2018年は将棋界で多くの出来事があり、中学生棋士・藤井聡太七段による朝日杯将棋オープン優勝、タイトル戦に昇格した叡王戦では高見泰地叡王が初代タイトルを取得し、棋聖戦と王位戦では豊島将之二冠(棋聖・王位)が悲願のタイトルを奪取しました。王座戦でプリンス・斎藤慎太郎王座が頂点に立っており、年末の竜王戦で広瀬章人竜王に敗れた羽生善治九段が、ついに保持するタイトルを失い、「27年ぶりの無冠転落」は一大ニュースとなり、将棋界は新しい時代への転換点となったと思います。
2019年は既にニュースでも取り上げられているように、藤井七段に注目が集まることでしょう。
タイトル獲得までは時間の問題だけだと思いますが、屋敷伸之九段のもつ史上最年少タイトル獲得記録(18歳6ヶ月)が期待されるところです。期限は2020年の年末に決着が予想される竜王戦までに奪取すれば年少記録の更新となりますが、それまでに出られる可能性があるタイトル戦は2019年の棋聖戦、王座戦、竜王戦と2020年の王将戦、棋王戦、叡王戦、棋聖戦、王位戦、王座戦、竜王戦だけです。
ただ、2018年に本戦出場まであと1勝に迫った棋聖戦、そして2018年度のベスト4によって本戦シードとなる王座戦については、タイトルに手が届く位置にいると言えると思います。タイトルを獲得したならば、また、日本中で大騒ぎとなることでしょう。
そして、現在進行形でデビュー以来連勝が続く順位戦です。現在所属するC級1組では、師匠の杉本昌隆七段ともども無敗街道を走っていますが、そこに立ちはだかるのが、やはりC級1組で全勝の近藤誠也五段です。2017年の竜王戦では藤井七段にデビュー19連勝目を献上してしまった近藤五段がリベンジを狙っていることは間違いないでしょう。2月5日に行われるC級1組の藤井七段 vs. 近藤五段は注目カードでしょう。
さて、2019年のタイトル戦は現在決まっているのは次の対戦です。
1月 王将戦七番勝負(69期から「大阪王将杯王将戦」へ名称が変更)
久保利明王将 vs. 渡辺明棋王
2月 棋王戦五番勝負
渡辺明棋王 vs. 広瀬章人竜王
いきなりのタイトル保持者同士の対戦です。中でも現在も継続中の14年連続タイトル保持という記録の持ち主の渡辺明棋王の二冠復帰なるかでしょう。渡辺棋王は2017年度に不調に陥り、竜王失冠やA級陥落となりました。しかし、2017年度末に棋王を防衛してからは復活の兆しを見せ、王座戦で挑戦者決定戦に進出すると、JT杯日本シリーズでは4年ぶりに優勝。B級1組順位戦でも圧巻の9連勝で年明けを待たずにA級復帰を決めました。ずるずると負け続けて、力が落ちたわけではないので、一時的なスランプだったと思われます。
対する久保王将は、順位戦7位というように今一つ調子が上がっていないのが心配です。現在のタイトル保持者でただ一人だけの40代棋士であり、唯一無二ともいうべき振り飛車党ということもあり、ファンの声援を受けて防衛戦に臨みます。
棋王戦の挑戦者である広瀬竜王は、現在一番強いのではないかと思っている棋士です。羽生九段から竜王位を奪った現在の状態のまま、二冠獲得を狙っているでしょう。
そして、やはり一番の注目は羽生善治九段の復権です。4月から始まる名人戦七番勝負の挑戦権を得られるかどうかがポイントでしょう。タイトル戦から離れてしまいますと、なかなか復権は難しいものになります。よって、タイトル戦に出続けることは大事なことだと思います(プロレスと同じようなものです・・・ん?)。
名人への挑戦権を決めるA級順位戦はここまで(2019年1月12日時点)6勝1敗で、豊島九段、広瀬竜王と6勝1敗で3人がトップにつけており、1月31日には豊島九段と直接対戦も控えています。また、3月1日には、昨年末に竜王位を奪われた広瀬竜王との対戦もあります。
この2戦に勝ってこそ、復権への道のりが開けたといってもいいでしょう。