
福島第一原発の事故に関しフランスの放射線保護原子力安全研究所(IRSN)は17日、日本が48時間以内に何らかの有効な手段を講じなければ、チェルノブイリを超える悲劇が起きかねないとの見解を示した。
冷却機能を失い、大量の放射性物質放出の恐れがある東京電力福島第一原発3号機に対して自衛隊は17日、ヘリコプターから計30トンを放水したが、効果については評価は難しいとしている。その後行われた自衛隊、警視庁による車両からの放水も、放射線濃度が高いため十分に近づけず、計画通りの冷却には至らなかった。
これを受けて各国の原子力安全機構からは、日本政府の対応や国民への警告が不十分として次々に憂慮の声が上がっている。
アメリカの原子力規制委員会は「爆発等の状況から見るに、使用済み燃料プールの水が残っていない可能性もある。放射能レベルが極めて高くなった場合、更なる是正措置を取ることは困難」と述べ、燃料の再臨界によるメルトダウンの可能性を指摘。イギリス外務省も「状況は明らかに悪化している」とコメントした。
またフランスの放射線保護原子力安全研究所は、「これまでの対策がほぼ失敗していることを考えると悲観的にならざるを得ず、危険は大きいと考えている。最悪の場合チェルノブイリを超える事態になる」としたうえで、「しかしできることはまだある。これから48時間の対応が非常に重要」と述べた。
1986年4月に旧ソビエト連邦(現ウクライナ)で起きたチェルノブイリ原子力発電所事故は死者数4000人とされているが、被ばくと癌や白血病の直接の因果関係は証明しづらく、長期的に見ると実際の死者数は数十万人とも言われる。しかし最大の問題はパニックや機密漏えいを恐れた政府がただちに事故を公表せず、近隣住民退避も行わなかったことにある。
17日の放水には一定効果があったとの見方もあり、そもそもチェルノブイリと福島原発の事故は状況がまったく異なるとする専門家の意見もある。数々の情報が錯綜するが、噂に翻弄されず正確な情報収集、判断を行うことが重要だ。同時に政府にも迅速な対応、的確な情報公開を望みたい。