行っています。
シンガポールにしても台湾にしても、人口が少なかったり、国土が小さかったりだからできたということでもありません。
たとえば、台湾の行政が有効に行動できたのは、もちろん蔡英文総統、陳建仁副総統、蘇貞昌行政院長(首相)、陳時中衛生福利部長(厚労大臣)や唐鳳IT担当大臣などの素晴らしい人材の存在がいたこともありますが、2003年のSARS危機を経験した結果、必要な法整備がすでに整えられていたこともあります。
日本は2009年の新型インフルエンザ特別措置法を3月に改正して対応するという、危機管理が出来ていなかったとしか思えないお粗末さです。
台湾の政治システムがベストだとは考えていませんが、そもそものシステムが違い、そこで任命される担当大臣に差があるとしか思えません。
行政府(内閣)とは国家の行政運営を司るところです。行政府の中に省庁があり、地方行政と連携します。あらゆる行政活動の主体となり、国民の安全と権利を守り、国民に果たすべき義務の遂行を求めるなどの施策を出します。
立法府(国会)とは国家管理に必要な法律の制定と、行政院がつくる予算の審議、行政活動の監督と会計監査などをするところです。
日本では行政府組閣のときには、基本的に国会議員が入閣します。それは、大臣の過半数については国会議員から選ぶことが憲法で定められているからです。民間人から登用されることもありますが、ほとんどありません。任命の基準は政権与党の派閥や論功行賞が決め手のようなものです。つまり、日本は「立法府の人間が行政府を兼任」していることもあり、近年、問題になっている事案を自由自在に「超法規的解釈」できる立場にあるのです。「正しい監督監査」ができていないのです。
もちろん、日本の議院内閣制と、台湾の総統内閣制をそのまま比較することには無理があります。しかし、今回の新型コロナウイルス対応に対しては、台湾行政府が当たり前のことを当たり前に行える仕組みが完成されており、残念ながら日本政府は対応できていないとしか私の目には映りません。
一方の台湾では国民の直接選挙で選ばれる総統が行政院長(首相)を決め、その行政院長が中心となって閣僚を任命します。そして、最大の特徴は大臣に相当する人は誰ひとり「国会議員」ではないということなのです。行政院長や部長・政務委員(大臣)は国会議員ではないのです。それぞれの「プロフェッショナル」な人が任命されているのです。
たとえば、副総統の陳建仁さんは公衆衛生学の分野では世界トップクラスの米国ジョンズ・ホプキンズ大学公衆衛生大学院で博士号を取得した人物であり、2002年~2003年のSARS危機の際には、行政院衛生署長として活躍した方です。
新型コロナウイルス対策の最前線となる衛生福利部部長(厚労大臣に相当)であり、中央伝染病指揮センターの指揮官の陳時中さんの本業は歯科医師です。歯科医師会全国連合会の理事長、その後、行政院衛生署副署長、総統府国策顧問などを経て、2017年2月に衛生福利部部長に就任しています。
台湾国内におけるマスクの増産体制を作り上げるため、全国の工作機械組合、精密機械センター、マスク生産業者、紡績所、その他研究団体など30以上の企業と国家組織をまとめて、構築に3カ月から半年かかるといわれた60本のマスク製造ラインを、わずか1カ月で完成させたのが、沈栄津経済部部長(経産大臣に相当)です。沈さんは、電気工学やオートメーション化技術を学び、経済部に入省した官僚出身者です。経済・産業行政を担当し、地道にキャリアを積み上げ、経済官僚として培ってきた人脈と経験を今回活かしてきました。
全国のマスクの在庫一覧システムを作り、政府の情報を国民に効率よく伝えるシステムを担当したのが、唐鳳政務委員(無任所大臣、IT担当大臣)です。8歳からコンピュータープログラミングに興味を持ち、ずば抜けて知能が高ったため、学校教育になじめずに14歳で中学校を中退、高校にも大学にも進学しませんでしたが、独学でプログラミングを学び、16歳で液晶ディスプレイやプロジェクターの世界的大手の台湾明基公司(BenQ)の顧問になるなど、IT関連企業の要職を経験しています。その後、行政院国家発展委員会のバーチャルワールド発展法規調整計画の顧問に就任し、その後、行政院政務委員(内閣無任所大臣)に任命されています。
つまり、担当分野については完全なプロフェッショナルな人が任命されていることが、有効な決断と行動によって今回の対応があったのだとも思えます。少なくても、パソコンを触ったことのないIT担当大臣は台湾では任命されないのです。日本も有能で実力のある人材であれば、学歴も性別も経歴も経験も関係なく登用するのが、建前になっているのですが、現実はそうでもありません。会社の中でも同じような組織構造になっているため、今回のような非常時に機能不全に陥るのは不思議と納得できてしまいます。
さてさて、在日米国大使館は4月3日に、「日本政府がウイルスの検査を広範に行わないと決めたことにより、新型コロナウイルスの感染率を正確に把握することが難しくなっている」「数週間後に日本の医療システムが今までのように機能しているかを予測するのは難しい」とし、「持病をかかえる米国市民がこれまで日本で受けてきた治療を受けられなくなる恐れがある」と警告して、日本に滞在中の米国人に対し直ちに帰国するよう呼びかけました。私は、この米国政府の対応については、日本政府の対応に信用・信頼ができないということの明確なメッセージだと受け止めました。
しかし、感染拡大が抑えきれない米国政府は、米国政府なりに国民を守ることへの明確なメッセージを発信しています。シンガポールにしても台湾にしても、対策が完璧でベストだとは思ってはいませんが、国民を守ることを優先して動いています。
日本も、「国民を守れる国」であって、私たちは「安心して守られる国」であることを信じていたい・・・のですが。