【対局相手の○○がウルサイ場合 ~ あなたならどうする? あなたなら ~ 我慢して泣き寝入り? やかましいとはっきり言う? それとも…… の巻】
その舞台は、第5期棋聖決定七番勝負第1局。
富山県高岡市の北陸文化ホテルで1981(昭和56)年1月13日。
前評判は挑戦者有利である。
ファン投票は有効投票6899通のうち
「挑戦者の大竹英雄勝ち」が3772通で約55%だが、
プロの予想はもっと差が開いていた。
しかし予想に反して藤沢秀行棋聖が4-0のストレート勝ち。
この防衛により棋聖5連覇を成し遂げることに成功した。
名誉棋聖を襲名する。
第1局で「扇子がうるさい」と、立会人を通じカマされた大竹十段。
2日目の午後4時17分、166手で投了するという惨敗を喫し、
その後も全て中押しで負け続け、タイトル奪取はならなかった。
大竹は局後に“ショック”だった、と語っている。
しかし、負かされたのではなく、
自分が負けたのだと思っている、
とも語っていた。
◇
わたしは第1局、しょっぱなの扇子事件が
このシリーズのハイライトではなかったか
と、にらんでいる。
所作・マナーが心理的影響を与えないわけがない。
やった方、やられた方。
どちらも後味が悪い。
だが、そもそも第一当事者がやらかさなければ
こういう風にはならないのである。
大竹英雄九段(1942年~) 名誉碁聖。碁聖6連覇、名人4期、世界囲碁選手権富士通杯優勝など。厚く味のよい形を好む本格的な棋風で「大竹美学」と呼ばれる。NHK杯優勝5回などで「早碁の神様」、名人挑戦手合通算12回出場などで「名人戦男」などの異名も。日本棋院理事長、全日本囲碁連合会長も務めた。