小父さんから

ミーハー小父さんの落書き帳

日本/アメリカ新時代 今の世界から見た「日本の参院選」の意味とは? Newsweek

2013年07月10日 | オピニオン
2013年07月09日(火)12時50分 プリンストン発

日本/アメリカ新時代 by 冷泉彰彦  Newsweek

投開票まで2週間を切った参院選ですが、日本国内のムードはどうも低調に見えます。他党への不信感が拭えない状況下、比較優位という効果もあって自民党の優勢という状況は固まっている、そんな「シラけた」感じが伝わってきます。

 ですが、世界的に見れば、日本のこの参院選は意味があるのです。日本国内の視点では「全くの内向きの政争」に見えているのかもしれませんが、決してそうではないと思います。

  これから先は、ちょっとお堅い

(1)政治的保守が金融緩和とバラマキに傾き、政治的中道がその危険性を指摘するという構図は、世界的に見れば、大変に珍しい対立構図です。世界の常識としては、保守は緊縮、リベラルは緩和というのが普通だからです。ですが、世界的に景気が不安定な中で「これまで自制していた緩和策へ全開で進む」のが正しいのか、「巨大な国家債務を背負う中で金融緩和の危険性を意識する」のが正しいのかという「選択」をしているというのは、国としては非常に真面目な姿勢だと思います。

  
  

(2)隠れた争点として、消費税率アップと社会保障の「一体改革」の問題があります。この種の問題に関しては、税負担への嫌悪感を煽(あお)れば票が来るとか、福祉の受益者には既得権の守護者だと言えば票が来るというポピュリズムが、ギリシャでもスペインでも、そしてアメリカでも問題の解決を難しくしています。日本の場合は超高齢化社会へ向かうという「人類に先行した厳しい条件」も背負っているわけですが、そのような中で財政規律を有権者が選択するのであれば、それはそれで非常に立派であるわけです。

(3)グローバル経済を受け入れて競争力向上に努力するのか、保護主義的に後ろ向きになって当座の「痛み」を先送りするのかという「選択」もヨーロッパを始め、多くの国での選択になっているわけです。日本の場合は、その選択ができないために20年も貴重な時間を空費したわけですが、逆に「こんなに長い間できなかった」のだから「本当の改革が出来れば復活の可能性はある」という世界の期待は大きいのです。特に中国経済にスローダウンの兆候が見える中、日本への期待は非常に大きくなっています。

 TPP(Trans-Pacific Partnership環太平洋経済連携協定)のテーブルにつく問題だな!

(4)トルコやエジプトなど、分厚い若年人口を抱える国では、「年長者による窮屈な伝統的価値観の押し付け」に対する激しい異議申立てが出ているわけです。これは60年代の欧米や日本、80年代の韓国などと同じ現象であって「反乱を起こした若者」は20年後には経済成長を牽引するようになっていくのでしょう。逆に人口全体が高齢化しつつある日本の場合は、「下の世代の反抗に期待する」ことは難しくなっています。伝統的価値観が暴走することで経済社会を衰退に引きずっていくのか、反対に高齢層も「日本社会が永続するための改革」を認めていくのかといった「文明の命運」の問題を自分で選択していかなくてはならないわけです。こうした構図も大変に興味深い点です。

(5)価値観の問題といえば、日本の憲法論議に関しては、例えばアメリカの日本通からは2点に関心が集中しています。1つ目は、「アーティクル9」つまり「憲法9条」に関してであり、集団自衛権や日本の防衛負担を正当化するような改正がされれば「アメリカとしては負担が減る」という期待があります。もう1つは、「天賦人権を否定する」ような「復古主義」が出てくるのは頭が痛いという問題です。イスラム圏での復古主義とは別の形で、旧儒教文化圏での復古主義が出てくるというのは、アメリカの価値観外交をやりにくくするだけでなく、経済社会の結びつきにも悪影響があるからです。要するにアメリカとしては、9条は緩和して欲しいが、復古主義は困るというのが相当にハッキリした立場です。

 確かに安倍総理は右寄りだとは思うが復古主義だろうか?ネットを検索してみると安倍晋三、橋下徹、復古主義に?がついてはいるがそんな活字が飛び交っているね。

(6)日本の復古主義もそうですが、東アジア諸国のナショナリズムが相互に意地の張り合いになっている問題は、世界的に見れば頭の痛い問題です。1つは、アジアにおける国際分業が上手く機能しないと、世界経済の成長へ大きなマイナスになるという点です。そして2点目としては、日中韓台4カ国の関係に見られるように、「自由と民主主義を大義とする同盟」が崩れてゆく という危険性です。どちらも、困った問題であって、日本の有権者が「より問題をエスカレート」させる兆候を見せるのかどうかは、注目されていると思います。

(7)エネルギーと環境の問題に関して言えば、日本が「エネルギー多様化」と「排出ガス削減」という大きな2つの政策を捨てて、化石燃料への依存に走っていることには懸念があると思います。今年2013年には11月にワルシャワでCOP19会議があるわけで、仮に日本で「安定政権」が誕生したとして、その政権が「ポスト京都議定書」を決めるCOP21へ向けて今年のCOP19でどんな姿勢を取ってくるのかは世界が関心を寄せてくると思います。

