石川や 浜の真砂はつくるとも
世に盗人の種はつきまじ
――石川五右衛門
天(あめ)が下(した)古き例(ためし)は しら波の
身にぞ鼠の現れにけり
――鼠小僧
しばらくも望みなき世のあらむより
渡しを急ぎ三途の川守
――高橋お伝
【泥坊さまざま 人生いろいろ ~ 盗人だって咲き乱れるの ~ の巻】
■立場変われば……
ある皇帝いわく
「お前のようなコソ泥坊だから罰を受ける。
俺のように国を盗むものは帝(みかど)と呼ばれるのだ」
◇
■商人と盗人、丁々発止の泥仕合
子分を何人か外で待たせて
大きな料亭に入ってゆく盗人のお頭。
寝ている主人の頬へピタリ抜き身を当てて
「こりゃ、おやじ。起きろ」
主「へい」
泥「カネを出せ」
主「あいにく ございません」
泥「ウソを付くな。今日の無尽で百両あたったはずだ」
主「では仕方ございません」
百両、盗られる。
ところが泥坊、腹が減っていたとみえ
「おい亭主、てめえのところは料理屋だな」
主「左様で」
泥「何か食うモノがあるだろう」
主「あいにくシケで、何にもございません。
『コイこく』と『コイの洗い』だけで」
泥「構わねえから、持ってこい」
主「でも御代をいただきませんと」
泥「代は払ってやる。早く持ってこい」
というワケで、しこたま食べて
泥「代はいくらだ」
主「へい、ちょうど百両でございます」
このあたり律儀なもので
約束だからと仕方なく
取り上げたばかりの百両を
ポンと払って
外に出ようとしたところ
子分が
「親分、なかの首尾は?」
と問えば
「シーッ、コイが高いぞ!」