セブンフレッシュの果物売り場。上のスクリーンにさまざまな商品情報を提示できる(記者撮影)
急速にIT化が進む中国。一足飛びの進化は、小売店舗にも現われている。顔認証を活用した無人スーパーから自動倉庫の活用まで。中国EC(ネット通販)2位の京東集団(ジンドン)を通じ、2回に分けて「中国未来店舗」の実像に迫る。
入り口を抜けると、色とりどりの果物が陳列棚にぎっしりと並ぶ。1つひとつの果物にはQRコードがついていて、専用の機械で読み取ると、陳列棚の上にある巨大なスクリーンに産地や購入者の評価などの商品情報が映し出される。すぐ横にはAI(人工知能)カートがぴたりとついてくる。専用アプリを起動したスマートフォンをかざせば、カートが買い物客とともに動く仕組みだ。子供連れで手がふさがっている母親でもカートを引いたり押したりする必要がなく、利便性も高い。
これは中国の首都・北京郊外にあるスーパーマーケットの店内の様子だ。店の名前は「7 FRESH(セブンフレッシュ)」。中国のEC2位の「京東集団(ジンドン)」が今年1月にオープンした店舗である。ネットから注文した商品を配達してもらえるサービスもあり、ネット利用と合わせると1日平均6000~7000人が利用する。
魚1匹にもQRコードを付ける
ジンドンは1998年に創業、2004年にEC事業を開始した。もともとは家電製品を専門に扱っていたが、化粧品や日用品などへ品目数を拡大。2017年12月期の売上高は前期比39.3%増の3623億元(約6.2兆円)に達した(営業損益は8.3億元〈同142億円〉の赤字)。魚にもQRコード。スマホでかざすとどこで水揚げされたのかなどの情報がわかる(記者撮影)
そんなジンドンがリアル店舗にも進出し始めた。先鋒を務めるのがセブンフレッシュだ。
同店では食品の7割を生鮮食品が占め、一部輸入品を除きほぼすべてにQRコードがつく。前出の果物だけではなく、水槽を泳いでいる魚の1匹1匹も対象になる。代金の支払いも、すべてQRコードを介した電子決済が可能だ。商品の品ぞろえは、商圏特性や過去の売れ行きなどのビッグデータによって決める。たとえば同店はオフィスエリアにあるため、ビジネスパーソンのニーズに合わせた品ぞろえをする。店内には購入した食品を調理してもらえるレストランも併設されており、昼時はいつも利用客で満席だ。
輸入品の取り扱いも強化している。近年、中国では農薬の大量使用などが問題となり、食の安全に対する意識が高まっている。自国産品への不信感もあり、世界各国の食材に対するニーズが大きい。