第九十九首
人もをし 人も恨めし あぢきなく
世を思ふゆゑに 物思ふ身は
後鳥羽院
(1180-1239) 高倉天皇の皇子。承久の乱で鎌倉幕府打倒を図るが失敗。配流地・隠岐で没した。
部位 雑 出典 続後撰集
主題
愛憎が交錯し、思い悩みつつ世に生きる身の嘆き
歌意
ある時は人々を愛しく思い、またある時は恨めしいとも思う。この世はどうにかならないものだろうが、それゆえに物思いをする私であるよ。
「をし」は「愛し」いとしく思う。「あぢきなく」 つまらなく、この世を思うところから、いろいろともの思いをしている自分は。
後鳥羽院は第八十二代天皇で、五歳で即位し、十九歳で譲位し上皇となりました。時に不興をかいつつ、院を心情から慕っていた定家にとって、讃岐配流後の境遇はあまりにいたましく、この述懐歌がえらばれたと思われる。
御子左家風を指示して、新古今歌風を形成させ、和歌所を復興、『新古今集』撰進を親裁した。御集に『後鳥羽院御集』。『新古今集』以下に二百四十八首入集。