表題の俳句は、池田澄子さんという俳人が詠んだ句だ。
どれくらい前だっただろう。当時付き合っていた人に、2人で床の上で猫のように丸まりながら、この句の載った本を見せてもらった事があった。とても可愛らしいたくさんの猫の写真と何本かの俳句の載った、小さな本だった。
その時にはすぐに自分もその本を買おうと思いながら、今までずっと買いそびれていた。昨日、ようやく書店に注文をする事にした。
その際に調べたのだが、池田さんは1936年生まれ。40代になってから句作をスタートしている。
「じゃんけんで負けて蛍に生まれたの」
「恋文の起承転転さくらんぼ」
こういう句を詠む女性である。僕は彼女をてっきり20代、もしくは30代かと思い込んでしまっていた。
…50になっても60になっても「逢いたくなっちゃだめ」な思いを、人は抱くものなのだ。それはごく当たり前の事ではあるけれど、20代の頃の僕には想像すら出来得なかったことでもある。
たぶん歳を重ねるという事は、生きて、心から愛した人たちとすら2度と会えない別れ方や、死という別離を重ね続けるという事でもあるのだ。きっと、そういうことなのだろう。
生きていく。何年も何年も「逢いたくなっちゃだめ」と心に言い聞かせながら。
ずっと。
参考書籍 「逢いたくなっちゃだめ」 あおば出版 板東寛司/写真 青嶋ひろの/選と文