こちらが震災被害に遭っているうちに,海の向こうでは戦争が始まっていた。
以前カダフィ政権崩壊は時間の問題・・・などと述べた私の目算は見事に外れ,潤沢なオイルマネーにものを言わせたリビア政府軍が反抗に転じた。
反政府勢力は正規軍ではないので,空軍兵力や戦車は持たない。
重火器だってどうか分からないし,おそらく政府軍から反政府軍に転じた者たちの武器や政府軍から分捕った武器を使用しているのだろう(予想通りAK47を持っている)。
そこへもってカダフィが戦闘機や戦車で攻撃をかけたので,首都トリポリ近郊まで迫り,優勢だったはずがかなり押し戻された感じとなったようだ。
何でも専用の人材派遣会社から送られてくるアフリカ各地出身の傭兵たちが,カダフィの政府軍を支えているらしく,日当は日本円にして10数万とも30万ともいうらしい。
ベンガジやトプルクといった東部の反政府勢力の拠点が空爆を受けており,泥沼化の様相を呈してきた。
そこで停戦が協定されたが,カダフィは一向に攻撃を止めない。
多国籍軍が攻撃を開始したのは,そうした時期だったと思われる。
多国籍軍の中で真っ先に先端を開いたのは,どうやらフランスだったようだ。
コルシカ島のソレンザラ基地から最新鋭とも言うべきラファールCとミラージュ2000戦闘機を飛ばして,ベンガジに迫る政府軍を空爆。
軍港トゥーロンからは,原子力空母シャルル・ドゴールが出港した。
イタリアは,シシリー島のリゾート地トラーパニからF16とユーロファイタータイフーンを発進させ,英国も本土からトーネード攻撃機を発進させ,空中給油しつつリビアを空爆した。
これはフォークランド紛争で,アブロ・バルカン爆撃機が渡洋爆撃して以来の長距離記録であるらしい。
ノルウェーはF16を出撃させたという。
アメリカは本土からB2爆撃機を飛ばしたほか,地中海上の駆逐艦からトマホークをトリポリに打ち込んだ。
かつての湾岸戦争やイラク戦争で見せたような積極的な攻撃姿勢はなりを潜めている。
「オデッセイ(冒険者)の夜明け」作戦とはまた格好良い名前であり,多国籍軍の来襲をトリポリ市民は歓呼で迎えたようだが,勿論多国籍軍の目的は勿論リビアの解放と民主化・・・だけではなかろう。
1986年のリビア空爆以来,カダフィはフランスを初めとする西欧諸国に歩み寄った。
西欧諸国もリビアにはお宝が埋蔵されているものだから,異論はない。
かつてF1にも供給していた英国のBPなる石油会社は,リビアに油井を持っているという。
だから,西欧諸国は躍起になってカダフィを叩こうとする。
国益がすべてだから・・・。
では世界の憲兵面をするアメリカが,いまいち消極的なのは何故か。
周知のようにカダフィ暗殺を目論んだだけに,西欧がリビアと融和した時期にアメリカは出遅れた。
西欧諸国としては,地中海は自分らの領分という意識があるだろうし,アメリカとしてもリビアはさほどおいしい市場ではないということなのだろう。
だから多国籍軍の指揮権をNATOが執るか否かで,各国の思惑が噛み合わずにいるのではないだろうか・・・。
加えて,米第7艦隊は福島原発事故関連で太平洋上にある。
人道支援と戦争と,オバマとしてもどちらに重きを置くかという思惑も有ろう・・・。
カダフィは,典型的なアラブの部族長気質なのだろう。
部族間の抗争から成り上がり,クーデターで頂点に立ったというのは,多くの部族が争うアラブでは当然のことであり,白人を敵視するのもまた当然なのだろう。
そして,自分に逆らう自国民を排除するにも何の抵抗感は無いと思われる。
さて,多国籍軍が来なければ,リビアは独裁者による部族民の集まりの強権の国。
来たら来たで,民主化の名の下に西欧諸国の利権が最優先されよう・・・。
どちらが良いのか,そんな単純に私如きが言える問題では無かろう。
せめて,今回の紛争が独裁者を倒してリビアに民主化を・・・という単純な美名だけではないことを認識しておくべき・・・と思う・・・。
それにしても,単純きわまりない思考の私なんか,イスラエルは旧西側の武器を使用し,アラブは旧東側の・・・と思い込んでいた節があるが,上記の通り冷戦終結後リビアはフランスと歩み寄って,武器の供給も受けた。
だから使用する戦闘機もMig-21MFやSu-22M3といった旧世代ソ連機の他に,ミラージュF1やラファールCも持っている。
フランス機同士の空戦が行われるとしたら,皮肉以外の何者でもなかろう・・・。
そういえば,自国民を攻撃するのを拒否してマルタへ亡命したリビア空軍のパイロットが乗っていたのは,ミラージュF1だった。
このようにブログを更新されていることこそご無事の証しと、すこしは気が紛れる思いです。
チュニジアとエジプトが沸騰したとき、カダフィ政権は大丈夫なのかと思ったもので、アルジャジーラの英語放送を毎晩視聴していたものですが、今回の地震ですべて吹っ飛んでどうなったものかと思っていたら、いつの間にやら国連決議が出たり、空爆が始まっていたりでしたね。
SASが反政府勢力と接触したというニュースがあったから、イギリスは反カダフィの立場を取ったのかなと思っていたとおりの結果になりました。
ただ、カダフィが押さえていた部族対立が今後どうなるかを考えると、本当に現政権を倒して好いのかどうか迷います。
ところで、SASっていうと、田宮の例のジープとターバンのを思い出しますね(笑)。
亀レス,済みません。
年度末で多忙な上に,食糧とガソリン確保にかけずり回っています・・・。
私もチュニジアとエジプトの政権交代劇の時に,隣国のリビアは?カダフィは?・・・と思ったら,懸念通りでしたね。
しかし,往生際が悪いというか,革命の理念はどこへ行ったのでしょう・・・。
カダフィ後のリビアの再建こそが,最大の懸案でしょうね・・・。
SAS・・・。
30数年前のものを1つ死蔵しています・・・。
フォードGPAってのもあります・・・(笑)