口に蜜あり、腹に剣あり 俚諺
【どこにでも必ずいる ~ 信用の置けない人物の定番 の巻】
肥後の虎、加藤清正はある時
仲間の陰口ばかりを言っていた家臣を
討ち果たし、すぐさま家臣たちを集めていわく。
「陰口を言いたい、と思ったら
大将の噂(うわさ)をせよ。
友を悪くいうのは、
主君に損を掛けて不忠である。
しかし、大将のことを言えば
良きにつけ、悪しきにつけ
一つの戒めになるであろう」
◇
口先のオベンチャラだけは上手に述べながら
ココロの中では人のコマタをすくい
陥れようと考えている者がいる。
いわゆる世に多くある
奸悪(かんあく)、侫弁(ねいべん)の輩のこと。
唐の玄宗皇帝の代に
李林甫という大臣があった。
この男、侫奸な小人物で
人望や位の高い者や
帝の信任が厚い者に対しては
アノ手コノ手で陥れようとした。
表面(うわべ)では厚意を持っているフリで
ペコペコしたり、お追従をいったりしたが
陰に回れば、その人物の落ち度や失敗ばかりを捜し
なきものにしようと企んだ。
当時の人たちは
「口に蜜あり、腹に剣あり」
とウワサしたという。
新聞もテレビもない時代の世論は
ココロの眼で形成されたのである。