-ALKAN-

しどろもどろでも声は出るなり。

音楽をやって暮らせたら

2017-12-02 16:58:57 | 日記
 中一の時。友達の岡崎君(亀井)そう、その亀井君がジャイアンツの七番を打って・・・・・・。ちがう。

 岡崎君(仮名)の兄ちゃんという奴が、そこそこのイケメンで、イケメンというと、テニスとギターをやっていると相場が決まっているという私の読み通り、その兄ちゃんもギターを持っていて、その時、生まれて初めてギターを弾いて、その面白さに目覚めたのが、小学六年の時。だが、

 チンパンジーならまだしも、お前にギターなんか出来るわけがない。これまでお前はさも並の人間のふりをしてどれだけ私を裏切り、落胆させてきたことか。それを詫びろとは言わない。私だって鬼じゃない。だが私だってバカじゃない、少なくとも人間だ。人間らしさは持ち合わせているつもりだ。それを使って大方の判断も出来る。だから私は、お前を信頼しない。いや出来ない。出来ようもない。動物の親なら殺しているところだが、人間の私にはその選択肢はない。だから否定する。徹底的に、お前を否定する。 と、ギターを買う事を許可しなかった父親に、

 じゃあ、積年、私が貯めたお年玉を銀行から下ろしてください。まさか、親戚の叔父叔母が私にとくれた金まで、私を信頼しないなんて理由で、自分の酒代には出来まい。並の人間ならチンパンジーの手に持ったバナナを奪い取って食ったりできまいぞ!いわんや、それにも及ばぬ愚息の金だ。その答えや如何。

 と詰め寄ったところ、絶対に、百パーセントお前はこの金を無駄にするであろう、という予言の言葉と共に、近所の楽器屋で中古の、グレコ製のレスポールモデルを買ったのが、中一のクリスマスだったと記憶します。

 私は父親の予言をよそにギターを弾き続け、いつしかミュージシャンとして飯を食っていくことこそがわが人生の目標と決め、京都府北部から花の都大東京のそば、神奈川県平塚市に出てきたわけです。

 ただ、私が亡父の本心をどうしても理解できないところは、どうしてそんな、チンパンジーにも劣る愚息を、大学にまで行かせたか。それで、彼の何が満たされたのか? あんなに、何をやっても駄目だ、出来るわけがない。黙ってじっとしていろ、と言っていた亡父は、私に学卒と言う飾り羽を付けて、隠そうとしたに違いない。私はラウディーなギターをかき鳴らし、18歳の時こんな歌を作った。『哀愁のドッペルゲンガー』これは本当に、二・三分でメロも歌詞も同時に出来た曲だった。


『オランダと五反田に同じ人がいる。wow wowドッペルゲンガーそいつはドッペルゲンガー、日暮里とトリポリにも同じ人が住む。wowwowドッペルゲンガーまさしくドッペルゲンガー。

 子供の頃からずっと無視されてうそつきのレッテルはがせずにいた。今

 きっとお前は天才だ、宝石のように輝いて、pick up your bad seed 人でもモノでも殴りまくれ!(以下省略)』


 友達には、勢いだけで全く意味のない歌詞だと爆笑され、 自分もそうだと思っていた。ただ歌っていると自暴自棄ないい気分になってくる歌詞だった。

 しかし音楽を自分の意志に全く関係なくデタラメにやる事は不可能な事に、やっていくうちに気付いた。だからあれはあの時の正直な自分の気持ちだったんだと。

 親父が死んで来年の三月でまる6年。「アホが、みてみぃ、お父ちゃんの言うとおりになったやろがい! いわん事ちゃうわ。一銭にもならへんことに金と時間ばっかりタンマリ掛けやがってボケ、死んでも死にきれるかい、一言言わな、このでけそこないが!」と言われているようで業腹なので、こんな状況でありながら、本当の本心を言うと、音楽をやって、つまり、ミュージシャンをやって暮らしたい。 ほんで、

「おい、コラおっさん。何を寝とんねん、とっとと起きろ。このニセ預言者が!要らんことばっかり言いやがって!誰が並の人間じゃ、お前のやった事は!人間の底辺以下じゃ、カッコウ以下じゃ、チンパンジーの説法でも聞いて地獄の釜の中で涙の一つも流しやがれ!」

 と言ってやりたいのです。こんな親子関係。駄目でしょうかね。なかなか理解されないと思いますが。親父が死んで、やっと関係が落ち着いた気がします。

 明後日のアルバイト、続くも続かぬも、今は知る由もなし。ただ、酒飲みて、あとは眠るのみ。
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