アウトリガー・セーリング・カヌーも、あといくつかの考慮点が決まれば、製作が残るのみである。 (実は製作が大変なんだけどね・・・)
マスト、セールについては前回検討済みですね・・・短めのマストにジャンクセイル。
今回は手漕ぎの推進装置について検討してみた。 セーリングで沖へ出たのは良いものの、風がピタッと止んでしまった・・・とか・・・ここで釣りをするんだが、しばらくここでホバリングしていたい・・・今日はセールなしの手漕ぎで近場を釣りたい・・・等々、手漕ぎで前に進むことも考慮しておきたいのだ。
まあ、パドルは最低限常備品として作る(作り直す)予定ではあるが・・・パドルよりも楽に前進できるものが欲しい。 うまくすれば、セーリング中はラダーとしても機能するものがいい。
そこでネット上に存在するほとんどの推進装置を調べてみた。 それらを図示すると・・・こんな感じ・・・
これらは流体力学の本なんかでは 振動翼推進装置 と呼ばれている。 プロペラやスクリュー等の回転するタイプのものと異なり、左右や上下に振動(反復)させることで推力を得ようとする装置のことなんですわ。
要は、座って片手で左右に振っていれば前にすすむ装置といえば分かりやすいでしょう。
1. 和船の艪(ろ)
乱流艪と言われている。 艪返しの際に水流が乱流(艪周辺を乱れる流れ)となり、抵抗になるからだそうだ。 対して層流とは、艪表面に沿って水流が流れることを言う。
これはゆったりと船を浮かべるにはもってこいの推進装置だね。 日本の伝統的な推進装置。 左右への振り方が独特で、艪の先端が8の字を描くようにこぐ。 支点には艪杭(ろぐい)という出っ張りを使い、そこに艪の艪べそという穴の部分を載せて漕ぐ。 ここが外れやすいので漕ぐのが難しいのだ。
推進力は、艪先の断面が平たい逆三角形をしており、左右に振ることで前方への揚力が発生する。
また、8の字に艪先を振ることで、斜め板による効力を発生させる。
さらには、艪先を縦に近くして横振りすると、魚の尾のように艪の先端による効力を生じさせる。 だから先端は薄い方が魚の尾びれに近い効果を発揮する。
これらすべての合力が推進力となる。(筈)
2. Power Fin 尾びれ付
Power Finは層流艪。 流線型をした縦の板を、やはり、8の字を描くように漕ぐ。 この装置であれば、単に左右に振れば良い。 どっかの大学の流体力学部門では、こんな装置を使って推進力だとか、効率だとか、調べているみたい。 琉球大学とか・・・
通例フィンの部分は縦の層流艪だけだが、ワシは、それに魚の尾の形をしたフィンを付けてみようと思っている。 腕、艪、フィンの各弾力の違いをうまく設計すれば魚の尾びれを再現できる。
3. AD Scull 弾性フィン付き
AD Scullは層流艪。 和船でも昔は艪の他に櫂(かい)という道具を使っていた。 船側には太い綱の輪が付いていて、ここに櫂の柄を通して、手元を8の字に回転させると前進する。 たらい船などもそうして漕ぐ。 左右に振って漕ぐが、漕ぎ方は艪と逆で艪を返さない。 常に流線型断面の太い側が前を向いている。 ワシは、先っぽにサメの尾びれに似た上向きのヒレを斜めにくっつけてみたいと思う。 こうすれば自然に必要な8の字漕ぎになるし、艪先端にねじれを生じさせることができる。 この艪は猿でも漕げる、とアピールしている。
4. Steering Oar
通常これはラダーの代わりに、手動で舵を切るための一本オールのこと。
ワシは棒の部分に太くて硬いグラスファイバー製の釣竿のButt部を使う。 硬いが先端に行くほど柔らかめになる。 そして、その先に流線型断面をした足ひれみたいなフィンを取り付ける。 これを単に左右に振るだけでカヌーは前進するだろうし、セイリング時には舵として機能すると思われる。 重要なのは、棒の弾力とヒレの弾力の調和かな・・・丁度、魚の尾びれのような・・・
いろいろ作って実験してみたい、と思っている。
調べていて思ったこと・・・
力学の研究者たちは、魚の泳ぎ方を参考にしてこれらの装置を研究しているみたいなんだが・・・大半は尾の部分の動きに囚われているように思う。 それはそれで重要なんだけど・・・
イルカやサメやカジキなどが、想像以上の速度で泳ぐことは、いまだによく解明されていないようなのだ。 研究者の思考は、これら動物の皮膚や肌のヌルヌルとかが水との抵抗を減らしているのでは、などという研究すらされている。 水泳競技の水着の繊維だとか、そっちの方面には効果があるようだが・・・
イルカが船よりも速く泳ぐことはよく知られているよね。 船の前に現れ、ジャンプしたり並走したりする映像はよく見るよね。
ワシ思うに、魚の流線型は尾の断面だけでなく、魚の体全体も、上(や横)から見れば流線型をしている、ということなんだわ。
和船で艪を漕いでいる映像なんかを見ると、艪杭を中心にして船尾は右にいったり左にいったりしながら前に進んでいる・・・ゆったりとではあるけれど・・・
これって和船全体を上からみると、まったく魚の泳ぎに似ていると思えるんだな。 なにを言いたいかというと・・・
ヨットが風上に向かうとき、セイルのキャンバー(風によって作られるセールの流線型)によって風上側への揚力が発生するから風上に進むことができるわけだ。 センターボードが横方向への分力を止めるので前方向への分力で前に進む。
魚やイルカたちは、尾びれの推進力で一機に前進し、かつ、体をくねらせ、体側の流線型をうまく水流に乗せてヨットのセイルのような前進力を生み出しているのではないか・・・と思うんだな。 センターボードに匹敵するものも魚は持ってるよね・・・背びれ・・・尻びれ・・・腹鰭
イルカは自身の推進力+体の流線型+波の力を利用して、前方への推進力を得ているんじゃないか? 胸鰭も急加速する場合も動員するんじゃ~ないの? ちょうど人がクロールや平泳ぎで大きく手を掻くように・・・
サバやマグロやアジなども、高速で泳ぐときには、尾びれで水を蹴り体をくねらせて、前進の力が生み出す速度で揚力をプラスして、さらに前に進む・・・のではないか?
一見、まっすぐに泳いでいるように見えて、実際にはヨットのようにタッキングを細かく繰り返しているのではないだろうか。
長年、渓流で魚を追っかけ、定位する魚、さっと逃げてしまう魚(こっちが多い)、なんかを見てきた経験からすると、魚が尾びれだけで泳いでいるのは流れの中に定位して流れてくるエサを待っているときくらいじゃ~ないのかな? すばやく逃げる魚はまっすぐじゃなくて くの字 を描いて逃げるように思えるんだが。。。
なんてね・・・ただの素人考えかもしれないけれど・・・ね
上の図で、4 が一番魚の尾部の動きに近く、かつ舵にもなり、作りやすい、漕ぎやすい、ので第一候補である。