 こうした観点から見れば、今回の参院選は決して「内向きニッポンの白けた政治ドラマ」などではないと言えます。そんな中、個々の候補者に対して、政策面での厳しい視線が注がれることが重要だということと、結果に関しても「個々の問題に関する民意」が浮かび上がる点には注目したいと思います。

  

   
BLOGGER'S PROFILE 冷泉彰彦(れいぜい あきひこ)ニュージャージー州在住。作家・ジャーナリスト。プリンストン日本語学校高等部主任。1959年東京生まれ。東京大学文学部卒業。コロンビア大学大学院修了(修士、日本語教授法)。福武書店(現ベネッセコーポレーション)勤務を経て93年に渡米。主な著書に『チェンジはどこへ消えたか オーラをなくしたオバマの試練』(阪急コミュニケーションズ)、『アメリカモデルの終焉』(東洋経済新報社)など。
メールマガジンJMM(村上龍編集長)で「FROM911、USAレポート」を毎週連載中。新刊電子書籍「FROM 911、USAレポート 10年の記録」(G2010刊)を、iPad/iPhoneアプリとしてAppleストアにて発売中。




 小父さんも今回の選挙に白けて、投票所に行きたくない、出向いても白票をいれようかな?みたいなことをイメージしていたが冷泉さんが書かれていることのすべてを理解していなくっても、「投票」への義務感がわいてきた。あと12日あるので、もういちど考えてみよう!

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4 コメント

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Unknown (ree)
2013-07-10 01:15:59
先日、日本領事館より参議院選挙の投票のお知らせが来たんです。

成人してから今まで投票して来ましたが、ここ数年は私もかなり迷っているんですよ~。
地元の候補者について年々分からなくなって来ているのもあって、放棄しようかと思っています。
支持する党だけで選んでいいものか?と疑問もありますし。

↓58歳とはまだお若いのに・・・。
残念ですね。
ご冥福をお祈りします。
返信する
小父さんへ (颯颯(さっさつ))
2013-07-10 07:00:26
安倍首相が民主党に対して口にする言葉は「政治は結果だ!」ですが、我々有権者が安倍政権の政策、特に経済政策の是非を判断することは難しいことです。
そうなると、人柄で選ぶのかということになりますが、人柄が解るほどのお付き合いはありませんし、結局政党で選ばざるを得ないのかも知れません。
選挙はムードに左右されます。
橋下共同代表の慰安婦発言などで、支持率が一気に下落しましたし、政権を失敗した民主党の国会での発言に説得力はありませんし、今のムードは自民党以外へは流れにくい状況です。
アメリカのように2大政党で政権を交代していくという図式も崩れてしまいましたので、自民党独裁政権にならないよう、見守らなければならないでしょう。。
返信する
reeさんへ (小父さん)
2013-07-10 19:24:36
>日本領事館より参議院選挙の投票のお知らせが来たんです

あらあら、選挙権をお持ちなんですね。
日本で暮らしていてもどのような投票をするべきなのか迷うところですが、
いくら情報網があるとしてもフロリダにお住まいでしたら判断がむずかしいですね。

政治はだいたい個人の利益を代弁してくれる議員に投票すればよかったのに、今の時代は同じような主張ばかりなので
さも、あなた方の利害を実現しますみたいなことを
みんな言うので、本当は党利党略のみに終わって
何も還元してくれないのかもしれません!

政党も昔は自民党と社会党は180度違いましたが、
最近は皆保守党みたいな顔つきなので言っていることに大きな差はありません。
耳触りのいいことだけを言います。

>↓58歳とはまだお若いのに・・・。

先ほども報道番組で吉田元所長のことを詳しく話していましたが
東京電力本社に首相官邸に適当な返事をして、福島
原発の水素爆発対策を自分の判断で押しすすめた
まあ、後に続く人は絶対に出てきそうにない逸材でした。

ご冥福をお祈りします。
返信する
颯颯(さっさつ)さんへ (小父さん)
2013-07-10 19:48:47
>我々有権者が安倍政権の政策、特に経済政策の是非を判断することは難しいことです。

そうですね。
アベノミクスはG8でも評価されたようですが、今の日本経済への期待感は
ヘッジファンドの投機によるバブル経済以外の何ものでもないですからね。
ヘッジファンドが引けば、バブルは元のもくあみですよね。

今回の参議院選挙の投票率はたぶん低いでしょね。
昨日は、ネットのどこかで今までは「振り子現象」で選挙圧勝の次の選挙はほとんど逆に触れてきたけど
今回ばかりはそれもなさそうみたいなことを書いて
いましたね。

自民党独裁政権も好ましく思いませんが・・・、そうそう
これもどこかで読みましたね。
維新が惨敗して橋下氏が代表も市長も辞め、慎太郎氏氏も辞めて、野党の再編がまた始まるって。

まあ、V9の巨人と他の球団みたいな気もします。
交流戦で少しは観客も呼べましたかね。
プロ野球とはちょっと違いますかね(笑)

でも横須賀市長選では、小泉進次郎氏の地元で自公が組んでだめだったんですから
予測しない何かが起こるかもしれませんね。

これからの若い人たちの為に、安定した平和な日本
を築いて欲しいものです。

選挙の前日くらいに、この冷泉彰彦さんのコラムをまた読もうと思っています。 ...
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