第九十六首
花さそふ 嵐の庭の 雪ならで
ふりゆくものは わが身なりけり
藤原公経 (1171-1244) 内大臣実宗の子で、西園寺家を興す。太政大臣になった後、63歳にして出家した。
部位 雑 出典 新勅撰集
主題
桜の落花に寄せて述べる自身の老いの嘆き
歌意
桜を誘って散らす激しい風が吹く庭。そこに散り敷くのは雪かと思う。しかしふる(降る)のは雪ではなく、実は古びていく私自身なのだ。
花を誘って、嵐が庭一面をまっ白にしているが
落花をみての即詠だが、落花そのものをよむのではなく、眼前の「降りゆく」落花の光景から、「古りゆく」身へと掛詞を軸として想を展開させて、老いのなげきを述懐した歌。
源頼朝の姪を妻にし、娘は関白道家に嫁がせ、孫娘は後堀河天皇の中宮にするといった婚姻政策で、権勢をふるいました。西園寺家の栄える基礎を築いた。
定家の妻は、公経(きんつね)の姉で、公経およびその一家から、定家は大きな庇護をうけた。
『新古今集』以下に百十二首入集。