我が中日ドラゴンズの応援歌に「不適切なフレーズ」があるとして、ドラゴンズ私設応援団の公式ツイッターで2019年7月1日、「当団体で使用している『サウスポー』について、チームより不適切なフレーズがあるというご指摘を受けました。この件について球団と協議した結果、当面の間『サウスポー』の使用は自粛させて頂くこととなりました」と発表がありました。
サウスポーは、チャンスの際に歌われるチャンステーマ1で、応援団が設立された2014年から使われています。聞いて分かるとおり、プロ野球だけでなく、高校野球などでも使用されている、ピンクレディーの「サウスポー」で、応援歌の定番にもなっている曲です。
私設応援団はどこが不適切なフレーズなのか明らかにしてはいませんが、球団のイベント推進部は、「歌詞の『お前が』について、『選手にお前というのはどうなのか?』『子どもも多く観戦する中で、そういう表現はいかがなものか?』という意見を頂いたため、応援団と協議しました」とコメントしています。
また、イベント推進部側は、「他球団や他の応援歌の中に『お前』という文言が入っている例は多くない。もちろん『サウスポー』を無くしたいという意図はなく、歌詞の変更も検討している」とコメントしています。
ざっと調べたところ、プロ野球の他球団の応援歌の歌詞に「お前」というフレーズが出てくるものがあります。高校野球の応援の中にも「お前」は出てきたりします。それに、サザンオールスターズの「チャコの海岸物語」などのヒット曲にも「おまえ」という歌詞が出てきます。それらについては、どうなのでしょうね。
さて、昨年のことですが、ケンドーコバヤシさんと、千原ジュニアさんがTVで、吉本興業の新入社員が「職場で『お前』と呼ばれた」ことを理由に退職した話をしたことがありました。この社員は、「親にも『お前』なんて言われたことない」「『お前』なんて呼ばれ方する職場で働けない」と上司に訴えたといいます。
ジュニアさんは「悪いけど吉本には向いてない」、ケンドーコバヤシさんは「世も末」と言っていました。また、ネット上では「辞めるほどではない」「新卒の時『てめぇ』って言われてたよ」「不愉快に感じたのなら立派なパワハラ」「上司でもお前呼ばわりされる筋合いはない」といった意見が上がったりしました。
ちなみに、この件で弁護士は法的には問題ないと考えられるとコメントしています。
Q:職場で、上司が部下に対して「お前」呼ばわりすることはパワハラでしょうか。
A:昔ながらの企業や、いわゆる体育会系の会社などでは、男女問わず「お前」と呼ばれることもあるかと思います。会社に入るまで「お前」と呼ばれたことがない人からすれば、もしかしたら「軽んじられている」と感じることもあるかも知れません。しかし、単に「お前」と呼ばれたからといって、名誉が侵害されたり、精神を病んでしまったりすることは基本的にないでしょう。よって、「お前」と呼ぶこと自体が違法なパワハラ行為だと評価されることはないと言えます。むしろ、「お前」と呼んだ部下に対し、続けてどのような言葉を投げかけたのか、また、どのような場所でその言葉を発したのかという点が、パワハラに該当するかどうかを決することになると言えます。
とのことです。
だから、良いとか、悪いとかでもないのですが、そもそも「お前」の語源は、「「前」に接頭語の「御(お)」が付いた語。 元々、お前は神仏や貴人の前を敬っていう語で、現在でも「みまえ(御前)」や「おんまえ(御前)」は、神仏の前をいう語として用いられている」という、 他人を見下した意味ではないのです。ただ、近年は他人を”やや”見下して呼ぶ意味もあるようです。
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お‐まえ〔‐まへ〕【▽御前】の意味
出典:デジタル大辞泉(小学館)
[名]《「おおまえ(大前)」の音変化で、神仏・貴人の前を敬っていう。転じて、間接的に人物を表し、貴人の敬称となる》
1 神仏・貴人のおん前。おそば近く。みまえ。ごぜん。「主君のお前へ進み出る」
2 貴人を間接にさして敬意を表す言い方。「…のおまえ」の形でも用いる。
「かけまくもかしこき―をはじめ奉りて」〈枕・二四〉
「宮の―の、うち笑ませ給へる、いとをかし」〈枕・二七八〉
[代]《古くは目上の人に対して用いたが、近世末期からしだいに同輩以下に用いるようになった》二人称の人代名詞。
1 親しい相手に対して、または同輩以下をやや見下して呼ぶ語。「お前とおれの仲じゃあないか」
2 近世前期まで男女ともに目上の人に用いた敬称。あなたさま。
「私がせがれにちゃうど―ほどながござれども」〈浄・阿波鳴渡〉
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今後についてイベント推進部は「たくさんのファンの皆さんに浸透している曲で、曲が悪いわけではないので、歌詞の一部変更を検討しています。ですが、シーズン中いきなり変更するというのは難しいところがあり、当面の間自粛という結論になりました」とコメントしています。
機関紙の中日スポーツによると、与田剛監督が言い出したっぽいのですが。
言葉は時代によって、使い方や意味が変わってくるのは仕方がないことだと思います。ただ、あまりにも神経質になりすぎて、息苦しい世の中になってしまうことも、どうかなと思います。