ジョイフル本田「千葉店大改装」の思わぬ大誤算
秦 卓弥:東洋経済 記者
ペット、ガーデニング売り場を拡充し、ファミリー層の開拓を狙った千葉店(写真:ジョイフル本田)
茨城県発の大手ホームセンター「ジョイフル本田」が思わぬ苦戦を強いられている。昨年4月に大規模リニューアルを果たしたばかりの千葉店(千葉県稲毛区)が、営業再開からわずか8カ月後の2019年6月期上半期決算で24.7億円の巨額減損を計上したのだ。
「千葉店は既存のお客さんが持つ店舗のイメージと離れてしまった」と語るジョイフル本田の矢口幸夫社長
通期の当期純利益の見通しも従来の58億円から24.8%減となる43.6億円に引き下げた。2018年6月期対比でも通期で22%の最終減益になる見込みだジョイフル本田は、郊外の幹線道路沿いの広大な敷地に5万平方㍍(約1.5万坪)以上の超大型店舗を構えるのが特長だ。DIY用の資材から家具・インテリア、生活用品まで、40万点以上の圧倒的な品ぞろえを武器に、1店舗当たりの平均年商は約100億円と業界平均の7~8倍もある。茨城、千葉、群馬、埼玉など1都5県に15店舗を展開している。
増床後の千葉店の売り場効率は半分に
今回、減損を計上した千葉店は、県内で住宅地が密集する都市部エリアにあり、改装前の売り場面積は1223坪と全15店舗の中でもっとも小さい店舗だった。建物の老朽化と低採算性を解消するために、約1年間かけて全面建て替え工事を行い、仮店舗での営業期間を経て、売り場面積を2500坪と2倍に増床。新たに屋上に駐車場を設置したほか、ペットやガーデニングの専門売り場を拡充。2018年4月にリニューアルオープンした。
だが、今年2月上旬の千葉店は、駐車場に停まっている車は全体の3分の1程度と空きが目立ち、広い資材売り場には客がちらほらといる程度。平日日中の時間帯で客入りが少ないせいもあるだろうが、増床改装されたばかりの清潔感ある売り場は閑散としていた。
会社側は店舗ごとの売上高を公表していないが、上期の全社売上高の計画未達(14.7億円)の主因が千葉店であったことを認めている。「通期でリニューアル前の水準には届く」(矢口幸夫社長)という決算説明会でのコメントなどから推測すると、千葉店の年商は改装前からほとんど伸びていない状況だと考えられる(当初目標は1.5倍以上)。売り場面積を倍増させたにもかかわらず年商は横ばいとなると、売り場効率は半分に落ちたことになる。
ジョイフル本田にとって、大規模な増床を伴うリニューアルは本来得意としてきたものだ。たとえば同社の千葉ニュータウン店(千葉県印西市)は現在、敷地面積で東京ドーム3.6個分の約5.1万坪(テナント、駐車場を含む)と、国内最大級のホームセンターだが、2002年の出店当初は約4.1万坪だった。ジョイフル本田は周辺の農地や宅地を取得して既存店舗を拡張していくモデルで売り上げを伸ばし、成長してきた。今回の千葉店のリニューアルはなぜうまくいかなかったのか。
東洋経済の取材に対し、矢口社長は「千葉店はもともとあった建物を取り壊して、まったく新しい挑戦をした店舗。その結果、既存のお客さんが持っていた店のイメージと離れてしまった」と説明する。改装前は、近隣に住む高齢の客による水や酒、米、ガソリンなどの生活必需品の買い物が中心だったが、こうした利益率の低い商材の販売を大幅に縮小。代わりに若いファミリー層向けのペットやガーデニング売り場、プロ業者向けの資材などを拡充したが、既存の顧客層が大きく離れてしまった。建築コストの高騰により改装の投資額が想定以上に膨らんだこともあり、巨額の減損を計上した。