お気楽海外生活 → 帰国して子育て中

イギリスボランティア留学&アフリカオーバーランドツアーの後はアメリカ移住。今は日本で子育て中です。

予想どおりに不合理

2024-02-18 14:25:11 | 映画とか本とか
行動経済学者が明かす「あなた子それを選ぶわけ」、というのが副題。
15章からなる400頁程の本です。
1章30頁くらいなので、のんびり読みました。
途中で、人間の行動は「不合理」だけど、それは「予想」出来るとわかってくる。
それでこの題名なのね!とにやっとしちゃった。


1章からいきなりおもしろい。
人間は比較したがりで、こっちのほうがいいなと思って選びたい。
それをよく分かったうえで選択肢を恣意的に設定すると、
簡単にその選択を偏らせることができる。
それをうまく操るのがマーケティングなんだね。
でも、私はその3つの選択肢ならWEB版だけの購読を選ぶよ。
何故ならその辺りの自分なりの価値観は確立してるから。

2章はアンカリングの話。
初めて聞いたけど、それ分かる!そうそう!と納得の連続。
最初の体験とか経験が、その後はベースになるよね。
でも、社会保障番号の下2桁すらアンカーになるのにはびっくり。
人間は理論的に合理的に考えてるつもりでも、そんなことないのか。
そんなもんだと理解して、疑問を持つのが大事なのかな。
恣意の一貫性という言葉がなんか、かっこいい(笑)

3章は無料の魔力。
2円と1円の差は小さいけど、1円と無料の差はびっくりするほど大きい。
ついつい無料を求めちゃうのは私が愚かなわけではなく、人間の習性らしい。
そんなに違うの?と、かなりの驚きでした。

4章は社会規範と市場規範の話。
5ドルもらったら5ドル分働けばいいし、50セントなら50セント分。
でも、報酬なしだったら?
人間性と能力を直に見られる気がする。
それを言葉で表したのが「社会規範」で、金銭に換算するのか市場規範。

5章は2つの規範を掘り下げていきます。
社会規範で動いていたところに市場規範を取り入れるとモラルが崩壊し、
これは困ったと市場規範を取りやめても元には戻らず、
かつてあった社会規範は失われる。
そんなことが保育園のお迎えに遅刻を題材に説明されてました。

「政策立案者は社会規範を弱体化させるおそれのある市場規範を
いたずらに導入すべきではない」

アメリカは大統領選の予備選真っ最中。
トランプさんの言ってることって、まさにこれなのかもと思いました。
社会規範で動いてたとこに、金を払え!と市場規範を当てはめる。
そうやって失われたものは、彼が去った後も元には戻らない。
そんなことを思いました。

6章は性的興奮を例に、大きな感情に支配された自分と冷静な自分について。
冷静な時に、感情的になった自分がどう判断するか予想するのは無理。
この大きな隔たりを埋める、その方法を身につける、
人生にはそれが不可欠だというお話でした。

7章は先延ばしと自制心について。
かなり前の本なのでデータが古いですが、アメリカ人の貯蓄率低すぎ!
最近のニュースでも、米国のクレカ支払い残高が過去最高だったし、
消費者主義の傾向は変わらないんだろうな。
学生のレポート提出実験はおろしろかったし、考えさせられた。
3つのレポートの締切は①学期末②自分で設定する③教師が設定する。
成績は③>②>①で、これって子育てにも関係ある?
自主性に任せすぎてるかしら、と思ってしまった。

ついつい後にする、分っていても誘惑に負けてしまう。
浪費ブログについてら書いたあとに、書かれた言葉。
「誘惑の瞬間に消費を阻止する方法であって、
起きてしまったあとで不満を言う方法ではない」
まさにその通り!それが出来れば苦労はない。
自制クレジットカードのアイデアはおもしろかった。

この章では作者が輸血かれC型肝炎にかかったことが書かれている。
驚くのはその治療法で、インターフェロンを自己注射してたって!
でも、調べてみたら日本でもやってたらしい。
知らなかった。

8章は所有意識について。
持っている物の価値を高く見積もってしまう。
所有意識が芽生えると、失う恐怖が大きくなる。
一度手にしたものを失うことは耐え難い。

9章は可能性を閉じること、失うことへの恐怖。
たとえゲームでも、選択肢を完全に失うのは抵抗があるらしい。
最終的には損をしても、選択肢を残すことに尽力する。

10章は予測の効果。
ブランドとか、プロの演奏、高級なレストランへの期待値が、
体験や感覚、満足感に影響するのは分かる。
ビールに酢をいれる実験も、そうなりそうだと思う。
でも、プライミングの影響は信じられなかった。
そんなことある!?と衝撃を受けた。

アメリカでは、アジア系アメリカ人は数学と科学が得意。
女性は数学が苦手とういうレッテルがあるらしい。
女学生に対して、性別や人種に関わる質問をする。
これによって、彼女たちは性別や人種を意識するようになる。
質問の後数学の試験を受けてもらうと、
女性であることを意識させる質問を受けたグループは成績が悪く、
アジア系であると意識させる質問を受けたグループ成績が良かった。
そんなことある?ないでしょ!!!と、受け入れがたい感覚が強い。

乱文構成課題でプライミングすることがよくある。
乱暴な単語が多く含まれていたグループは、
丁寧にな言葉が含まれていたグループに比べて、
辛抱強さが足りなくなっていたとか。
高齢者を意識させる単語が含まれていたグループは、
そうでないグループに比べて歩く速度が遅かっくなったとか。
無意識にそんなに影響受けるんだ。
衝撃的でした。

11章は価格の力。
これまた予想以上の効果。
プラセボ効果は知ってるけど、価格による影響がこんなに大きいとは。
同じ薬を定価で買った人と、セール価格で買った人。
効果に満足したのは、定価で買った人でした。

無用な手術に関する実験もおもしろかったです。
この手術、本当に効果があるの?といったことを検証する場合。
倫理の観点から実施するのは難しい。
でも、検証しないまま無用な手術をやり続けることによって、
ある意味犠牲者を出し続けることも倫理的に問題がある。
むずかしいね。

12章は不信の和。
お互い信頼しあって共同作業を行う場合と、信頼がない場合。
共同作業を行うのに不都合があるどころか、共同作業自体成り立たなくなる。
人間社会は、こういうことはやらないよね、やるよね、
という見えない信頼によって成り立っている部分がある。
それを失うことのデメリットをわかっていれば、
会社や政府はこんなことしないんじゃない?といったお話。
なんか、4章以降で話されていた市場規範と社会規範に通ずるものがあった。

13章と14章は品性について。
現金にたいして働く自制心が、それ以外のことにはゆるゆるになり、
不正を働くハードルがぐんと下がるというお話。
会社からボールペンを持って帰ることと、
ボールペンの代金に相当する現金を持って帰ること。
この2つの違いの大きなこと!
現金から離れるごとに不正は働きやすくなる。
これからのキャッシュレス社会、自分たちのこの特性を理解することは重要。

15章はビールと無料のランチ。
無料のランチの話はよく分からなかったけど、ビールの話はおもしろかった。
テーブルで順番にオーダーを取ると品物がばらけるけど、
オーダーを書いてもらう(お互いに何を頼んだかわからない)と、
注文はばらけるというお話。
そして後者の方が注文者の満足度も高い。
ちなみに、ばらけるのではなく同じものを頼む場合もあって、
これはその地域の文化的背景によるようです。
アメリカだとばらけて、香港だと同じものに偏ったらしい。


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