『両性のための楽園の門』ウィリアム・ブレイク 1
ウィリアム・ブレイク(1757年~1827年)詩人・画家は、1793年に刊行した『子供たちのための楽園の門』を1818年頃、『両性のための楽園の門』と改題して再販しました。
根本は変わらないにしても、意想の体系化の形やその中の関連には漸進的に大きい増幅が見られ、象徴も大体一定した構造や機能をもつ複雑な構成に組上げられることになった結果、この思弁体系に適合するような言葉で画の意味を言い添えようとしたのが、再版の中の増補の意図であったろうと思われる。
『ブレイク研究』熊代荘歩著より。
それでは、『ブレイク研究・人と詩と絵』熊代荘歩著より。ウィリアム・ブレイク『両性のための楽園の門』の紹介です。
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『両性のための楽園の門』
・それぞれの悪の相互のゆるし これが楽園の門である。
<扉絵>
人とは何か
・生命が陥った錯誤過程の第一歩である。
太陽の光は、それが放たれる時、それを見る器官に依存する。
1
私は木の下に彼を見出した
わが永遠の人は眠りはて、
彼の闇から女性がたちあらわれ
彼女は樹下に マンラゲ草として
私を見出し ヴェエルの中に私を隠した
・誤った過程の方式の一つは「性」という事である。此処ではそれが母と、母による「生産」という形で表わされている。
エロヒムが人を造ったとしても、其処から発展するはずであった過程は必ずしも望ましいものでなかった。女性は性が意味する錯誤の増殖を推進し、そうした錯誤に完全に適合するものとして兆しはじめたサタン的理知が、生命をいよいよ深い迷妄の中に誘い入れる。
2
「水」汝は涙で彼をうるおす
・四つの基本元素の一つ。水は此処では涙すなわち悲哀の標示となる。他の多くの場合、はかない無知というものを意味している。
3
「地」彼は苦闘して生命に進み入る
・地は此処では、人間に課せられた試練の重圧のように用いられている。生命が錯誤に圧せられて苦しむ所である。
4
「気」雲なす疑惑と理知の心労に拠り
・大気あるいは風は、此処では空虚な理念、そこから起こる疑惑に当てられている。
5
「火」はてない闘争に終るもの
・盲目の情熱で、これが誤って働くと、闘争や混乱をひき起こすだけである。
盾と鎗もち火中に盲い、二角の思慮、偶蹄の虚構、自家撞着である疑惑の中に、善悪の根源である理知的真実という、奇怪な男女両性者としてわれらは立つ。
6
ついに孵化するばかりに熟して彼は殻を破る
・ブレイクは霊性の働きを遮って卵形に地をおおっている曇りを「大地卵」と呼ぶ。図の小児が翼をもっているのは錯誤の中の霊性を意味しており、これが殻を破っているのは、地上にも霊性の出発はあり得ることを意味している。
・次回に続く・・・・。