koshiのお部屋2

万年三歳児koshiの駄文のコーナーです。

ゴヤの「巨人」

2009年01月27日 22時10分46秒 | 時事問題,ニュース

この絵を知ったのは,随分前の高校生の頃だったと思います。
何のことはない,LPのジャケットアートとしてこの絵が使われていたのを見たのが,それに当たります。 
曲は,マーラーの交響曲第1番「巨人」,演奏はヤッシャ・ホーレンシュタイン指揮ウィーン交響楽団。
当時日本コロンビアから発売されていた1300円の廉価シリーズの1枚でした。
誰が企画したのか知りませんが,当時のレコード会社は,このようないい加減なことを平気で行っていたということでしょう。
勿論,ゴヤの名画とマーラーの作品には何の関連もなく,同じ名前のもの同士を単純に組み合わせただけのものに過ぎませんでした。


しかし,その絵自体は非常にインパクトが強いもので,名画になど全く興味の湧かない(今も同様ですが)私に,ゴヤというスペインの画家の名を印象づける結果になりました。
子どもの頃切手集めをしていて(当時の子どもは,皆切手集めをしていました),カタログでゴヤの作品「裸のマハ」が印刷された切手を見つけて(スペインのものだったのでしょう)ウヒヒだった(笑)ことで,ゴヤという名前を知っていたのですが,この「巨人」を見て,さらに印象が強くなったのは上述の通りです。


暗雲立ちこめる荒涼たる原野を逃げ惑う人々や家畜。
低空の雲が切れ,日が差し込むと共に,憤怒の形相の巨人が全裸で虚空を睨み,怒りの拳を振り上げる・・・。
描かれた1808年という年は,ナポレオンの兄ジョセフがスペイン王となってイベリア半島に君臨。
スペイン独立戦争のさなかでした(この後に続く内戦によってイベリア半島は荒廃し,16世紀に世界を席巻した南蛮二国は,南米の植民地を失い,帝国主義に止めを刺されます)。私には,この巨人がナポレオンの帝国支配に立ち向かう象徴なのか,或いはナポレオンによる支配そのものを表現しているのか,全く分かりませんでしたが,荒々しいタッチが当時の世相を反映したもの,ということを朧気ながら察していました。
で,故国を憂いたゴヤが,ナポレオンの圧政に対するプロパガンダとして・・・と思っていたのですが・・・。


何と,「巨人」はゴヤの作品ではない,というではないですか!!
この作品を所蔵するマドリードのプラド美術館の発表によると,作者はゴヤの弟子であるアセンシオ・フリアのによるもので,筆致の荒さ・拙さとサインのAFが決め手となったということです。
確かに上述「裸のマハ」(個人的には「着衣のマハ」の方が・・・・・をい)や名作「1808年5月3日」と比べると素人目にもタッチの違いが分かるような気がします・・・。


しかし,こういうことってあるのですね。
数々の美術全集にも収められているでしょうに・・・。
尤も,我が国でも藤原隆信筆による「源頼朝像」(神護寺蔵)が,実は足利直義では?などということがありましたが(教科書には載らなくなったということです),似ているような違うような・・・。
そう言えば,同じ隆信による「平重盛像」(同)は誰だったのでしたっけ・・・???
(どうやら足利尊氏らしい・・・)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