【今となってはむかしのことだが ~ ぼうやよいこだねんねしな ~ 夫の無念 妻の願い そのゆく先は? の巻】
むかしむかし、ある県で
巡査の採用試験に「美人局(つつもたせ)」
の問題を出したところ
「電話交換局のこと」と答えた者が
何人もいた、という。
夫のある女が夫婦馴れ合いにして
財産や地位のある者と怪しげなことに至り
その男を脅かして金品をゆすり取る
などということが まれにあるらしい。
つつは「筒」のことだから
由来を書くのは
さすがに はばかられる。
◇
此家の内に、つつもたせあり (江戸小噺)
あるヒトが、遠方にまゐるとて
妻にいへるは
「われら留守には
身持いよいよ堅く持つべし」
といいきかせ、
旅装束をして出て行きけるが
しばらくありて、また立ちかへり
「先ほどもいふ通り、身持しごく堅く持つべし
それゆゑ大事の札を門口に張り置くなり
われら帰るまで、札かならずまくるべからず」
とて、つひに行けり。
妻もあまり念入りすぎる事と思ひ
亭主の張り置きし札をよみてみれば
「此家の内に、つつもたせあり」