第八十五首

夜もすがら 物思ふころは 明けやらで
閨のひまさへ つれなかりけり
俊恵法師
(1113-?) 父は源俊頼。東大寺の僧で、平安末期の代表歌人として知られる。鴨長明は弟子。
部位 恋 出典 千載集
主題
訪れて来ない男のつれなさを恨む心
歌意
夜通し、まだ訪れぬお慕いするあの方のことを思い悩むときは、夜はなかなか明けないで、あの方を待つはずの寝間の戸のすきまさえ、私の気持ちを分かってはくれないものだ。
俊恵のもとに集まっていた歌人たちのグループ歌林苑での歌合の歌で、女の立場となって、恨む恋の風情をよみあげたもの。
『千載集』恋二、七六五に「恋の歌とてよめる」として、寂蓮法師の歌があり、つづいて、「俊恵法師」として見える。
東大寺の僧であったが、後、京都白河に歌林苑を営み、しばしば歌合や歌会を催し、貴賤僧俗の歌人を集め、和歌政所とも言われたという。
『詞花集』以下に八十四首入集。